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地獄ノ女王  作者: 夜魅
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3人目 羽山 凜華


 私の学校は進学校だ。

 成績が第一でテストの順位なんか廊下に貼り出されるくらいだ。

 今日もまた期末テストの順位が廊下に貼り出されていた。

(また、一位だ。まぁ、当然か)

 私の家庭はエリートだ。父は有名な大学教授。母は有名な弁護士。兄は大学生で法案部。姉も大学生で現在留学中。

 だから、私が一位なのは当たり前だった。

 小さい頃から塾に通い、英才教育を受けていた。


凜華(りんか)、また1位!?すごいじゃん!」

 友達の(めぐみ)が話しかけてきた。

「そうかな?普通に勉強してるだけだし…」

「でも毎回満点ってすごいよ!」

 満点がすごい…か。私の家庭は満点が普通って考えだから褒めてもくれないからな…。

「いつも2位の立川(たつかわ)くんもすごいよね!」

 立川くん…同じクラスの立川(たつかわ)慎也(しんや)くん。密かに私が好きな人だ…。

 いつも順位が一位とわかっていても見に行く理由は隣同士に並んでる名前を見るのが嬉しいから。

「ほんと、羨ましよー。立川君と名前が隣同士で…」

「え?」

 恵の言葉で私は心の中で何かが引っかかった。

「まだ、休み時間終わらないよね…。凜華、ちょっと空き教室に行こ!」



────────…



 空き教室には少しホコリがかぶっていた。恵は顔を赤くしながら私にこう言った。

「あ、あのね!私…、立川くんが好きなの!協力してくれる…?」

 え?恵も立川くんが好き…?恵の手は少し震えていた。

「…うん、協力してあげる」

「本当!?ありがとう!」

 恵は凜華の手をギュッと握った。




────────…




 学校が終わり、まっすぐ塾に行き、夜遅くに帰るのが私の日常だ。

 毎日帰ってくるのは23時過ぎになる。

「ただいまー…」

 お父さんの靴がある。今日はお父さん帰ってきてるんだ…。


 リビングに行くとお父さんは政治ニュースを見ていた。

「凜華、今日は期末テストの結果が返ってきたよな?見せてみろ。」

「はい」と返事したがなんで知ってるの?と思った。

 両親が興味あるのは子供の成績だけだ。

「全部、満点か…。まぁまぁだな」

 まぁまぁ…。それもそうかもしれない。私の通っているところは進学校とはいっても進学校の中でもレベルが低い。兄や姉は進学校の中でもレベルが高いところに行ったため、私は出来損ないと両親に思われている。

