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地獄ノ女王  作者: 夜魅
11/35

10人目 石浜 千帆



 ──またやってしまった。



 私の目の前で一人の女の子が泣いている。

 今日も私は、ある人をいじめて泣かせしまった。

 最低な人間だってわかっている。

 ──けど、私だっていじめられたくない。

「っあ…あぁ、……うぁっ」

 ごめん、ごめんね。芽依(めい)──。




  ◆ ◆ ◆ 




 地獄ノ女王ことミヤは、ある動画を見ていた。

「本当に人間って醜いなー」

 ミヤの大きな瞳には女の子のいじめの様子が映っている。

 一人の女の子が泣き、それに対して皆笑っている。

 なんと醜い光景だ。

「お嬢様、またそんなの見て…」

「だって、面白いんだもん。次の犠牲者は、こんな人達もいいかもね」

 ミヤは屈託ない笑みを浮かべた。




   ◆ ◆ ◆




 芽依とは小さい頃からの幼なじみだ。

 同じ幼稚園、同じ小学校、同じ中学校、そして現に同じ高校だ。

 腐れ縁というのもあるせいか全部同じクラスだった。

 引っ込み思案の芽依は周りから見ても可愛い顔をしていて、男子からも女子からも可愛いと言われてきたが、いつも恥ずかしがり、よく私の後ろに隠れていた。

 そんな私達は高校でも親友の関係でいた。

 芽依は相変わらず引っ込み思案の性格だったが可愛い顔をしているため男子から告白されることが多かった。

 二年生になると私は麗夢(れむ)と仲良くなった。麗夢はクラスの中心的な存在、言いかえればクラスの女王様だ。

 麗夢と仲のいい新里(にいさ)結愛(ゆいあ)とも仲良くなった。三人は引っ込み思案の芽依を可愛い、と言ってくれて、五人はすぐに仲良くなった。

 

 季節は夏になり、麗夢は同じクラスの村木(むらき)くんが好きだと言ってきた。四人は麗夢の恋を応援することにした。

 ──が、村木くんは芽依に告白をしたのだ。

 芽依は、もちろん断った。麗夢の気持ちを知っていたし、それに芽依は付き合うとか考えたことがなかったからだ。

 だが、麗夢は村木くんが芽依に告白した事が気に食わなかったみたいで、芽依が村木くんに色気を使い、村木くんは芽依に告白をしてしまったと言い始めた。

 それから芽依へのいじめが始まった。

 皆、クラスの女王様の麗夢に逆らうことが出来ず、クラスで芽依をいじめ始めた。村木くんもその一人になってしまった。

 もともと好きだった人をよくいじめれるものだ、と思ったが私だって同じだ。

 私も親友だった人をよくいじめれるものだ。

 私は弱い人間なんだ。いじめなんかしちゃダメなのにみんなを止める勇気すらないんだ。

 ごめんね、芽依。



 ──自分がいじめられるくらいなら、私は親友を犠牲にするよ。



 季節は冬になろうとしていた。




   ◆ ◆ ◆




「みーっつけた」

 ミヤの声が大きな水晶のある部屋に響き渡る。

「次の犠牲者は、あの人」

 ミヤは水晶に映っている女の子を指さした。




   ◆ ◆ ◆




「みんなー! 注目ー!」

 麗夢の声が教室に響き渡った。

「私の足を踏んだから、(はやし)芽依さんが、みんなの前で土下座しまーす!」

「ご、ごめんね。で、でも、わざとじゃなくて…」

「踏んだくせに言い訳するの?」

 結愛が言った。

 でもみんな、わかっているんだ。

 麗夢が芽依を転ばせようと足を出したが芽依が誤って踏んでしまったことを。

「どーげーざ! どーげーざ!」

 新里はみんなを誘導するように声をかけた。

 逆らうことが出来ない、みんなは新里に誘導されるがまま、教室は土下座コールが響き渡る。

「もう先生きちゃうよー? はやくっ!」

 結愛が声をかける。

「…ご、ごめんなさい」

 芽依は頭を下げた。……だが、土下座はしていない。

「謝るだけじゃなくて、土下座しながら謝れ!!」

 麗夢がキレた。

「てめぇ、何様のつもりなんだよ!!」

 麗夢は芽依の髪の毛を勢い良く引っ張った。

「痛い…やめてっ……!」

 麗夢は、そのまま芽依の頭を床に押し付けた。

 その光景に、びっくりしてる人や目を逸らす人が出てきた。

「麗夢やっちゃえ〜」

 結愛の声と同時に麗夢の手が上がる。

(まずいっ!)

