19人目 小水 純奈
「お会いできて光栄です。天国ノ王女様」
「キレイですね〜!」
「あら、ありがとう♪」
「……なんでいるんだ!?」
地獄ノ女王ことミヤはリルキとリミカの部屋に遊びに来ていた。遊びに来ていたというより、仕事が嫌で逃げてきたと言った方が正しい。
そして三人で仲良く(?)話していると天国ノ王女ことエルリが訪問してきた。
「最初、ミヤちゃんの部屋に行ったんだけど、執事さんが逃げっていうから、先に双子ちゃん達に挨拶しとこうと思って♪ そしたらタイミング良くミヤちゃんもいたわけ! 一石二鳥♪」
「クロアの仕事部屋に逃げればよかった……」
「地獄ノ女王様は天国ノ王女様の事、嫌いですか~?」
「嫌い!!」
「きっぱりね……」
「なんでですか~?」
リルキの言葉にミヤはエルリのある部分を見た。
そして、プイっと視線を背けた。
リルキはそれを見逃さなかった。
「あ〜!! 胸が大きくて嫉妬してるんですねー!」
静寂が訪れた。
まるで時が止まったように静寂が訪れた。
「リ、リルキ何を言ってるのですか!!」
その静寂を破ったのはリミカだった。
「ミヤちゃん嫉妬しちゃって可愛い~!」
「ち、違う!! む、胸じゃにゃい!」
「噛んでるわよ~」
「ちなみにうちのリミカは、程よく育ってきてまーす!」
「リルキ、ぶん殴りますよ?」
エルリは「あら、ほんとね」とリミカの胸を触った。
またもや静寂が訪れた。
「…………な、なにしてるんですかぁ!?」
「確認よ♪」
「変態のエルリはおかえりしてくださーい!」
「あら、ミヤちゃん嫉妬は良くないわよ? それにミヤちゃんみたいな小さい子が好きな殿方だって居るわ♪」
「し、嫉妬してないし!」
「嘘だぁ~!」
「嘘じゃにゃい!!」
「また噛みましたね」
「噛んでにゃあああああい!」
◆ ◆ ◆
教えてください。
どうしたら身長が伸びるのか、胸が大きくなるのか、大人っぽい女性になるのか。
高校三年生にもなって、小学生の時から変わらない体型である。
みんなは体つきがどんどん大人になっていくのに、自分だけ取り残されているみたいで嫌だ。
「純奈、また牛乳飲んでるの?」
「うん、玲華ちゃんみたいに身長伸欲しいし、胸大きくしたいから」
「純奈はそのままでも可愛いのに」
「小学生みたいな体型は嫌なの!!」
私、小水純奈の悩みは小学生みたいな体型だ。
もともと小さい頃から小柄ではあったが中学に入った途端、身長が全然伸びなくなり、中一から高三までに伸びた身長は僅か二センチである。
女の特徴でもある胸なんか、少しだけ膨らみがある程度だ。
「おーっ、小学生! また牛乳飲んでるのか?」
私を小学生呼ばわりしたのは幼なじみの三谷卓だった。
「小学生じゃないし!! あんたも中学まで私と同じくらいだったでしょ!」
「俺は高校で伸びたんですー」
「腹立つ!!」
「あー、肘おきに楽だなぁ」
そう言って、卓は私の頭の上に肘を乗っけてきた。
「重いー。やーめーろーっ」
「二人は相変わらず仲いいね」
玲華ちゃんは口元に手を丸め、クスっと笑った。
「成羽さん、やめてくださいよー。ただの腐れ縁ですよ」
「そうそう卓とは、ただの腐れ縁」
「そうですよ、それに仲良くするのは成羽さんみたいな女子がいいですよ! 身長も低すぎないし、胸もありますからね!」
「うわっ、卓、変態」
「あいにく俺には身長が低くて貧乳には興味ありませんから」
「なんですってぇ!?」
ギャーギャーと卓のやりとりに玲華ちゃんはずっと笑っていた。
◆ ◆ ◆
「あら、あの子ミヤちゃんみたいね」
エルリは水晶に映っている小水純奈を指さした。
「そして、隣にいるのは私みたいね♪」
「あの子は私みたいじゃない!!」
ミヤとエルリは大きな水晶のある部屋にいた。
大きな水晶に映っているのは小水純奈と成羽玲華だった。
