4人目 菊井 麻朝 R12
この話には少々性的表現が含まれています。
12歳未満の方は閲覧お控えください。
「執事!見て見て!修羅場だよ!修羅場!!」
地獄ノ女王ことミヤは大きな水晶を見て、大きな声をあげていた。
「本当に修羅場ってあるんだね!パソコンで見た!」
ミヤはパソコンを持ってから、いろんな言葉を覚えた。執事は人間のことを勉強するのにいいと思い、持たせたはずのパソコンはどうやらミヤにはまだ早い、もしくはいらない情報までパソコンは教えてしまったらしい。
「女同士の修羅場は一番やばいんだって!」
執事は今すぐに水晶に写っている映像を変えたいと思ったが、それをして、ミヤの機嫌を損ねたらめんどくさいと思い、そのままミヤの様子を見ることにした。次の犠牲者になる可能性もあると思った。
ミヤは興味津々の顔で水晶を覗く、そしてミヤは「決めた!」と手を合わせた。
「執事!次の犠牲者はこの人!」
「そちら側の人ですか…?」
水晶には一人の女の子が三人の女の子に迫られていた。
おそらく、学校という場所の人気のない場所…無難でいうと体育館裏だろう。
三人の女の子は一人の女の子に罵声をかけていた。
執事はてっきり三人の女の子を犠牲者にすると思いきや、罵声をかけられている女の子を犠牲にするとミヤは言ったのだ。
「この人は…汚れているから。だから次の犠牲者!」
「汚れているなんてわかるんですか?」
「わかるよ、なにしろ私は地獄ノ女王だからね!」
ミヤは鼻息をふん!と鳴らした。
─────────…
今日は女の先輩三人組に呼び出された。
呼び出された理由は私の彼氏の元カノが私のせいで彼氏と別れてしまった。と言ってきた。
私はそんなの知らないし、告白してきたのは向こうからだから、私は正直関係ない。
「痛いなー、あの先輩は」
自室の鏡で傷をないか確認した。どうやら傷はないようだ。
ああいう感じの呼び出しには慣れている。
自分でいうのもあれかもしれないけど、私はモテる。
だから呼び出しには慣れてるし、あんな事されてるのも慣れている。
「さてっと、メイクし直さなきゃ」
鏡の前に座り、メイクを始める。“おじさん”受けしやすいメイクを。
私の裏の顔。誰も知らない裏の顔。
学校では優等生でモテるし文武両道。
そして夜になったら、おじさんに媚びを売る女子高生になる。
そして今日も汚いお金を稼いでいく──…。
─────────…
朝になった。いつものように「いってきまーす!」と言い、家を出た。
家の前ですぐに先輩が待っていた。
「おはよ、麻朝ちゃん」
「おはようございます!清水先輩!」
先輩は「行こっか」といい手を差し伸べてくれた。
私も「はい!」と応えて、恋人繋ぎをした。
─────────…
「生徒会長ですか…?」
「ああ、菊井は出来ると思うんだ。成績も良いし、周りからの信頼も厚いからな」
昼休み担任の先生に職員室に呼び出された。
担任の先生は生徒会の先生でもある。
もう少しで選挙だから三年生から二年生に学校は任される。
普通は副生徒会長をやっていた者が生徒会長になるのだが、副生徒会長が親の都合により学校をやめてはいけなくなってしまった。
そのため、いきなり生徒会長という職柄に就く人が必要になってしまった。
「先生、あいにく私はそんな時間の余裕がないんですよ…。塾とか通ってますし」
熟なんて真っ赤なウソ。夜に時間がなくなるのはゴメンなだけだ。
「そうか…。ほかの人に当たってみるよ、すまんな。時間取らせて」
「いえ、大丈夫です」
「失礼しました」と言い、職員室を後にした。
──────────…
教室に戻ると仲の良い友達がキャッキャと話していた。
「あ!ねぇ、麻朝!理央がね、同じクラスの霧崎くんが好きなんだって!」
「ちょ、夢ちゃん声大きいよ…」
同じクラスの霧崎…ああ、あんな冴えないやつか。どこがいいかわからない。
「麻朝も応援するよね?理央のこと!」
「うん、応援するよ!」
「あ、ありがとう!麻朝ちゃん!」
今の先輩と別れて、次の彼氏は霧崎でいいや。
──────他人の不幸は蜜の味。
─────────…
「麻朝ちゃん、なんかいいことあったのかい?」
「えー?そんな風に見えるーぅ?」
「見える見える」
「きっとおじさんと会えたからだよー♪」
──────可愛こぶってれば増えていくお金。
何もかも手に入る。男もお金も。
演じてれば何もかも────…。
ホテル街を歩いていく、今日は少し早く終わった。予定の時間より早く終わったから、どこか寄ろうか。と考えていた。
細い路地裏に入る。ここからホテル街を抜けるのが一番早いからだ。少し暗いけど。
───────ドンっ。
「いったぁ〜い!」
私の目の前には小さな女の子が尻もちをついていた。
「お姉さん、痛いよ!!」
小さな女の子は黒い服を着ていた。だから、余計暗くて見えなかったんだ。
「ちょ、なんで小さい子がこんな所に…」
「お姉さんもなんでこんな場所に いるの? 」
どこか不思議な女の子だ、気味が悪い。
「お姉さんは大人だからここにいるのよ」
その答えに小さな女の子は「ふーん」と応えた。
「お姉さんは汚いからここに居るんだね!」
は?