 そう思った瞬間だった──


 朝のHR(ホームルーム)を告げるチャイムが鳴った。

 麗夢は「ちっ」と小さく舌打ちをしてから席についた。

 他のみんなも麗夢が座った途端、自分の席に戻り始めた。

 タイミング良くチャイムが鳴ってくれてよかった、と心から思った。




   ◆ ◆ ◆




 水晶には、大勢の人が映っている。

 制服というものを着た人達が一人の女の子に向かって罵声を浴びさせていた。

「ねぇ、執事。次の犠牲者は、この人にしようと思うの」

「さようでございますか」

 ミヤの笑顔に執事は横目で見ていた。




   ◆ ◆ ◆




 委員会で遅くなった私は窓から見える空を眺め、早く教室からカバンとってきて帰らないと、と思いながら教室に向かっていた。

 教室に近づくにつれて誰かの甲高い声が廊下まで響きわたっていた。

 ──麗夢達の声だ。

 このまま三人の話の中に入っていくのもいいが、ドアの前で足が止まった。

「ねぇ、麗夢。そろそろ芽依いじめるのやめなーい?」

 結愛の声だ。

「芽依の奴、反応つまらなくなってきたしさ」

 結愛の意見に新里が付け足した。

「そうね…じゃあ、次は千帆(ちほ)でどう?」

 


 ──私?



「なんで?」

 結愛の問いに麗夢が応える。

「だって、芽依と親友だった子よ? もし千帆がいじめられて芽依が裏切ったら最高じゃない?」

「なるほど。まぁ、千帆は芽依を裏切ったから、芽依は絶対に千帆のこと助けないよね~」

「アハハ、それ最高だね!」

 甲高い笑い声が廊下まで響きわたってくる。



 ──次は私がいじめられるの?

 ──なんで?

 ──麗夢達のいうこと聞いてるのにどうして?



 私の足は教室から離れていった。



 いつのまにか屋上のドアの前に来ていた。

 うちの学校は屋上なんか入れないのに……。



 ──【お姉さん、弱いの?】



 聞きなれない声が聞こえた。

 どこから聞こえたのか……。

「お姉さん! 下! 下!」

 声の聞こえる方へ、目を向ける。

 そこには学校に着てくるには似つかわしくない真っ黒ワンピース…いやドレスだろうか、そんなことはどうでもいい。

 私の目に映っているのは小さくて真っ黒な女の子。

「だ、誰?」

「私、ミヤ!」

 ミヤと名乗る女の子は私の目をジッと見てきた。

「お姉さん、焦ってる?」

 ミヤの一言にドキッとしてしまう。

「お姉さん、親友がいじめられてるのに助けなかった……けど、今度は自分がいじめられそうだから、自分がどうしたらいじめられないか……そんなとこかな?」

「どうして、それを……」

「えへへ、“甘ったれんな”」

 先ほどの幼い少女の声とは全然違う声のトーン。世界観が変わるくらいで思わずゾッとしてしまった。

 声のトーンもそうだが、ミヤの表情も無邪気に笑う幼い少女ではなくなっていた。

「親友すら助けられない弱い人間はいじめられて当然だよ。いじめは連鎖なんだよ? その人に飽きたら、次は弱い人間に回ってくるんだよ?」

 弱い人間……。

「た、確かに私は弱い人間かもしれない……けど、いじめられたくない! それに芽依のいじめられるところも、もう見たくない…!」

「じゃあ、助けようよ?」

「そんな、簡単に言わないで!」

「一歩踏み出すんだよ、それだけで世界が変わるから、私が保証するよ!」

 ミヤが告げたと同時に光に包まれた。


 気がついた時には、ミヤはもういなくなっていた。

 私は窓から見える空を眺め、早く帰らないと、と思い私の足は教室に向かっていた。



 次の日の朝も、いつもどおり芽依はいじめられていた。

 芽依の「やめて、やめて!」という声が教室に響き渡る。



 ──【助けようよ?】



 あの子はそう簡単に言っていた…。

 けど、足がすくんで動かない、声が出ない…。

 助けたい…! そう思っていたけど、自分がいじめられるのが怖くて、ずっと言えなかった。

 芽依みたくなりたくない……けど、助けなきゃ。



 ──助けなきゃ!