「あら、違うの? だってあの子小さくて可愛いじゃない。ミヤちゃんよりは少しあの子の方が大きいけど、隣にいる人といたら、まるで私たちみたいだわ」
「うるさい!」
ミヤの言葉にエルリは「もう、照れ屋さんなんだから」なんて言っていたが、ミヤは無視した。
「っていうか、なんでエルリがここにいるの」
「あら、いたらダメなの?」
「ダメ」
「即答ね。……なら、私は双子ちゃん達の部屋にでも行ってるわ。遊びに来てね♪」
エルリはそう言うと、大きな水晶のある部屋から出ていった。
ミヤは、やっと出ていった、と思い一つため息をついた。
そしてもう一度、水晶に映る二人ともう一人の男の子を見た。
ミヤの口角が上がる。次の犠牲者の候補が決まった。
「……みーつけた」
ミヤはそう小さく呟いた。
その頃、エルリは双子の部屋に向かったいた。
犠牲者が出るだろう、と予告しに行くために。
◆ ◆ ◆
卓とは本当に腐れ縁だと思う。
生まれた時の病院も一緒だった。親同士が病室も一緒だった。
そして、幼稚園、小学校、中学校、高校と全て一緒であった。そして全部同じクラスである。
だから、仲のいい友達ではあった。
そんな卓をいつから好きになっただろうか。
この気持ちは誰にも伝えたことが無い。
卓と私には小さい頃から積み上げてきた時間があるから誰にも邪魔されないと思ったから。
だけど、その積み上げてきた時間が、そろそろ切れそうになる。
高校を卒業したら私は保育士になりたい為、短期大学に行く。
そして卓は地元で就職をするらしい。
つまり会える時間が少なるということ。
この気持ちを伝えようとは何度もした……が、卓は私みたいな体型には興味が無いと言った。
それを聞いたら急に弱気になった自分がいた。
積み上げてきた時間はあるが、体型はどうにも出来なかった。
努力はしたけど、結局は小学生体型で止まってしまった。
周りのみんなは大人っぽい体つきになっていくのに自分だけ取り残されていると思い、告白する自信を失ってしまったのだ。
それに玲華ちゃんみたいな女の子に対する態度と私との態度が全然違った。
私には優しくなんかしてくれない。
女の子として見られてない、と思っていた。
なんて考えていると、急に部屋のドアが勢い良く開いた。
「一緒にゲームしようぜ~」
「卓!? なんで私の部屋に?」
「今日、俺の母さんいなくて、ここでご飯食べさせてもらえって言われてさー」
「まぁ、私たちの家は隣同士だし。親同士も昔から仲がいいからね」
「それよりゲームしようぜ! 部屋掃除してたら久しぶりに出てきた」
卓が持っていたのは私たちが小さい頃に流行ったゲームだった。
「懐かしい! 小学生の時にやってたヤツじゃん」
「やろうぜ!」
「うん!」
小学生の時はこの時間が好きだった。
卓とゲームをして、二人でよく時間を忘れ、夜遅くまでしていて怒られたものだ。
「ちょっ! 卓そこでアイテム取らないと!」
「え、あ……あぁー! ゲームオーバー……」
「下手くそだねー。昔から」
「なんだと!?」
「だって昔から下手くそじゃん」
私は笑いながら、卓をバカにした。
「……昔から変わってないよな」
「ん? なにが?」
「純奈の笑い方」
私の笑い方……?
「急にどうしたの……?」
「純奈」
卓は真面目な顔をして私の目を見てきた。
「……なに?」
「………………あぁー! やっぱ無理!!」
卓は急に赤面し始めた。
「なにが!?」
「なんでもねぇ! 後さっきの言った言葉は昔から体型も何もかも変わってないってことな!! じゃあ俺先にリビング行ってるわ!!」
卓はドタドタと走りながらリビングに行った。
「……はぁ!?」
結局何がしたかった理由!? 意味わからないんだけど!!
てっきり真面目な顔をして私の目を見てきたから告白でもしてくるのかと期待した自分がバカだったよ!!
