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地獄ノ女王  作者: 夜魅
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2人目 川渕 佳音

 地獄ノ女王は今日も大きな水晶を見ていた。


「……執事。あれはなに?」

 地獄ノ女王は水晶に映っているあるものに指をさした。

「あれはパソコンというものですね。あれでいろんなことができるので人間は良く使います。」

「いろんなこと?」

 地獄ノ女王は首をかしげた。

「はい、ゲームやチャット。その他にも動画を撮ったり、調べものだってできます。」

「へぇ……、じゃあ、あの人は学校に通ってないの?」


 地獄ノ女王は水晶に映っているパソコンをいじっている女の子に指をさした。

 地獄ノ女王にも人間のことは大雑把だが知識がある。

「このデータによると、その方は中学2年生ですからね……。おそらく学校には……」

 地獄ノ女王は、「ふーん」とつぶやき、興味津々な顔になった。

「決めた、次の犠牲者はこの人にする!」


 地獄ノ女王の笑顔に執事もニッコリと笑った。




   ◆ ◆ ◆




 ───カタカタカタカタカタ。


 液晶画面に映る文字が私の頭の中に入っていく。

 今、この世の話題のニュースや芸能界の様子などが液晶画面に映っている。

 私はそんなのを軽く見たあと、いつものチャットに行く。

 このチャットはいろんな人と話せる。

 今日もそのチャットにログインし、いろんな人と話す。


「あ……、またこの二人喧嘩してる。」

 なんで、ネットの中でも仲良くできないのだろうか? そんなことを佳音は思いながら、二人をブロックした。

「……馬鹿な奴ら」

 そう、呟いたのと同時にパソコンのランプが黄色に点滅した。

 黄色に点滅したということは私にチャットを送った人が居るということ。いわゆる通知だ。

 カタカタと慣れた手つきで佳音はチャットを見た。

 送り主は『うさぎ』さんだった。

 いつも佳音(かのん)と話す、仲のいい人だ。

 チャットを見るといつもの挨拶だった。



──────────────────


 おはよう♪


 今日も沢山お話しようね~!



    うさぎ


──────────────────



 慣れた手つきで私も返信を送った。



──────────────────


 おはよう!うさぎさん♪


 今日もお話するの楽しみ!



おんぷ


──────────────────



 『おんぷ』というのは私のネット名だ。

 うさぎさんは私と同じ中学二年生であまり学校に行ってないらしい。

 うさぎさんの顔を見たことないし、声も聞いたことないけど、悪い子ではないことは話しててわかる。



──────────────────


 おんぷちゃんって、私と住んでる場所近いよね?


 今度、私と遊ばない?



            うさぎ


──────────────────



「えっ!?」


 私はびっくりして、イスから立ち上がってしまった。

 まさか、私が遊びに誘われるなんて思ってもいなかった。

 遊びに……。

 私もうさぎさんに会いたい。

 けど、外に出て同じ学校の子に会ったら……。


 私は慣れた手つきで返信した。



──────────────────


 ごめんなさい。


 うさぎさんに会いたいけど、外に出るのが怖いんです……。


 本当にごめんなさい!



            おんぷ


──────────────────



 うさぎさんに嫌われてしまっただろうか……。

 そんなことを考えていると、すぐに返信が来た。



──────────────────


 そうだよね! 急にごめんね!


 でも、今度会える日が来たらいいね!



            うさぎ


──────────────────




 うさぎさん……。うさぎさんがいい人で良かった。




   ◆ ◆ ◆




 地獄ノ女王はうさぎとおんぷのやりとりを大きな水晶で見ていた。


「ねぇ、執事……。うさぎって人キモい」

 地獄ノ女王がそういうと執事はクスクスと笑った。

「そうでございますね、特にこの方は……」




   ◆ ◆ ◆




 私の家庭は冷めきっている。

 夕飯の時は、必ずリビングまで行く。

 いつも私が夕飯を食べる時にはお母さんは洗い物をしていて。お父さんはテレビを見ているか、まだ仕事から帰ってきてないかのどちらかだ。

 私が学校に行かなくなってから両親は喧嘩が絶えなくなって、今じゃ口すら聞かなくなってしまった。

 わかっている。こんな家庭にしてしまったのも全て私が悪いことも。

「ごちそうさま」

 私は自室に戻って、椅子に座り、パソコンを起動させた。

 ……私だって行かなくなったのには理由がちゃんとある。

 私が学校に行かなくなった理由は人間関係でいろいろあったからだ。

 友達やクラスメート挙句の果てに先生まで私を悪者扱いした。

 学校に行って、みんなから見放されて……。



 ──【でも、そのまんまじゃダメだよね?】



 知らない声が私の頭の中に響いた。



「お姉さん! 後ろ! 後ろ!」


 キィ──と椅子を鳴らし後ろを見た。


「はじめまして! お姉さん!」


 ……びっくりして声も出ない。

 私はほっぺたをつねってみた。痛い。これは夢ではない。


「誰!? どこから入ったの!?」

 やっと声を出せた。

「私の名前は……えっと、ミヤ! どこから入ってきたかは内緒ー♪」


 ミヤと呼ばれる女の子はまだ小学生のような体型で全体的に黒いフリルの様な動きやすそうなドレスを着ている。

 いわゆる…ゴスロリってやつ?


「ねぇ、お姉さん! 私ね、うさぎさんって人に会わない方がいいと思うな~?」

 なんでこの子、うさぎさんを知ってるの!?


「あのね、むやみに人を信用してはいけないと思うな~?」

 いきなりなんなの…! うさぎさんのことも知らないくせに!

「ねぇ、お姉さん! 私は信用してもいいよ!」

 意味わかんない…!!

