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魔法の森学園乙女ゲーム狂騒譚  作者: 深月 涼
学園入学から前期まで~ゲームの始まり~
3/47

新学期第1日目

 『school of Magic forest~きらめく愛の魔法~』という乙女ゲームがある。

 どうやら私は、生前これをプレイしていたらしい。

 タイトルは正直どうかと思うけど……。

 覚えている内容は、うっすらしているようでいて細かくもあるみたい。

 さすがにセリフまでは覚えていないようだけれど、各キャラクターへの攻略分岐条件程度ならパッと簡単に思い出せたから。

 で、目の前にいる集団に囲まれた集団は、どうやらそのゲームにおける主要な登場人物……いわゆる『攻略対象』みたいね。


 集団に囲まれている男子生徒たちの集団。

 何を言っているのか……まあ、それはいいとして。

 彼らがそうやって囲まれる理由は、ちゃんとある。

 それは、彼らがこの国……いえ、この『世界』の中でも有数の貴族や王族の子息だからだ。

 学園は貴賎問わず門戸を開く。

 それは建前だけではないけれど、どうしたって学生のほとんどは、生活に余裕のある貴族様たちが主になってしまう。

 後ろ盾の無い一般人は、よっぽど才能がない限りここには入れない。

 優先順位ってやつよね。

 魔法学校自体は他の場所にもあるそうだけど、ここほど歴史があって施設も充実している学園はそうないもの。

 だからとりわけ諸外国などは、自分たちの財力と能力を見せつける為、あるいは技術や何か役立つ物資を手に入れる為、こぞって有名子弟をこの学園に留学させたがる。

 彼らはそんな有名子弟達の頂点に君臨する、まさにビッグ5……ってこれ、別に私が言ったんじゃないわよ?『公式』よ?

 

 赤い髪に炎の瞳、ビッグ5の中でも中心にいる人物が、この魔法学園―――『魔法の森学園』の存在する国『セントラール』の第2王子、アルフレア。

 その右にいる青い髪の男子が南の国からの留学生、シャリラン。

 彼もまた皇太子という立場で、メインヒーローのアルフレアの友人でもある。

 やや後ろをついて歩くのは、黒い髪で精悍な体躯の将軍家子息ヴィクトール。

 確か、アルフレアの護衛も兼ねていたわね。

 それから、左斜め後ろをちょこちょことついて行くのは、緑の髪をしたセントラール王国宰相の息子グーリンディ。

 ……見た目ですぐわかるわ、ショタ枠って。

 後は……やけにうるさいのがいるわね。ここからでもよく聞こえるわ。

 ビッグ5の中でもとびきり一番の問題児、黄金色の髪をした紙一重、ラビ少年。

 サブキャラクターや隠し攻略対象もいるけれど、メインとなるのはこの5人ね。

 …………自分でもどうかと思うけど、ろくに世間を知らない人間がこの5人についてはやけに詳しいのって……何だか気持ち悪いわー。

 そういえば、この『ゲーム』の『ヒロイン』って実在しているのかしら?

 確か初接触はもう少し話が進んでからだったはずだし、今見かけなくても別に不思議じゃないけど。

 どんな子だったかしら?


 それで……ええっと確か学内での分類は、魔法学科と魔法騎士科、魔法薬学錬金科、それに召喚学科の4つの学科に分けられているのよね。

 私は確かにご近所だけど、まさか自分が通うなんて想定していなかったから、いざ入るってなった時に慌てて資料を取り寄せてざっと目を通しただけだけで、言うほど詳しくもない。……あまり自慢にならないけど。

 で、その資料によれば魔法学科は属性の魔法、攻撃や回復といった『現象』を扱うのが主で、魔法騎士科は武術や体術、乗馬と組み合わせた魔法の研究と実践が主。

 魔法薬学錬金科は、様々な効果を生み出す(ポーション)を作り出したり、魔法道具(アイテム)を作り出したりする研究や実験を行うのが主な学科ね。

 ある意味、これが一番魔法使いらしいかしら。

 とはいえ、彼らの所属は魔法学科が2人、魔法騎士科が1人、魔法薬学錬金科が1人。

 そして確か、ゲームの主人公(ヒロイン)(メイン)(サブメイン)の所属する魔法学科所属のはずだわ。

 ……って事は、私はモブですらない背景キャラって事、か。

 まあ、気合い入れてわざわざ会いに行く必要も無いし……約1名私と同じ召喚学科がいるけれど、コネも繋がりもない私がいきなり話しかけたところで不自然だしね。

 縁があるなら自然と話せるでしょう。

 何かあった時用に情報ぐらいは手に入れられるよう、伝手でも探しておこうかしら?


