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魔法の森学園乙女ゲーム狂騒譚  作者: 深月 涼
学園入学から前期まで~ゲームの始まり~
19/47

異常事態

「分かった!言いたい事は分かったから!」

 召喚学科棟から少し離れた中庭までラビに呼び出された私は、案の定ヴィクトールと引き合わされる事となった。

 奴の表情で察したわよ……。

「では……っ!」

「……だからヤだったのに……」

 喜色を浮かべるヴィクトールには聞こえないよう、そっと息を吐く。

 彼の訪問理由は、案の定先の件の謝罪についてで。

 立て板に水、どころか怒涛の滝のようにまくし立てる説明と謝罪を繰り返す彼を、ようやっと止める事ができて少しだけほっとする。

 正直にいえば、これ以上関わり合いになりたくない。

 好きとか嫌いとかそれ以前に、顔を見たらあの件思い出して気分悪くなるのが嫌。

 それに、怒っているのも案外疲れるものだもの。

 慣れない怒りを持続させるのに気力と体力費やすくらいなら、その分趣味と論文に費やしたい。

 少しは反省してもらいたいし、すぐに許すのは何かちょっと違うと思ったから、こっちから先に距離を置いたんだけど……。

 ラビも不安そうにこちらを見てるし、そうなったら形だけでも認めるしかないじゃない?

 ……あいつもねー、もう少し怒ってもいいと思うんだけど……まあ男の子同士だし、何か落とし前つけるような事があったんでしょう、きっと。

 友達とはいえ他人の事に口出しして余計こじらせるのもあれだから、今は何も言わないでおくわ。


「とりあえず、謝罪は受け入れます。ただ、一時とはいえ不快な気分になったのは事実だし、私としては、ひとつこちらの要求のんでくれればそれでいいって事にしたいわ。こっちもいちいち蒸し返したりしたくないの」

「要求?」

「金輪際一切近寄らないで。忘れたとは言わせないわよ」

 厳しい言い方をすれば、2人の顔色がさっと変わった。

「だからっ、あれはっ!」

「覚えているし、本心ではあったのよね?例えその根底に魔法の残滓があったとしても」

「……そう、だな」

 ラビの言葉をさえぎって指摘すれば、相手は苦い顔をして黙りこむ。

 いじめたい訳ではないんだけど……ああもう、どうしてこっちが罪悪感抱かなきゃいけなくなるのよ!

 自業自得でしょ、とか本音言えないじゃないの、この雰囲気だと!

 ……まあ、この辺が落とし所かしらね……。


「……正直ね、あそこまで言われて素直に許せるほど人間できてないの。ラビの友達だと思うから今もこうして話しているけれど。挨拶くらいするのはかまわないけれど、謝られたからって今すぐ仲良くしようとか、心情として正直無理」

「……」

「……どうしても、ダメかー?」

「ラビのお願いでも、これ以上はちょっと。大体そこまでする義理ないでしょうが。あ、でも、何か面白い事があったら一口かませて欲しいかしら。って、どうせそれもラビ経由で情報入るんだわ」

 少しは気が楽になるかと思って言ったリップサービス気味の『それくらいなら』的な本音だったけど、考えてみれば結果的に一緒か、とひとりごちる。

 ラビの口の軽さは、たまにどうにかならないかと思わなくもないわ。


 そんな半分くらいどうでもいい話で場を和ませようとした私を、ヴィクトールは真っ直ぐな目で見ながら答えを返す。

「……そうだな、何かあったらラビに伝えよう」

 ……真面目っぽくて素直で大人しいヴィクトールって、何か不気味かも……。

 何だか変な気分だわ。

 ゲームの頃の彼は、確かにこんな感じだったと思うのに……。

 ……嫌ねー、毒されたかしら?


「あれ?ラビとヴィッキー?」

「あっ、ヴィー!もう出てきちゃったの!?……あ、あのっ、お、お久しぶり、ですっ!!ラビも!」

 考え込みかけた時、後ろからかけられた声に振り向く。

 そこには、シャリラン殿下とグーリンディ君がそろって立っていた。

 ……っていうか、何。彼はどこかに収容でもされていたの。

 その言い方だとまるで、ムショ帰りみたいだわ。


 見ればヴィクトールは、はっきりと顔をしかめている。

 どういうこと?

