CHAPTER.4
「ーー以上で私からの挨拶を終わりにさせていただきます。」
式は進み、一番退屈な学園長の祝辞が終わった。そろそろ尻が痛くなってきたぞ。
「ーー生徒会長、祝辞」
司会のその一言で一気に会場の空気が張り詰めた。その代わりように戸惑い、隣のマリアに話しかける。
「…なあ、急に空気が変わらなかったか?」
「そりゃ、あの生徒会長が出てくるんだから当然でしょ…まさかあんた、≪ゼウス≫のことを知らないの…?」
「…お恥ずかしながら。」
マリアが呆れた目で見つめてくる。そのまま小声で説明をしてくれる。
「『称号』は知ってるわよね?」
「ああ。確か成績優良者に学園長から送られる、神話の神やら悪魔にちなんだ、いわゆる勲章みたいなもんだったか。」
「成績優良者だけじゃなくて魔法闘技大会で優勝するとか、何らかの実績を残すということもあるけど、まあそんなところよ。」
ここまで言えば分かるでしょう?
と言わんばかりの顔でこちらを上目遣いに見てくる。その可愛らしさに少しドキッとする。
「…≪ゼウス≫ってのも称号の一つなのか。」
「そういうことよ。」
「でも、それだけでどうしてこんなにざわつくんだ?称号を持っているのはそんな極端に少ないわけでもないだろ?」
「確かに、他にも称号がある人はいるわ。でも、あの≪ゼウス≫は…レベルが段違いよ。今の日本の魔法高校でトップクラスの実力者と言われているわ。」
なるほど、とそこまで言われて納得する。それほどの人物となれば新入生がざわつくのも無理はないだろう。
それに、称号には単なる校内の勲章というだけでなく世間的にも大きな意味を持つ。
軍により設立されたこの学園は軍とのコネクションがとても強い。進路に軍を志望する生徒も多く、称号があるのと無いのでは全く待遇が違ったりするらしい。
そんな会話をしている間に、噂の生徒会長が登壇する。その容貌はとても煌びやかで、≪ゼウス≫という称号に負けず美しい外見をしていた。
「ーーなお、私の運営する生徒会は現在私を含め4人という少人数で活動しています。新入生の皆さんの中に生徒会で活動したいと思う方は是非生徒会室までお越しください。」
余計なことを考えている間に生徒会長の挨拶は終わっていた。その後学園長から閉会の言葉があり、各ホームルームへ移動となった。
「じゃあ、またなアーシュダットさん。」
「マリアでいいわ。違和感があるから。…星夜今度会ったら覚えておきなさいよ!」
「当たり前だ。マリアみたいな美人を忘れるわけがないだろう。」
「ふええっ!?へ、変なこというんじゃないわよ!!!」
マリアはまたしても顔から火を吹き物凄い速さで走り去っていった。
「なんか変なこと言ったか…?」
マリアの念押しに答えただけだったのだが。どういうことだろう。
「まあ、いいか。」
そのうちマリアとはまた会えるだろう。そう考え俺は自分のホームルームに向かうことにした。
「よお、マリア…また会ったな…」
「なんでっ…こんな奴とっ…!!」
ホームルームの隣の席は、マリア・アーシュダットその人だった。