1人目 愛川 恵梨
──今日もまた楽しい一日が始まる。
私の毎日は楽しすぎる、いや人生が薔薇色だ。
私の通っているエリート校はお金持ちしか通えない高校である。
そして私、愛川恵梨は現にここの生徒会長でもあり、テストはいつも一位で運動神経抜群で神からひいきされた美貌の持ち主である。スタイルも良くモデルと間違えられるほど。そして、両親が学校に多額の寄付をしているため、生徒どころか先生だって私に逆らわない。
だから、私の高校生活はいつも楽しいで溢れかえっていた。
でも、私は今とても腹立たしかった。
クラスの中心で私とムカつく女の谷山が立っていた。
「ねぇ谷山さん、私昨日なんて言ったか覚えてる?」
谷山は肩をビクッとさせた。
「私、今日までに用意しろと言ったわよね?」
「そ、それは……」
周りの人はクスクスと笑っている。
「なんで用意出来てないの?」
「ご、ごめんなさい! ごめんなさい!!」
谷山は顔を両手で隠して泣き崩れてしまった。
私は谷山を見下すように見た。
「土下座しなさいよ、床に這いつくばって。それじゃないと、あなたのご自慢の会社を潰すわよ?」
「う……、あぁっ、うぅ……、ご……、ごめんなさい……」
谷山が土下座した。
「アハハー!」「本当に土下座しやがった!」「超ウケルw」
教室にクラスメート達の笑い声が響きわたった。
「……お、おぇっ」
「うわっ!」「汚ーい!」「吐きやがった!」クラスの人達は一歩下がった。
「……っ!汚いわね! 片付けときなさいよ!!」
「す、ずみまぜぇん」
「ふん! 私はお手洗いに行くから、それまでに片付けとくのよ!」
私は教室を後にした。あんな汚いところにいたくない……!
私はひとまず、お手洗いに向かい化粧をなおしていた。
「さっすが恵梨様! 谷山の奴、土下座しましたよ!」
「それにしても、用意できないなんて、本当にお金持ちなのかしら?」
「ダメよ、葉山、澤井そんなことを言ってしまったら……。本当の両親に育てられなかったから、ああなってしまっただけよ」
実は谷山は養子である。そのため、お金のことなど親にもあまり話せず、今のクラスでも孤立していた。
谷山の義母と義父は確かに普通の家庭よりは裕福だが、この学校ではほとんど最下位に近い。
そして、この前私の意見に一人だけ反した。
──私より低い分際で……!
だから、私は500万をするカバンを用意しろと言った。
谷山の家では確かに用意できるものだが、本当の両親ではないせいか谷山は少し遠慮がちらしい。
この前のパーティで谷山の義父が話していた。
まぁ、私に反したからにはそれぐらいでは済まされないけど。
思い出しただけで、また腹が立ってきた。
「次の授業は出る気がしないから、葉山、澤井先生に伝えといて」
私は屋上に行くことにした。
◆ ◆ ◆
腹が立ったときは屋上に来る。
だけど風が強いときにはあまり来ないが今日は風が弱く、快晴だ。
──キィ。
この場所は私のお気に入りの場所。特に授業など出たくないときに使う場所。
だって、ここならどこよりも高いから
“私が人間を見下してるように見えるから”
みんな真面目に仕事をしたり、授業を受けてる中、私はここでサボっているということの優越感。
みんな、嫌でも授業を受けなきゃいけないのに、私は気分で決めれる。受けなくても先生も何も言わない。
──なんて愉快なの……!
──私の人生は勝ち組の人生だ!
「あ、は……あはははははははははははははははははははははははははははははははは……!」
そう考えてると笑いが止まらなかった。
──【お姉さんの笑い方、怖いね】
どこからか小さな女の子の声が聞こえた。
「だ、誰よ……」
「私? 私は、通りすがりの女の子!」
通りすがりの女の子という小さな女の子は真っ黒なドレスを着ていた。
可愛い顔してるのに気味が悪く見えた。
私は作り笑顔をした。小さい子は頭が悪いから、笑顔の人はみんないい人だと思うに違いない。
「ダメだよ? ここはお姉さんみたいな大きな人達が通う学校だから、あなたが来ちゃダメなところよ? 私が一緒に行ってあげるから、おうちに帰りましょ?」
小さな女の子のジッと私の目を見た。
「お姉さんみたいな人、私嫌い!」
「なっ!」
「バイバーイ! お姉さん!」
小さな女の子はフェンスを乗り越え、そのまま下に落ちてった。
「!?」
私がフェンスから下を見ても、小さな女の子はいなかった。
気持ち悪い、幻覚でも見たのだろうか?
とりあえず今日はもう帰って体を休めよう。
◆ ◆ ◆
次の日の朝はいつもどおりの朝だった。
──また、楽しい一日が始まる。
私は登校して、すぐに谷山の所に行った。
「谷山さん、持ってきた?」
周りのみんなはクスクス笑っていた。
どうせ、今日も持ってこれないだろう。皆そう思っていた。
でも谷山の手には──
「はい、五百万円のカバン。」
谷山は私に五百万円のカバンを押し付けた。
「はぁ!? なんで!」「まさか親に頼み込んだの?」「偽物じゃない本物だ……」
クラスメート達がびっくりした声をあげた。
「これが欲しかったんでしょ? もう私に構わないでくれない?」
谷山は堂々としていた。昨日の谷山とはまるで別人みたいに。
「ま、待ちなさいよ!! これくらいで私を満足させれると思うの!? 大体、あんたは……」
「用意したからいいでしょ、別に? それともまだなにかあるの? あるなら言ってみなさいよ」
こいつ……! 谷山の分際でムカつく……!