「沙汰が出るまで自主的に謹慎するって言うから、ボクすっごく心配してたんだよっ!」

「……そうか。すまなかったな」

「沙汰?」

 学生同士のトラブルに、学園が何か首ツッコんだって事かしら。……そんなのって、あるの?

 首をかしげた私に、シャリラン殿下が苦笑する。

「ヴィクトールは、この一件を陛下に奏上したんだよ」

 えっ!?


 あれから、改めて殿下方には頭を下げられた。「まき込んでしまったようで申し訳ない」ってね。

 『本来なら、王家に連なる方々はむやみやたらに頭を下げられないって聞いたことあるんですけど』って言ったら……学生だから見逃して欲しい、ですって。

 多分、必要以上に気にしないで欲しいって、そういう事も含めて軽い口調で言ってくれたんだろうって、そう思う事にした。

 ただ、私にはそれでいいとしても、当人はさすがにそれだけという訳にいかないのかもしれないわね。

「元々彼が私たちの護衛だという立場は、彼自ら進言し、陛下が個人的に了承しただけのものであったから、今回の事については『彼の勝手な自己判断によるもの』という判断で訓告処分になるはずだったんだけど、肝心の当人がそれでは納得いかないと言いだしてね」

 え。

 うわ、これ、真面目にもほどがあるんじゃないの?


「罰といえるほどの罰を与えられていないんだ、これくらいは当然だろう?」

「もしかして、また引きこもる気じゃ……」

「リド、別に好き好んで引っこんでいるような言い方は止めてくれ。……間もなく長期休暇に入る。王宮に戻り陛下へと面会を申し込むつもりだ」

「一応理由があった訳だしさー、反省文くらいで済めばいいけどな」

「いや、最悪はこのまま退学、警護の任からも外されることになるだろう。仕官の道もどうなるか」

「ええっ!?そんな!」

 グーリンディ君が悲鳴を上げる。

 言った当の本人は、表情は変わらないながら、ずいぶん悲観的みたいだけど……。


「リグレッドさんも、お願いしますよ!」

「お願ったって……」

「もしかして、このまま離れ離れになっちゃうかもしれないんですよ!?」

「離れ離れかあ。それは嫌だなあ」

「そうはいってもまあ、向こうが判断する事ではある訳だし、最終的に本人が呑んだ事ならそれはそれで……」

 実際そこら辺、私みたいな半分部外者に口出しする権利があるとは思えないし、ねえ。

 と、そこへ、シャリラン殿下が口をはさんで来た。

「可能性は、ゼロじゃないだろうね」

「殿下まで!」

 グーリンディ君の非難を軽く流し、殿下はヴィクトールの方を向く。

「実はさ、今君のサザンバークロイツへの留学案件が上がってきてるんだけど……このまま進めちゃってもいいよね?」

「留学、ですか?」

 

「それは……」

 唐突な提案に、その場にいた誰もが戸惑った。

 私も含めて、だけど。

「私が提案して、アルフレアが承諾した。現在は、君のお父上と陛下に話を持って行っている最中だ。答えが出次第、君には私の母国に飛んでもらうことになる」

 ……言い方は悪いけど、これって島流しって事?


「……それを、殿下方がお望みならば……」

「うん。望んでいる」

 はっきり肯定され、ヴィクが目に見えてしょげる。

 そこで少しだけ、シャリラン殿下の目が優しくなった。

「誤解しないで欲しいんだけど、みんな君に、こんなところで潰れて欲しくないからこんな提案をしたんだよ」

「え?」

「ここには、君にとってのしがらみが多すぎる。私達や、守るべき国、最初に『こうあるべし』と教え込んだご両親方。それに今回の事への周囲の目。……君にはね、それを一度すべて取っ払って、たった1人の男『ヴィクトール』として力を試してきて欲しい。そして遠くない先、真に守れる騎士となって帰ってきて、今度こそ正式な形で私たちを守って欲しいと考えているんだよ」


 一見甘い沙汰に聞こえるけれども……本心から言っているんだろうとも思うんだけど、いかんせん本人がまず甘くない人なのはさっきから危険探知が囁いちゃってる事からもわかる。

 というかこれって、名目こそ他国の留学で苦行……いやいや修行して来いって事だけど、シャリラン殿下からすれば『ツーバつーけちゃーった(はあと)』って事よね……?