◆ ◆ ◆
「甘酸っぱい青春をしてみたいわけですよ!」
「わかるわ、その気持ち」
「私には天国ノ王女様はモテそうにみえます」
エルリはリルキとリミカの部屋にいた。
そして、何故か恋愛の話。略して恋バナをしていた。
「ところで天国ノ王女様、私たちに何か言いに来たのではないのですか?」
「あ、忘れてたわ。……ミヤちゃん……地獄ノ女王様が犠牲者を見つけたわ。近いうちにまた一人犠牲者出そうよ」
リルキとリミカの表情が固まった。──が、リルキはすぐに不思議そうな顔をした。
「犠牲者を見つけた?」
「地獄ノ女王様の犠牲者は地獄ノ女王様の選んだ方なの。ある部屋に大きな水晶が置いてあって、そこで人間界の世界を見ているわ。そして、そこで犠牲者を見つけるの」
「止める事は出来ないのですか? 」
「止めれないと思うわ。地獄ノ女王様の特権というものもあると思うわ。例えば……生きてる人間を死に導く……とかね」
「本来ならしてはいけないよね~」
「ええ、よっぽどの人間ではない限りではないとしてはいけないわ」
「私たちだと、やはり身分の差もありますから……」
「でも天国ノ王女様も出来そうだよね~。生きてる人間を死に導くとか」
「私には無理よ。そもそも天国の者は生きてる人間を死に導くなんて出来ないわ。地獄と天国だと違うところが沢山あるもの」
「話が逸れてますよ、リルキ。それより犠牲者を出さない方法を……」
「ねぇ、犠牲者はむしろ出させた方がいいよ!」
「「え?」」
リルキの言葉にリミカとエルリの声が重なった。
「だってさ~ヘタにそういう事やったらバレるし。地獄から追い出される可能性もあるよ? それに僕が思うには地獄ノ女王様って、勘がいいと思うんだよね~。だから、あえて犠牲者を出させて方がいいよ。時間はたっぷりあるんだし」
「確かに地獄ノ女王様の犠牲者は地獄に行く者ばかり……天国に行く者は犠牲者にならないわ」
「ですけど、犠牲者を出すわけには……」
「リミカ頭固い~」
「リルキ! 私たちの仕事を忘れたのですか!?」
「忘れてないよ。この前も言ったでしょ。時間をかけて解決しようって」
「ですが……!」
「リミカはお兄ちゃんの言うこと聞けない悪い子なのかな?」
リルキはニコッとリミカに笑った。
リミカはその笑顔を見るなり、黙り込んでしまった。
「と、とにかく。今回の犠牲者を止めない方針にするわね。それと二人でヘタに動かないこと。なにかする時は必ず私の報告して」
「わっかりました~!」
「はい……」
◆ ◆ ◆
次の日、学校に登校した私は朝からびっくりするような光景を目にした。
それは、いつも私より早く登校する玲華ちゃんと、いつも私より遅く登校する卓が仲良さそうに一緒に話していた。
「あ、純奈おはよ」
「おはよ、玲華ちゃん」
玲華ちゃんは登校してきた私に気づいた。私は卓と目が合った──が、目を背けられてしまった。
いつもなら私をバカにしてくるのに……。
「純奈……?」
「な、なに?」
「なんかあった?」
「べ、別にないよ! それより卓となに話してたの?」
「んー? 綺麗な女優さんの話だよ! ほら、最近放送されてる探偵ドラマに出てる」
「あー! 幽霊と話せるやつね! 確か『死んだ俺の話をしよう』って、ドラマ名だっけ?」
「そうそう。それに出てる姫神探偵役の人が綺麗だよねって話」
「その人クール系だよね。モデルもやってるし凛としてて綺麗だよね」
「胸は小さいから俺が大きくしたい、って三谷くん言ってたよ」
玲華ちゃんは笑った。
玲華ちゃんの笑顔に、なにか心にチクリと刺さる感覚がする。
玲華ちゃんも見た目が女優さんみたいに綺麗だし、スタイルもいい。そして胸も大きい。
卓はやっぱり玲華ちゃんみたいな女の子が好きなのかな。
私みたいな体型は、きっと目にも入ってないんだろうな。
「ねぇ、純奈」
「なに?」
「三谷くんってどんな人が好みなのかな?」
「え?」
玲華ちゃんが急にそんな事を聞いてきて、私は少し戸惑った。
「す、少なくとも私みたいな体型には興味が無いと思うよ」
「えー、そうかな? 三谷くんと純奈は仲いいし……」
「腐れ縁だよ。きっと玲華ちゃんみたいな女の子が好みだと思うよ」
「それはないよ~」
玲華ちゃんの笑顔が眩しく見えた気がした。私が目指しても手が届かないようなものを持っている玲華ちゃん。私の欲しいものをなにもかも持っている……。羨ましいなぁ……。
◆ ◆ ◆
ミヤは一人で大きな水晶に話しかけていた。
「そう……その顔いい。犠牲者にとても良いの……」
大きな水晶にはある人が映っていた。
その人は勝ち誇った顔をしていた。
まるで、なにかの優越感に浸っているような感じに。
◆ ◆ ◆
その夜、私は自室で玲華ちゃんと卓が話していたドラマを見ていた。
(ふーん、やっぱりこういう綺麗系な人が好きなんだなぁ)
ドラマには、少し変態さんな幽霊が出ていた。
(卓みたい。綺麗な人に話しかける時のキャラとか)
ドラマの中に出ている女優さんは凛として綺麗。私とは大違いだ。
その時、ガチャっと急にドアが開いた。
「お、そのドラマに出てる女優さん好きなんだよなぁ~」
「卓!? なんで!?」
「ちょっと話があってな、隣に失礼するぜ~」
卓は私の隣に座ってきた。
「……ねぇ卓。話の前に質問していい?」
「ん? いいぞ」
「卓の好みって、どんな人?」
卓は腕を組んだ。
「そりゃあ、このドラマに出ている姫神探偵役の人みたいな綺麗な人! んで胸がデカイ人!」
「ふーん」
卓は何故かドヤ顔だ。
「でも好きな奴は全然違うぞ」
「え……?」
卓に好きな人なんて居たんだ……。
玲華ちゃんなのかな……?