「お姉さんの生き方って哀れだよね」
小さい女の子はジッと私の目は見る。
「自分より幸せな人が許せなくて、人の男も取る、お金だって汚れてるお金だって使っちゃえばこっちもんだもんねー?」
小さな女の子はスッと私の前に人差し指で私を指した。
「お姉さんが身につけているアクセ、お姉さんが愛用している携帯、制服、カバンもぜーんぶ汚いお金で買ったんだもんね!」
…なんで知ってんの。
「お姉さんの身につけてるのはぜーんぶ汚いよねー?」
「っ!」
気持ち悪い!!何あの子、気持ち悪い!!
私はホテル街に走っていった。
私は汚くない!!汚いお金だけど…私は汚くない!!だって、少し体委ねただけでお金が手に入るなんて簡単なこと…!汚いのは媚びを売っている私じゃない!!媚びを買うおじさん達だ!!
いつのまにか立ち止まってハァハァと息を切らしていた。
「大丈夫かい?」
私に声をかけたのは40代くらいのおじさんだった。
「そこで休んでいくかい…?」
指をさしたのは大人の方のホテルだった。
「もちろんタダとは言わないよ」
今日二度目の汚いお金を稼ぐ。
感情を無くしながら。
────────…
今日の朝、先輩が家の前に居なかった。休むという連絡ももらってないから、きっと違う好きな人が出来たのかと思った。
次の彼氏は…霧崎でいいかな。なんて考えながら学校に行った。
学校に行くと、みんながジロジロと私を見て、ヒソヒソとなにか話している。
なんかムカつく。
「ねぇねぇ、麻朝ー。」
夢が話しかけてきた。
「これ、麻朝でしょ?」
「は?」
夢が携帯を見せてきた。
「な、なによ!これ!」
夢の携帯には私と昨日の二度目のおじさんがホテルに入っていく写真が写っていた。
「まさか、噂は少し聞いてたけど、本当だったんだねー?」
周りのみんなは私と夢のやりとりを見てクスクスと笑っている。
あの大人しい理央まで笑ってる…。
「職員室内でも大騒ぎになってるらしいよー?優等生の菊井麻朝がどうして…ってね?」
どこからだ…どこから情報が漏れた!?
「優等生って、裏で何やってるかわからないんだね?」
「だ、黙れ!!オマエみたいなモテなくて勉強もできない奴が何言ってる!!」
私の言葉にみんなが唖然した。それもそのはずだ。私はいつもニコニコしながら慎重に言葉を選んでいた。その私が声を上げて、言葉遣いが悪くなったから、みんなびっくりしている。
「…話はそれだけ?私帰るわ。」
─────────…
「くそっ!」
部屋の中にあるアクセサリーや小物が散らばっていく。
「…殺してやろうかな、あいつら」
────【そんなこと言っちゃ、ダメだよ?】
声が聞こえた。この声は確か…。
「やっぱり、お姉さんは汚れてるね?」
「あんた…」
「お姉さんの化けの皮が剥がれたー!」と言い、小さな女の子は笑う。
そして片手を挙げて「今から私魔法を使うね♪」と言い、手をパチンっと鳴らした。
自分の部屋から見覚えのない部屋にいた。
目の前に大きな水晶があった。
「…ここどこよ?」
小さな女の子は私の問に笑顔で応える。
「お姉さん、冷静だねー?ここは地獄だよ」
とうとう頭いかれた?
「ほら、見て。この水晶に映っているでしょ?」
水晶を見ると、夢と理央と先輩が写っていた。この三人が一緒にいるところなんて初めて見た。三人は派手な格好で夜の公園に居た。
「特別に声聞かせてあげるね?」
小さな女の子がそういうと水晶からノイズのようなザッ──と音をたてた。
─────────…
「まさか、自殺するとは思わなかったよ」
先輩が鼻で笑った。
「先輩は気づいてたんですか?麻朝の夜の事」
理央が聞いた。
「んー、友達の唯とホテル行った時にねー?元々、あいつ嫌いだったし。遊びだったし。ちょうど別れるのにいいやーって思ってね?」
「先輩ひどーい!」と夢が笑う。
「っにしても、理央はなんで霧崎好きとか言ったの?」
「あれは、あいつムカつくからだよ。もし霧崎と付き合ったら私が泣いて裏切られたと言ったら味方がつくじゃん?」
理央のいつものおとなしさが無くなっていた。
「まぁ、あんな男たらしなら女子なんか味方につかないよね」
─────────…
「死因は自殺しといたから♪」
小さな女の子はそう言った。
「ねー、お姉さん。黙ってたらわからないよー?」
いつの間に涙が出てきていた。
「ぷっ、あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!」
小さいな女の子はお腹をかかえて笑っていた。
「お姉さん、自分の思い通りで人生動いてたと思うの?そんなわけないじゃーん!お姉さんは最初からみんなに利用されてたんだよ?おじさん達にも友達にも彼氏にも…ね?」
その後、麻朝が泣き崩れたとは言うまでもない。
──────────…
「全く、あのお姉さん泣きすぎ」
ミヤはベッドのど真ん中でパソコンをいじっている。それを横目に執事は見ていた。
「…お嬢様、パソコンを使うのを少々控えた方が…。」
ミヤはその言葉に対して「やーだー」と言い、パソコンをいじるのをやめなかった。
「私があなたたちを遊んでるんだ」と思っていたら、実は自分が遊ばれていたと言う話です。
正直言います。作者は麻朝が嫌いです。
けど、理央と夢と先輩も嫌いです。
強いて言うなら、この話しか出てこない人物で好きなのは…霧崎かな(名前しか出てない)
霧崎、変な使い方してごめんよ…