「ね、ねぇ!」

 私はみんなに聞こえるように大きな声を出した。

 みんなの突き刺さる様な視線が痛い……けど、言わなきゃ何も始まらない。

「もう、こんなことやめない…?」

 教室には静寂が訪れた。この時間がすごく怖い……。

「流石に、やりすぎだと思うんだ…。私も……みんなも……だからさ、もうこんなことやめようよ?」

 うまく言葉に表せない。本当は、もっと説得力のある言葉で力強く言いたかった。

 けど、今の私にはこれが精一杯だ。

「ち、千帆……」

「はぁー? 何言ってんの?」

 麗夢の一言で静寂が破れた。

「芽依はいじめられるほど、私にひどいことしたんだよー?」

「そうだよ!」

 新里は麗夢に便乗した。

「千帆ー、どうしたの? 今日おかしいよー?」

 結愛は私の方にポンッと手を置いた。 怖くなり思わず、ゾッとしてしまう。

「れ、麗夢……なんで私いじめられてるの?」

 芽依は今にも消えそうな声で呟いた。

「悪い所あったら直すよ! ……だから、もうやめて……」

 また教室に静寂が訪れた。

「……だったら! 芽依の代わりに千帆がいじめられろよ!」

 麗夢の顔に焦りが見えていた。

「……ねぇ、そもそも芽依は麗夢に何をしたの?」

 一人のクラスメイトの女の子が麗夢に話しかけた。

「麗夢の好きな人を芽依がとったんだよ」

 麗夢の代わりに新里が答えた。

「ち、違う! 私は告白されただけで付き合ってない!」

「麗夢は芽依が麗夢の好きな人に色目を使ったって言ってるけど、芽依は色目なんか使ってない! 麗夢達の思い込みなんだよ!」

 私と芽依の言葉でみんなが戸惑い始めた。

 教室の中には不穏な空気が流れる。

 そして男子の一言で教室の空気が変わった。

「それって麗夢達悪くね?」

「そうだよな、思い込みでいじめたりしたらダメだよな…」

「ちょっ!? 何言ってんの!?」

「そうだよ! だって麗夢は芽依に──」

「もういいよ、2人とも」

 麗夢の声がいつもより低いのがわかる。

「おまえら……後で覚えとけよ」

 そう言った麗夢は教室から出ていった。

 結愛と新里は麗夢を追いかけるように教室から出ていった。

「め、芽依……」

 私は芽依と向き合った。

 芽依は今にも泣きそうな顔をしている。

「ごめんなさい!! 私、芽依を裏切る行為をして……許されないってわかっている……本当にごめんなさい」

 頭を下げた私に芽依は「顔を上げて」と声をかけてくれた。

「私、嬉しかった。千帆が、もうやめよう、って言ってくれたの……すごくすごく嬉しかったよ!」

「芽依……! 本当に本当にごめんなさい!!」

 他のみんなも芽依に次々と謝っていった。

 


 

   ◆ ◆ ◆




「麗夢!」

 結愛と新里は麗夢を追いかけていた。

 麗夢がいた場所は、夜遊びしていた時に見つけた、人影の少ない裏路地だ。

「……許さない、絶対に許さない……!」

 麗夢の瞳には怒りが溢れている。

「麗夢……どうするの? クラスのみんなを」

 新里の問いに麗夢は答える。

「もういっそのこと親も巻き込んじゃおうか…」



 ──【そんなのダメだよ】



 三人の後ろから、凶器を持った男がゆっくり歩いてきていた。




   ◆ ◆ ◆




【地獄ノ女王所有物部屋】のプレートが大きく揺れた。

「執事! 一気に三人の犠牲者を手に入れたよ!」

 ミヤは無邪気な笑顔をしながら喜んでいる。

「これで、近づいてきた……まだまだ、だけどね」

「そうでございますね」

 ミヤはスキップしながら自室に戻った。


皆さんには幼なじみがいますか?

作者にはいます。……というか田舎に住んでるんで、幼稚園からの幼なじみは10人以上いますw

幼稚園入る前なら一人かな?でも相手が男なのでたまに話す程度です(あ、今日は馬鹿にされたな(`)з´))


さて、雑談は置いとき……

今回の話は恋愛絡みのいじめです。

どこかで恋愛は食い違いになると、友情までヒビに入ってしまう……こう考えると恋愛って怖いですねw


最近アクセス数&ブクマが増えてきてます!みなさんのおかげです!ありがとうございます(((o(*゜▽゜*)o)))

このまま感想も!……すみません、調子乗りました┏oペコ

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