 …………ヴィクトールこれ、逃げた方がいいんじゃないかなあ。

 さっきまで怒ってたの帳消しにするから、と同情の目で見ていたら似たような目でこっちに視線寄こされて黙らされました。

 沈黙は金、という事で。

 さすがにこれは、私がどうにかできるものでもないわ。


「そか。留学かー……。せっかく久しぶりの全員集合だったのにな」

「すまないね、ラビ。けれど起こってしまった事が変えられないのなら、できるだけいい方向にもっていければいいと思って」

 それって、シャリラン殿下にとってのいい方向……アッ、スミマセンナンデモナイ(デス)

「もう全部決まっちゃった事ならさ、寂しいけど、でも、きっともっと強くなって帰ってくるって信じるよ。剣の腕だけじゃなくってね。だから……向こうへ行っても頑張って!ボク、ずっと応援してるから!もちろん、ボクだって頑張るけど!」

「ラビ……リド……すまん」

「いいって!謝んなよ。こっちこそ、何も知ろうとしないで責めてばかりで……終わってからも何も出来なくて、ごめんな」

「そうだよ……本当に今回、なにも出来なくて……もっとはっきり、ボクが言えていたら。そんな自分が嫌だったから、変わろうって思っていたのに……」

「いや、そもそもは俺が……。いくら魔法の影響があったとはいえ、全てをそのせいにだけしていてはいけないのだろう。だが、今となっては本当に不思議だ。なぜあれほどまでに嫌悪していたのだろうな、俺は」

「まあまあ、自分を責めるのもそれくらいにして。それさえ分かっていれば十分さ。自分が悪いと知っているのなら、後は直していけばいい、そうだろう?」

 ええと……話し合いだか語り合いだか分からないけど、とりあえず幼馴染どうしの友情を確かめあえたのなら、よかったんじゃない?あと私、もう行っていいかしら?

 というか、そろそろ休み時間も終わりだけどいいの?

 グーリンディ君や殿下は、何か用があったから、こっちに来たんじゃなかったのかしら?


「あの、そろそろ休み時間も終わる頃と思うのですが、皆様は大丈夫ですか?」

 一応シャリラン殿下に配慮した感じでそう言ってみると、殿下は「あまり堅苦しくなくていいよ」と言った後に「そうか、もうそんな時間か」とつぶやいた。

「あっ!いけない!ボク図書館に本を返しに行くんだった!」

 グーリンディ君が、はっとしたように叫ぶ。

「急げ急げ」「ここはいいからもう行け」

 ラビとヴィクトールがグーリンディ君をせかし、場は解散の雰囲気になった。

 私はふと、隣にいた殿下に話しかける。

「そういえば殿下も、何か御用があったんじゃないですか?」

 殿下の場合は特にだけど、こんな学科を繋ぐ回廊のはざまにある中庭なんて場所、何か用がなければ通らないだろう。

 話しかけてきたのは偶然見かけたからなのかな、と思っていたけど。

 もしかして、違うのかしら?


「ああ……そうだね」

 返って来たのは、歯切れの悪い返事。

 会った中でも珍しい苦い顔に何かあったのかなと思った瞬間、殿下は突然厳しい顔つきになって大声で叫んだ。

「全員、伏せろ!」

 伏せても意味がなかった。

 急に膨れ上がる真っ赤な警告のイメージ。

 まさか、こんな―――

 がらっ、がらがら……っ!

 足元が崩れ、私たちは皆一様に落ちていく。

 ありえない、と思ったのはすべてが終わってから。

 突然崩落した地面の底に、その場にいた全員がなす術もないまま吸い込まれていった後の話――――――



「……」

 ふと、目が覚めた。

 覚めている、気がする。

 ……周囲は真っ暗で―――……「気がついたか」びくっ!?