 そうこうしている内に、新入学生オリエンテーションが始まる時間になった。

 いわゆる入学式ってやつね。

 席順は学科ごとに分かれる他は、入場順になっているみたい。

 おっと、前方に黄金の髪を発見。

 近くにいるのは顔見知りの子かしら?さすがに外ほど騒いではいないようだけど、それでも賑やかに楽しそうにはしゃいでいる。

 私と彼の席は、間に人を挟んで4~5人分。

 間違いなく背景だわ、私ったら。

 まー、それにしても学園長の挨拶ったら長い長い。

 そういえば、学園の上層部には理事会という存在もあるけど、ここの理事って、普段絶対に表に出ない謎の人物達なのよね。

 ……その内の1人はウチの義父(ちち)だったりする訳だけど。

 というか、ゲーム設定思い出した私の方がびっくりよ。

 臨時講師ってフラグだったのね。

 ……まごうことなき隠しですが何か?って感じ。


 入学生代表挨拶は、例のアルフレア王子様だった。

 確か『属性』は『炎』で『色』は『赤』だったはず。

 まあ、この後の属性選別測定検査でわかるんだけど。


 前にも言った通り、この世界の人間は皆緩いルールに縛られてる。

 本来なら制限なく何でも望みを叶えられるらしいけど、そこまでの魔力を持つ者自体少ないともいわれているわね。

 ただその分確かに危険も多くて、かつてはそのせいで一度滅びかけたとか。

 『大戦』の話は本で読んだからある程度知っているつもりだけど……。

 この辺は『ゲームの設定』であり、私が父や周囲の人に教わった一般知識の範囲内ね。

 現在は、物を知らない赤ん坊が生まれた直後にその魔力を暴走させないよう一時封印させ、それを解き、扱いを覚えさせるまでがいわゆる『義務教育』にあたり、そこから発展した専門的技術を修めさせるのが『魔法学園』の学び舎たる役割、となっているらしい。

 属性とは魔法が発動する際に具体的に取る姿……たとえば炎であったり水であったりそういったモノ。

 そして当たり前かもしれないけど、個人によって自分の発動しやすい魔法は違ってくる。

 その得意分野を自分の『属性』と定めるのが常だ。

 『色』は象徴ね。『炎』なら『赤』、『水』なら『青』。

 単純な色の方が魔力が強くて豊富に使える。

 逆に『撫子(ローズピンク)』『薄荷色(ミントグリーン)』『芥子色(マスタードカラー)』などの薄かったり混ざったりしている色だと、複数属性に適性があるが、魔力の強さ自体はさほど強くないという事になるわけ。

 訓練次第で様々な属性に目覚める事もあるけれど、ここに限らず学園という場では、おおむね1つの属性を選びそこを伸ばす方針がとられているそう。

 その方が大きく力が伸びるから、って事みたい。

 きっとこの方針に決まるまで紆余曲折あったんでしょうけど、それは今の私たちには関係のない事だわ。

 で、オリエンテーションの後にはその属性検査があるんだけど……。

 その前に学科ごとのオリエンテーションだったわね。

 ふう、席に座っているだけというのも辛いわ。

 

 さすがに学内ではジンを消している。

 実際に授業が始まればその限りではないだろうけど、今は他の学科とも共通した行事の真っ最中だし。

 同じ新入生でも、魔法学科や薬学錬金科などの人の中には召喚魔獣を見た事が無い人だっていると思うし、そしたらびっくりしちゃうでしょう?