「お父さん、私予習と復習をしてくるね」

凜華はその場を後にした。




──────────…




 地獄ノ女王ことミヤは大きな水晶を見ていた。

「…ねぇ、執事。人間のテストって複雑だよ」

「いえ、簡単でございますよ」

 執事はニコっと笑った。

「お嬢様が勉強を怠っているだけですからね」

 さらに執事はニッコリと笑った。

 ミヤはプイッと執事から目を逸らした。

「勉強より犠牲者を集める方が楽しいもんね」

「勉強が好きな人はそうそう居りませんよ」

 ミヤは「ぐぬぬ…」と言った。

「次の犠牲者どうしますか?」

 ミヤは執事の目を見ずに水晶をじっと見ている。

「お嬢様、そんなに拗ねなくても…」

「拗ねてないわよ!そんな子供じゃない!」

「子供ですけどね…」と執事は言おうとしたが、ミヤの機嫌を損ねたら、さらに厄介になると思い、言わなかった。

「次の犠牲者はこの人でいい!」

 ミヤは投げやりになっていた。




──────────…




 恵は次の日、立川くんに告白をした。早いと思ったけど、恵はいてもたってもいられない子だし、それに誰かに取られたら嫌だからというのもあるかもしれない。



────その日から恵と立川くんが付き合うようになった。



 周りのみんなは、ひやかしたりしてるけど、お似合いだと言っていた。

 私はそんなのを気にせず、休み時間も勉強をしていた。

 私の席の前の椅子に恵が座ってきた。

「ねぇー、凜華も彼氏作りなよー?」

「そんなの作ってる暇はないよー」

 失恋したばっかだし…。

「ダブルデートしたいよー、ねぇー、凜華ー?」


────カリカリ、ボキッ。


 シャーペンの芯が折れた。

 そんなのお構いなしに恵は話してくる。

「凜華もたまには息抜きが必要だよ?毎日塾に通ってるし… 」

「そうだねー」と言って私は話を流した。

「凜華は頭いいんだから1日くらい休んでも大丈夫だよー。」

 うるさい。

「だからさ!凜華が彼氏作らないなら三人で出かけない?私と凜華と三人で!」

「うるさいな!!」

 私は、ばんっ!と机を叩いた。

 みんなびっくりして、視線は私の方に集まる。

「な、なになに。どうしたの…?」

 一人の女子が話しかけてきた。

「え、えっと実は…」

「恵、話さないで。私もう帰るから」

 私はカバンを持ち、教室から逃げるように出ていった。



 きっとみんなびっくりしただろう。普段は大人しく勉強している私があんな行動をとったから。

 でも一番びっくりしてるのは自分である。自分でもあんな行動をとるとは思わなかった。

 公園のブランコに一人で座っていた。


─────キィ。


 こんなの家族にバレたら、怒られる。

 けど、学校にも戻りたくない。



「お姉さん!なにしてるの?」



 え?と思い、声の先を見ると一人の女の子が立っていた。

 全体的に黒っぽくて、どこかのお嬢様みたいな服を着ている。見た目は小学生みたいだ。

「お姉さん、困ってるの?」

 全てを見透かすような真っ黒な瞳がジッと私を見つめる。

「ち、ちょっとね…?」

「ふーん」と女の子は言い、私の隣にあるブランコに座った。

「ここの空は真っ青だよね!」

「そうだね」

 今日は雲一つない快晴だ。

「あ、お姉さん名前は?私はミヤ!」

「凜華だよ、りんか。」

「りんかお姉さんね!」と言い「りんかお姉さん、りんかお姉さん」と覚えるために復唱していた。

 その姿が可愛らしく見えた。明るい服の方が似合う子だと思った。

 その後、ミヤという女の子は「用事があるから、帰るね!またね!りんかお姉さん!」と言って帰ってた。




────────…




 生まれて始めて学校を飛び出した。生まれて始めて塾をサボった。

 家に帰りたくないけど、どこかに泊まれるお金も持ってないし、親戚も友達の家も急に行くのは申し訳ない。

 結局、ミヤという女の子と別れた後はショッピングセンターをブラブラしたり、ゲームセンターに行ってみたりして時間を潰した。

 いつもは本屋行ったりして参考書を買ったりと勉強のことばかりだったので勉強から離れてみたことをやってみたいと思って洋服を見たり、可愛いぬいぐるみなどを見ていた。

 でも時間というものは残酷で止まってはくれない。

 夜遅くに帰るのが私の日常だけど、今日は違う。

 今日も夜遅いけど、きっと両親たちは…。

「入らないと…」


─────キィ。


「た、ただいま…」

「凜華、リビングに来なさい。」

 リビングの方から声が聞こえた。お父さんの声だ。


 リビングに行くと食卓テーブルの椅子に両親が向かい合って座っていた。

「た、ただいま」

 お父さんは私の顔を見るなり、立ち上がって、パチンっと私の頬をぶった。

「おまえは何をしているんだ!!私の顔に泥を塗りやがって!!」

「私の顔にもよ…」とお母さんはつぶやいた。

「ご、ごめんなさい…」

「謝るくらいならやるな!!おまえの顔を見たくない!!もう寝ろ!!」

「はい…、おやすみなさい…」



 私が2階に上がると兄と姉が立っていた。

「馬鹿だな、そんな事をして。ただでさえ馬鹿なのに」

 姉は「ふふっ」と笑い「ダメよ、お兄ちゃん?こんなのでも私たちの妹なんだからね?一応。」

 捨てゼリフみたいに言い、兄と姉は部屋を戻った。


 私も部屋に戻り、ベットにダイブした。

 じわっと涙がこみ上げてくる。

 なんで私がこんな目に遭うの!?なんで私の欲しいものは奪われるの!?なんで!?なんで…!