 ずさっ、と飛び退ろうとして「っ!?」手に触れた感触が、固くてざらざらして冷たいものなのにまた驚く。

 え、ここどこ。

 ……手に触れているのは、固い、地面?

「……酷い嫌われようだな」

 自嘲してるとこ悪いけど、真っ暗の中で触れるほど近くに他人がいたら誰だってビビると思うわ!

「気がついたのかい?」

「診たところ、意識以外は大丈夫だと思ったんですけど……痛いとこありますか?」

「なあっ、大丈夫なら返事しろってば!」

 心配そうに声をかけて覗き込むグーリンディ君の顔がなんとなくわかるのは、周囲からほの明るい光に照らされているせい。

 これは、魔法植物……?

 けれどさほど強い光を放つわけではないみたいで、人影はなんとなくわかるものの、その表情まではあまりよく見えない。

 声の主はシャリラン殿下に……いつもと違う、ちょっと不安そうなラビ?


「……えっと、大丈夫、よ?……特に痛いところとかは……無いわね。それであの、ここは一体……」

「何があったかは覚えてる?」

「突然……地面が……」

 そうだ、地面が消えたんだ。

 『この』『学園』で、そんな事があり得る?……いや、無くはないだろうけど、それはだって、何かの実験とかの場合で。

 ましてやあの場所は、棟と棟の間の中庭だった。

 ここがその落ちた先なら、まさか、学園の地下に空洞があったって事……?

 でもそんな話、知らないわよ?

 そもそも、最初に学園を建てるって決まった時点で地質調査くらいしてるのが当たり前のはずで……。

 なら、もしかして他者による攻撃?

 それこそ無いわ。

 だって学園の防衛機能(セキュリティ)で、関係者以外は立ち入れないようになっているんだし。

 ……じゃあ、中にいる『誰か』が―――……?


「はあ、まいったな……まさか、こんな事になるなんてね」

 考え込み始めてしまった私の耳に、普段とはどこか違うシャリラン殿下の声が飛び込んできた。

 妙に投げやりで、荒々しささえ感じとれたそれに私は顔を上げるけれど、やっぱり周囲が真っ暗なせいで今どんな顔をしているのか分からない。

「その、すまない。――――――どうやら貴女を“また”巻き込んでしまったようでね。……最初は良い手だと思ったのだが、存外上手く行かないものだな」

 ……何が、あったんですか、殿下。

 自嘲なのか苦笑なのか、らしくない彼にびっくりしすぎて声も出なかった。


「あー、その」

 ゲームでの印象もあるせいか、本当に珍しいと思ってしまうほど言いにくそうに話し始めた殿下に、この場にいるはずの誰もが聞く体勢になったのが気配で分かる。

「本来なら、危害を加えられる予定だったのは、私1人のはずだったんだよ」

 はい?

 今何ておっしゃいましたか?

「そのような事……っ、まさか!?」

「そうだ、ヴィッキー。君をしばらく遠ざけていたのは、君自身の事について当人には知らせずにアルフレアと話し合う必要があった事と……もう1つはこうして……私自身の『敵』に『隙』を見せる事だったんだよ」

 あ、そういう事になっていたの……じゃなくて、なんだってそんな事を……?

「まさか殿下を狙う『政敵』が、ここまで……?」

「ああ。私自身も半信半疑ではあったが……都合がいいと考える者がいたのだろうな」

 思い当たる事があったらしいグーリンディ君の言葉に、シャリラン殿下が頷く気配がした。

 って、え、政敵?敵って言った?今。

 え、だって、え?

 命を狙われるような展開もなければ、そんな人物も出てこなかったわよ?『ゲーム』では。

 ……また、相違点……?

「それこそ、俺に言って下されば!」

「いや、それでは恐らく一時しのぎにしかならなかっただろう。そもそも外部からの侵入はまず不可能だし、この学園内においては実習以外に人に危害を加えるような魔法の行使はできないよう設定されている。……君たちも知る通りに。だから、例えば学園内に内通者がいたとしても、このままでは私は祖国に帰るまで何も手出しできない事になる。……実に不愉快な話じゃないか」

 なあ?と問うその声がもう恐ろしい!