あれ、でも全然違うって言ったよね……?
じゃあ、誰?
「そ、そうなんだ」
「俺さ、純奈が好きなんだよね」
「そうなんだ……って、え、えええええええええ!?」
「そんなに驚くか!?」
「だ、だって!」
綺麗な人が好みだって……胸が大き人が好みだって……それに、それに……頭が混乱して、出てこない……!
「あー、もしかして俺の言った好みと逆だからびっくりした?」
「そう、それ!」
「あのなー……確かに見た目の好みはあるけど、俺は見た目じゃなくて中身で判断する奴だから……」
「え、そうなの!? でも私だけ扱いひどい……」
「照れ隠しに決まってるだろ」
「え、これ夢!?」
「夢じゃない」
「……っ」
いつの間にか、私の頬に涙が伝っていた。
「え、なんで泣いてんの!?」
「な、なんでだろ……嬉しすぎるからかな?」
「可愛いなぁ」
「う、うるさい!」
「で、返事は?」
「え……あ、ふ、不束者ですがよろしくお願いします……」
その夜、卓は私の部屋でドラマを見て、自分の家に帰って行った。
私もそろそろ寝ようとした時だった。
──【お姉さん、起きて】
幼い少女のような声が聞こえた。
「え、なんの声?」
「私の声!」
私の目の前にはゴスロリを着ている小さな女の子が立っていた。
「ゆ、幽霊!?」
「ちがーう! 私はミヤ!」
「ミヤちゃん……?」
「そうだよ!」
「え、夢?」
「違うよ」
今日はいろんなことが起こるなぁ。疲れてるのかなぁ?
「ねぇ、お姉さん。明日気をつけた方がいいよ?」
「え?」
「それだけ言いに来たの! はい、おやすみー!」
「えぇ!?」
ミヤちゃんは手をヒラヒラとさせている。
あれ? 急に眠気が……。
次の日、私は卓と一緒に学校に登校した。私たちを見て、玲華ちゃんはすぐに駆け寄ってきた。
「珍しいね、二人一緒なんて」
「実は俺達付き合うことになったんだ」
「え? そうなんだ! おめでとう!」
「ありがとう。玲華ちゃん」
玲華ちゃんは笑顔で「いえいえ」と答えた。
その日の放課後、玲華ちゃんが大事な話があると言ってきた。
卓と帰る予定だったが、先に帰ってもらった。
教室は私と玲華ちゃんの二人になった。
「玲華ちゃん話って?」
「…………でょ」
「え?」
「なんで三谷くんがあんたみたいな奴を選ぶわけ!?」
「れ、玲華ちゃん……?」
玲華ちゃんは私に近づいてくる。玲華ちゃんが怖くて、後ろに下がる。一歩、また一歩と下がるがとうとう壁に背中がついてしまった。
玲華ちゃんは私の顔の横の壁にバンっ! と手をぶつけてきた。
「あんたは私の引き立て役……! 元々三谷くんが好きであんたに近づいたのに……! 私のことを可愛いと言ってくれた……! あんたよりスタイルもいい! 見た目も!! なのになんでよ!? なんで小学生体型のあんたが三谷くんをとるの!?」
「玲華ちゃん……」
「腹立つ!! あんたのなにもかもが!! あんたと居ると物凄く虫酸が走る!! 三谷くんを返せ!!」
「す、卓は物じゃない……!」
「うるさいっ! 三谷くんは私の物に……!」
玲華ちゃんは片手を上げた。
(ぶたれる!)