───【りんかお姉さん!】



 不意に今日の昼間のことを思い出した。

(あの子は…悩みとかなさそうでいいなー…)

 そう思い眠りについた。




─────────…




「…ん……ね…さ…!」

 誰かの声が聞こえる。聞き覚えのある声。可愛らしかったあの子の声。

「りんかお姉さん!」

 私の目の前には公園で会った、女の子ミヤがいた。

「あ、あなたは…」

「覚えててくれた?」

 ミヤはニコリと笑った。

「ねぇ、見て。」

 ミヤの視線の先を見た。 ミヤの視線の先には大きな水晶が置いてあった。そしてその水晶に写っていたのは誰も泣いていない自分のお葬式であった。

「っ!?」

「だーれも泣いてないね?こんなお葬式見たことないよ!」

 ミヤは笑顔でそう答える。

「…っ!」

 不意に涙がこぼれた。弱い自分が出てくる。

「なんでよ、私ばっかり…。なんでよぉ!…私、死んじゃったし!」

 そんな私の姿を見て、ミヤは「あはははは!」と笑った。

「何がおかしいの…!」

「りんかお姉さんみたいなのが“悲劇のヒロイン”って言うんだね!」

「なっ!」

 ミヤは「あ〜っ!おかしい!」と言い、笑うのをやめない。



────「だって、今までのテストぜーんぶカンニングしてたもんね?」



 私は耳を疑った。

「なっ!私がそんなことする筈ないじゃない!」

「自分の実力だと一位を取れないからね?」

 ミヤの笑い方は悪魔のような微笑みだった。

「だから、カンニングした。他にも立川くんだっけ?知ってたんでしょ?元々、恵お姉さんと両思いだったのも?」


 知らない!そんなの知らない!


「それで立川くんをとってやろうと思ったがいつの間にか自分が立川くんを好きになったという錯覚をし始めた…そして立川くんを好きになった」


 違う!私が先に好きになった!!


「家族には本当に出来損ないだって思われてるんだねー。だから、余計カンニングをしちゃったんだもんね?」


 違う!違う!違う!!!!!


「ただの思い込みで自分を悲劇のヒロインにした。…哀れだね?お姉さん!」

 私は水晶を見た。

「なんでよぉ…。なんで私が死んでるのに誰も泣かないの!?この私が死んだのよ!?」

 ミヤはそんな私の姿を見て「はぁーっ」とため息をついた。

「なんで泣かないか、わからないの?自分で招いた結果だよ?」

「は?」


自分で招いた結果…?


「カンニングもして、勝手に思い込んで、周りに迷惑かけて。他にも私が言ったこと以外でもいろんなことやってたよね?教えてあげようか?」

「私、そんなことやってなんか…!」

「まず、今通っている学校にりんかお姉さんより頭のいい人が居た。本屋さんでその人のカバンの中に本を入れた。しかも会計してないやつ。それを知らず出ていこうとした人が出入り口付近の防犯みたいのが鳴って、万引きと仕立てた。」

「違う!それはあの人が本当に万引きをして…!」

「見てみようか?この水晶は過去も見られるんだよ?」



────ダメだ。もう完敗だ。



「そうだよ、私が全部やったんだよ!!!!みんな私を馬鹿にするんだ!!!!」

「そうやって生きてる人なんて、沢山いるんだよ?自分が一番かわいそうって思ってるの?…私、りんかお姉さんのそういうとこ好きだよ!」

 ミヤは満面の笑みで応えた。

「あ、みんな泣いてない理由教えてあげるね!みーんな、りんかお姉さんのこと嫌いだったんだよ?」

 凜華はもう何がなんだか分からなくなっていた。




────────…




 【地獄ノ女王所有物部屋】というプレートが大きく揺れた。

「ねぇ?執事見た?りんかお姉さんのあの顔!最高の顔だったよねー♪」

「そうでございますね。お嬢様、そのままお勉強でも…」

「しないよ?

「今からパソコンするもんねー」と言い、ミヤはスキップしながら自室に戻っていった。





凜華は最初の頃、学校の中でも頭が悪かったんです。

だから、最初はカンニングペーパーを作りテストをしましたが一番頭の良かった人にそれでも負けてしまいました。

カンニングペーパーと言っても全ての答えを書いてるわけじゃないカンニングペーパーを作ったんです。

そして、凜華は一番頭の良かった人を万引き犯にしたてあげました。

一番頭の良かった人ってどうしても名前が印象に残りますよね?

それで万引きしたという噂が一気に広まり、その子は学校をやめちゃいました。

そして、いつしか凜華が一位になりました。カンニングペーパーを作るのも上手くなり(本当はダメだけど)、いつしか恋愛をできる余裕が持てました。

ですが、恵に取られたことにより気が動転したんでしょうね。

人間っていつ狂うかわかりません。

ちなみに凜華が嫌われた理由は人を見下すという事でした。

学校では自分が一位だからといって見下していたんです。家族からは出来損ないということで嫌われてました。

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