 人の流れに乗って召喚学科棟へ向かう。

 何人かの女子生徒から声をかけられたけれど、友好を深める前に割り当ての講義室へ辿り着いてしまった。


 召喚学科の新入生全員が集まるだけあって、大講義室は人がぎっしり詰め込まれている。

 ただ席は既に割り当てられており、私は自分のネームプレートを探すだけでよかった。

 大まかな位置がわかるのは、プレートに導きの魔法がかけられているかららのようね。

 無駄なんだか最先端なんだか。

 全員が無事着席出来た頃を見計らって、学科主任の先生が壇上に上がった。

「えー、まずは皆さまご入学おめでとうございます。当召喚学科では、これから1年をかけ、皆さまに召喚魔法とはどんなものか、召喚できる魔物との付き合い方、他の魔法との複合的扱いなど、様々な事を知って頂く為―――」

 ……概要はいいんだけど……すでに召喚済みで、やっぱりすでに何年も付き合いのある私みたいなのはどうすればいいのかしら。

 暇になりそうねえ……と、あくび交じりに先生の話を聞き流していたけれど、先生が軽く召喚魔法の実際の手順について説明に移り始めた時だった。

 私の後ろから突然大きな声がしたのは。

「先生!オレ、オレ、もうすでに召喚できるんだけど!見せていいか!?なあ、見せていいかってばよ!!」

 あ、例の黄金、今度は後ろにいた。

 3段ほど斜め後ろの席で、立ち上がってはりきっ(ハッスルし)ている少年。

 ビッグ5の1人、召喚学科担当『金属属性』『黄金』の『ラビ』君。

 うん……?嫌な予感しかしないんだけど……?

 先生の許可を待つまでもないと言わんばかりに、たたたっと壇上に上がって魔法発動の媒介……杖をふるうと、彼の足もとに巨大な魔法人が金色に輝き―――って、ちょっと何召喚するつもりなの!?ここで召喚するには大きすぎると思うんだけど!?

 がらがらがらがらがらら……っ!!

「きゃあっ!?」

「うわあああっ」

 前方の席から悲鳴が聞こえ、光が収まったその後には、ぶっ壊れた教壇と、人の背丈の3倍近くありそうな石でできた巨大な人形……ゴーレムがマッスルなポージングで立っていた。

 アンタ筋肉無いでしょうに。

「どうだ!これがオレ様の相棒、ゴーレムのゴンザレスだ!!」

 …………しん

 講義室 は 静まり返った!

 ……じゃなくて。

 あー、やらかしたわね、これ。


 ゲームの『シナリオ』だと、これがきっかけで周囲からドン引きされた揚句に孤立化……って事になる。

 どうにかして注目を集めようとしても、そのたびにやりすぎて空回り、の悪循環に。

 唯一まともに?相手をしてくれるビッグ5と、あきらめないそしてくじけないヒロインに依存していく……っていう展開だった筈。

 最後の方では、ヒロインに支えられながらも何とか空気を読むすべを身につけつつ、自慢のゴーレムでその名を世界にとどろかせる……とかそんな話だったような。

 というか、序盤のヒロインの行動もセリフも結構アレだった印象があるから、2人で一緒に成長ものなのかも?このルート。

 ヒロインに関してはまあ、その内シナリオに引き込まれていけば気にならなくなるんだけど。

 ……って、そういう風だとなんだか誤魔化されている感が……気のせいよね?


 まあ、やっちゃった事は仕方がない……というか、この状態からの修正なんてぶっちゃけ無理。

 過去や結果は変えられないのよ、残念な事に。

 これはゲームではないもの、ある意味当然ね。

 まあ、これから魔法を学ぶぞ!って段階で、今までまともに魔法に触れた事の無いような人がこれを見ちゃったら、一歩引くのも分からなくはない。

 私が平気なのはホラ『塔』があるからで……(震え声)

 だからといって、今更彼に対してどうこう出来る事も無いんだとは思うけど……。

 でも、それでも……。

「こうなるって分かってるんなら『最小化』の魔法くらい組み込んでおけばいいのに……」

 結果がどうなるのか想像できないからこそ、彼のルートがああなんだろうけど。

 それとも、最初からこうして自分の力を見せつける為に、あえていじらなかったのかしら?その辺。

「今の、誰だっ!?」

 えっ?

 口の中で小さくつぶやいただけなのに気付いたの!?うっそ悪魔耳!

 あ、周囲が引いた。




最後に主人公が言った『悪魔耳』とは、こちらの世界特有の言い回しで、要するに地獄耳、という意味です。

でびるいやー。




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