「だからといって、殿下ご自身がなにも囮にならずとも……」

「いや、早期解決で一網打尽。最小限の手まで最大限の効果を得る。オレはむしろ殿下らしいと思ったけど?」

 ラビが難しい言葉使った!?

 ……じゃなくって。……というか、何気にラビの殿下に対する評価がヒドイ。

 君の命は明日までもつだろうか。お姉さんちょっと心配だぞ?

 ……で、その為なら何でもするって事なのかしら?私たちを巻き込んでまで?

 いいえ、だったらさっき、謝ったりなんかしないはずだわ。

 「思う通りに行かない」って言っていたという事は、これは殿下にとっても想定外の出来事だったんじゃないのかしら。

「まあ、とにかくあぶりだそうと思ってね。現行犯なら言い逃れできないだろう?学園の上の方に掛け合って好きにさせてもらえるよう頼んだら、結構あっさり許可が出たよ」

 上って!上って!たぶんそれ、塔の上とも繋がっているのよね!?

 お父さんは言葉を濁していたけれど、おそらくは『時計台』と、そしてその『主』……。

 そこがまた、何かしたって言うの……?

「たまたま今日は気分の悪くなるような事があって、それでちょうどいいかと思ったんだが……。ああそうそう、実は試験すっぽかしてきてね」

「「「「ええーっ!?」」」」

 

 殿下のとんでもない自白にその場にいた全員が絶叫したせいで、ぐわんぐわんと音が反響する。

 ……けど、あら?ここの空洞、意外に広そうね。

 結構遠くの方まで声が響いているみたいだけど。

 そういえば、さっきからずっとしゃべっているけど、ちっとも息苦しくないわね。

 話から察するに、私が意識を取り戻す前から殿下方はある程度この状況について話をしていたんでしょうし、それを考えるとどこかに繋がっているとみていいのかしら?

「ちょっと気分が悪くなったから医務室に行くといってね。向こうはしがみつく勢いでついて来ようとしたのを、アルやセイラ達にお願いしてさ」

 そういえば試験って……試験……学科試験……イベント!?

 向こうって、アルフレア殿下やセイラじゃないとすると、まさかクルエラ嬢!?

 彼女、確かあの後また実家に帰ったらしいけど……ちゃんと試験は受けに来ていたのね。

 で、そんなクルエラ嬢に(状況的に無理やりっぽく?)イベント起こされようとして、それが不愉快でボイコット、って事……!?

 主語が出てないから断定はできないけど、けど!

 そんなのってアリなの!?

 ちょっ、こんな展開知らない、というか無いから!絶対無いわよ!


「で、ついでだからと思って1人でフラフラと歩いてたら、向こうからリドが来てね。少しだけ話して別れるつもりが君たちとも出会って……。迂闊に話しこんでしまった私にも責はあるだろうが、まさかこの国の人間にまで手を出してもいいなどと、相手がそんな愚かな考えの持ち主だとは思ってもみなかったな……」

 「わたしも考えが足りないな」なんて自嘲するようなセリフだけど、ああもう、これ絶対すっごく怒ってるーーーーーー!!

 それにしても、試験すっぽかしたシャリラン殿下が『敵』から危害加えられそうになってて、最終的にみんなまとめて地面の下に落とされて閉じ込められるとか、いったい全体どうなっちゃってるっていうのよ!?

 いくらゲームと現実は違うとはいえ、私からしてみれば理不尽極まりないんだけど!

「だから―――巻き込んでしまって済まない。特に君は女の子なのだし、謝るだけで済む問題でもないのだろうが……」

 ……今、何かティンときたわ。

 暗くて(意外に広そうだけどあくまで)閉鎖された空間の中で、この人数に同年代の男女というこの状況。

 無事出られたとしても、これがもし誰かに知られたら……。

 

 そうよ、これバレたらお父さん激おこ案件じゃないかしら……もしかして。

 ……ど、どうしよう~……。



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