ギュッと強く目を瞑った時だった。
「俺、物じゃないんだけどなぁ~」
「み、三谷くん……」
玲華ちゃんはそっと片手を下ろした。
「忘れ物したから取りに戻ってきたら、まさかの修羅場でびっくりしたよ……それも俺のことで……成羽さん、俺その性格薄々気づいてたよ。だって、純奈が何かで落ち込んでいる度、心配するふりをしてたけど、顔では笑ってたよ? 知ってた?」
卓は、ちゃんと見てたんだ……。
卓は私の腕を引いた。
「純奈帰るぞ。それと成羽さん……今後、純奈に近づいたら、女だからって容赦しないから」
私は卓に腕を引かれながら教室を後にした。
◆ ◆ ◆
ムカつく、ムカつく!! ムカつく!! ムカつく!! ムカつく!! ムカつく!! ムカつく!! ムカつく!! ムカつく!! ムカつく!! ムカつく!! ムカつく!! ムカつく!! ムカつく!! ムカつく!! ムカつく!! ムカつく!! ムカつく!! ムカつく!! ムカつく!! ムカつく!! ムカつく!! ムカつく!! ムカつく!! ムカつく!! ムカつく!! ムカつく!! ムカつく!! ムカつく!! ムカつく!! ムカつく!!
あの二人ムカつく!!
この私を侮辱するなんて……!
学校に居させられないようにしようか……?
そういえば中学の時も、そんなことして、引っ越しちゃった子がいたなぁ。
「この成羽玲華を怒らせた罪は重いわよ……!」
──【罪が重くなるのはお姉さんの方だよ♪】
「誰よ!」
小さい女の子の声が聞こえた。教室にいるのは私だけなのに。
「ここ!」
後ろから声が聞こえた。振り返るとゴスロリを着た女の子が立っていた。
「お姉さんはじめましてー! 私はお姉さんの手助けに参りましたー!」
「はぁ?」
「綺麗なお姉さんの手助けをしたいと思って! ねぇ、今から私の言うとおりにしてくれない? そしたら手助けしてあげる!」
手助け……? こんな小さな子が何を言ってるの?
「手助けってどんなこと?」
「んー、例えば……お姉さんの消したい二人を二度と目の前に現れないようにするとか」
小さい女の子は笑顔になった。玲華はゾッとした。
「ふーん。面白そうね。乗ったわ」
「ありがと! じゃあ、とりあえず家庭科室に行ってきて!」
「なんで?」
「家庭科室に二人を目の前に現れないようにする秘密道具みたいのがあるの!」
秘密道具? なんか嘘ん臭く聞こえるなぁ。
でも本当にあるかもしれない……。なかったら、この小さい女の子を……。
「わかったわ」
私は家庭科室に向かうことにした。
「じゃあ、いってらっしゃーい!」
満面の笑みで小さい女の子は私を送り出した。
「ふふふっ」
◆ ◆ ◆
学校が臨時休校になってしまった。
それと同時に悲しい知らせが私の耳に入ってきた。
まず、学校が臨時休校になってしまった理由は家庭科室が爆発したらしい。
原因は不明である。その日の授業終わりに家庭科の先生は、ちゃんと確認して家庭科室に鍵をかけたらしい。
そして悲しい知らせは、玲華ちゃんがその爆発に巻き込まれて還らぬ人になってしまった。
なぜ、玲華ちゃんが家庭科室に居たのかもわからない。鍵を締めたはずの家庭科室になぜ……。その当時、職員室に鍵があった。どうやって家庭科室に入ったのか……。私にはわからない。
◆ ◆ ◆
ミヤは【地獄ノ女王様所有物部屋】に居た。
「ねぇ、お姉さん私言ったでしょ? 二人を目の前に現れないようにするって。私ちゃんと叶えてあげたよ?」
ミヤが話しかけても返答など返ってこない。
「まだ足りない……まだ犠牲者を集めないと……」
それを横目で見ている執事は何も言わなかった。
今回の話は作者のコンプレックスを入れてみました←
作者も身長高くして胸を大きくしたいです←
~ご協力感謝~
『死んだ俺の話をしよう』黒猫屋マト
今回出てきたドラマ名はリア友の黒猫屋マトがなろうで連載しているの『死んだ俺の話をしよう』を使わせていただきました!
ありがとうございます!!
※本人からは了承を得て使用させてもらいました