「そ、そんなの会ってみなきゃわかんないし…! 第一、初対面のあなたにそんなこと言われる筋合いはない…!」

 勇気を振り絞って、自分の想いを伝えた。

 ミヤは「ふーん?」と言い。

「じゃあ、会ってみて確かめたら? 私は会わない方がいいと思うけど……ね!!」

 そういった瞬間眩しい光に包まれた。


 ミヤはもう居なくなっていた。


 パソコンを見ると、黄色いランプが点滅していた。

 チャット相手はうさぎさんからだ。

 ……やっぱり会ってみよう。あの子にあんなこと言われてたまるか…!

きっとうさぎさんはいい人に違いない。

 私はうさぎさんと三日後、会う約束をした。




   ◆ ◆ ◆




 ──3日後。


 私とうさぎさんは平日なのに学校にも行かずゲームセンターで待ち合わせする事にした。

 ゲームセンターならサボってる学生が多いから、知り合いに会う可能性はあるかもしれないけど、普通に街で歩いてるよりは十分だと思った。

 いろいろな音がごちゃごちゃしているけど、街に出て人目を気にするよりはまだマシかもしれない。

 そう考えていると手持ちのスマホがブルブルと震えた。



──────────────────


 おんぷちゃん、どんな格好してる?



              うさぎ


──────────────────



 私はすぐに返信を送った。



──────────────────


 えっと、ピンクのワンピースを着て、白いカーディガン羽織ってます!



             おんぷ


──────────────────



 返信を送った。

 すぐにスマホがブルブルとまた震えた。



──────────────────


あ! 見つけた♪



             うさぎ


──────────────────



 私はスマホを見て、キョロキョロと見渡した。



「はじめまして! おんぷちゃん♪」




   ◆ ◆ ◆




 ──ドタドタドタドタ!


 私は夜にうさぎさんと別れて、帰ってきた。

 そして、すぐにお風呂に入った。



 汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い……。


 ゴシゴシと身体を強く洗っても、汚いのはとれない。

 私は騙されていた……。

 うさぎさんに騙されていた……。

 うさぎさんは実は30代のおじさんで……。

 私は今日その人に……汚されて……中に……。


「おぇ……っ。」

 思い出すだけで吐き気がする。

 行かなければ、良かった。

「……っ、ひっく……うぅ……、あ……ぅ。」

 ただただ涙が溢れた。



 ──【だから、言ったのにね】



 そんな言葉が聞こえたような気がした。




 お風呂から上がった後、自室に戻り、すぐに布団に入った。

 今日はもう寝よう。パソコンも見たくない。

 このまま永遠の眠りについちゃえばいいのに……。

 そう思い、重たい瞼を閉じた。




   ◆ ◆ ◆




「……ここは?」

 見慣れない部屋にいた。辺りを見渡すと大きな水晶が置いてあった。

 その水晶は少しだけ光を放っていた。

「…まさか、私死んだの?」

「ご名答を!」

 私の前に小さな女の子のシルエットが居た。この声は……。

「もしかして、私の部屋にいた、ミヤ……ちゃん?」

「お姉さん、よく覚えてたねー!」

 ミヤがパチンっと手を鳴らすと部屋が明るくなった。

「よく、わかったね? 自分が死んだって!」

「なんとなくかな……、私もう死にたいって思ってたし」

 ミヤは「そっかー。」って言い大きな水晶を見た。

「あ、うさぎさんって人は死んだら地獄に送るからね!」

「じゃあ、ここは天国なの?」

 天国にしては私のイメージとは違うと佳音は思っていた。

「違うよ、ここは地獄だよ」

 自分の人生が親の人生まで影響させてしまったから自業自得ってことか…。

「お姉さん、私ね、ここの女王様なんだよー!」

「女王様?」

「うん!私は“地獄ノ女王”だからね!私ねー、お姉さんを気に入ったの!」



 ───「だから、犠牲者にしようと思ったけど…やめた!」



 言葉が理解できない。犠牲者? 何を言ってるの?

 カツカツと足音が聞こえてきた。

「お嬢様、そんな説明でわかるわけないですよ。」

 身長の高い燕尾服を着た人が現れた。

 そして、ミヤは顔をキョトンとし、「そうなの?」と聞いていた。

「佳音様、お嬢様の大失態お許しくださいませ。」

 大失態ではない……むしろ使い方が違うのでは? と思ったがあえて口にしなかった。

「お嬢様こと、地獄ノ女王は自分の気に入った人を犠牲者にする趣味がありまして……」

 犠牲者!? この子、頭おかしいんじゃないの!?

「もうっ! そんな堅苦しいのはいいよ! お姉さん! お姉さんは今から天国からお迎えが来るんだよ? こんな場所はお姉さんが来るところではない」

「連れてきたのは誰ですか……」と身長の高い燕尾服を着た人が囁いたがミヤには聞こえていないらしい。


「お姉さん、次は人生楽しまなきゃね!」

 ミヤは満面の笑みでそう答えた。




   ◆ ◆ ◆




 地獄ノ女王は屋根付きのベッドのど真ん中で寝っ転がっていた。

「よろしかったのですか?」

「なにがー?」

「佳音様を天国にお送りして」

 執事の問いに地獄ノ女王は「あ〜、そんなこと?」と言った。

「いいの! それに私が気に入ったのはお姉さんじゃなくて。」

 地獄ノ女王は黒い四角いものを出した。

「パソコンだったみたい!」



 ──カタカタ。カタン。



【ぱそこんはたのしい】



その言葉を見た執事は「さようでございますか」と笑った。



ネットってどこまで信じたらいいかわかりませんよね、ってお話です。

ネットの世界って怖いですよね

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