「帰るわ……」
「え、恵梨様!?」
「帰るわ!! 気分が悪いのよ!!」
ムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつく!!!!!!!!!!!!!!!
私は早足で外に出た。イライラを静めるために早足で。
そして、信号が赤になったのも気づかなかった。
──キッキイィィィィィィィィィィ!!!!!!!!!!!!
──ドンッ!!!!!!!
地面が真っ赤に染まっていく。
意識が薄れていく……。
──【やっと、私のものになった。】
誰かの声が聞こえた。
どこかで聞き覚えのあるような声が…。
そこで私の意識は途切れた。
◆ ◆ ◆
私は目を覚ました。
どこかわからない。
けど、私の隣に大きな水晶があった。人間より大きな水晶。
「あ、やっと目が覚めた?」
私の目の前には真っ黒なドレス着ている女の子が立っていた。
そうだ、あの屋上で会った。女の子だ。
「ちょっと、ここどこよ? 私帰りたいんだけど?」
女の子はニコッと笑った。
「そこの水晶見て?」
私は言われるがまま横にある大きな水晶を見た。
そこに映っていたのは──
──自分のお葬式
「な、なによ! これ!!」
「覚えてないの? 車に轢かれて死んじゃったんだよ?」
死んだ!? 私が!?
「死因の原因は事故死。走っていた車は飲酒運転の車でものすごいスピードが出ていた。お姉さんは轢かれて即死。まぁ、でも赤になっていたのに渡ったお姉さんが悪いけどね?」
女の子はまた笑みを浮かべる。
「こんなの嘘に決まってるだろ!! おい!糞ガキ!!」
「私は糞ガキではないよ? そうだなー……ミヤ! 私はミヤって言うの!」
「んなの、どうだっていいんだよ!!」
私は糞ガキの胸ぐらを掴んだ。
「そんなに怒んないでよー? 自業自得なんだから。それに死んだのはお姉さんだけじゃないんだよ?」
えっ……?
どんどん足音が近づいてくる、誰かの足音が。
「お嬢様」
私の目の前には背の高い男の人と谷山が現れた。
「た、谷山!?」
「あ! 執事! ちょうどいいところに! お姉さん、ほらお姉さんの“双子の妹の谷山恵美”さんだよ?」
「!?」
双子の妹!?
この糞ガキ! なに意味わからないことを…!
「ち、ちょっと話が違うじゃないの! “死ぬのは愛川恵梨の方だけ”でしょ!? なんで私まで!?」
……は? 死ぬのは私の方だけ? 余計意味がわからない!!
「まぁ、落ち着いて! 執事がぜーんぶ説明してくれるから!」
落ち着いていられるはずないでしょ!?
「愛川恵梨様、谷山恵美様。あなたたちは双子です」
双子…!?
「同じ性別なのに二卵生とめずらしく、恵美様は谷山家の養子になられました。愛川家は代々一人娘が世継ぎになりますので、妹の恵美様はお生まれになったことを公の場には公表せず、養子になられたのです。」
「う、嘘よ……! 私のお父様はお母様もそんなことは一言も…! 私が養子だなんて!」
「だから、お姉さんに反抗できたんだよ?」
「えっ?」
糞ガキは私たち二人を指さした。
「だって、双子だもん。だから性格が似たんだよ。2人とも“私が思っていることが全て正しい”って思ってるからね! だから反抗できた……」
「その後、恵美様はお嬢様と出会った。そして、高いカバンなどお嬢様が代わりに用意したわけです。」
「ち、ちょっと待ちなさいよ! 私も一回あんたに会ったわ!」
「それはただの様子見だよー」
なによ、こいつら……!
「私ね、お姉さんをこの水晶で見たとき“欲しい”って思ったの。でも、まさかお姉さんが双子だなんて、私も知らなかった。だから…」
「──2人とも、私の所有物にするって決めたの!」
何を言ってるの…でも!?
糞ガキは奇妙な笑みを浮かべた。
「私の所有物になってね?お姉さん達?」
◆ ◆ ◆
【地獄ノ女王所有物部屋】
大きな扉にそう書いたプレートがぶら下がっていた。
その扉からミヤが出てきた。もちろん、執事も一緒に。
「コレクションが増えたね、執事!」
「そうですね、お嬢様」
ミヤはスキップをし鼻歌交じりで長い廊下を歩いている。
廊下ですれ違う人達はミヤを見た途端、跪いていく。
ミヤはそれを無視してスキップをし鼻歌交じりでその場を後にした。
恵梨は最初の地獄ノ女王の犠牲者にすると決めてました。
お嬢様で性格の悪い人だと、なんでこの人が犠牲者になったのか、とわかるからです。
ちなみに恵美と双子設定にしたのはこじつけですw
「なんかしっくり来ないなー、あ、二卵生の双子にしちゃおー」という作者の考え方ですw
話決める時とか人物決める時は「(;-ω-)ウーン」と悩むことはそうそうないです。
しいていうなら名前決める時くらいでしょうかw
作者の周りにリアルにいる人たちの名前は使いたくないのでw
でも恵美って名前よく良く考えたらリア友のお母さんの名前です……。
ダメだこりゃw
地獄ノ女王を今後ともおねがいします!