CHAPTER.3
「なあ、悪かったって…」
「…別に怒ってないわよ。走ってた私が悪いんだし…。」
そういう少女の顔は真っ赤に染まっていた。そういう俺の顔ももみじ型に腫れているが。
「えっと、君は」
「マリア・アーシュダットよ」
こちらが聞く前に自分から名乗ってくれる。実は優しい子なのかもしれない。
「…ちょっと」
「ん?」
マリアが半眼でこちらを睨んでいる。何か失礼なことをしただろうか。
「まだあんたの名前を聞いていないけど?」
「あ、すまん。榊星夜だ。よろしく頼む。」
「ふん…」
名乗り遅れたことを詫びつつ挨拶に合わせ右手を差し出す。
差し出した手を一瞥し、マリアは同じ様に右手を差し出してきた。よかった。あんなことがあった後だから無視されても仕方がないと思っていたんだがー
「って、いでででででで!!!」
「さっきのお返しよ!」
「なんつー握力だ…」
まあ、これくらいは仕方ないだろう。それにしても、この握力は…
「ひょっとして、片手剣を使うタイプか?」
「そうよ。なんでそんなことを?」
「握力が強かったからな。両手で扱う剣やその他の武器で、ここまでの握力は必要ないだろ。」
「…まあ、女子で斧を使う人なんてそうそういないでしょうしね。」
「にしても、凄いな。ここまでの握力、剣士として尊敬するよ。」
「べっ、別に褒めて欲しかった訳じゃ…あんたも剣を使うの?」
まるで照れ隠しのように話題を逸らすマリア。本心を言っただけで、お世辞のつもりではないのだが。
「ああ、そうだよ。ところでー」
「しっ。始まるわよ。」
マリアのお陰で悪目立ちをせずに済む。よかった。初日から無駄に目立ちたくはないからな。
「それでは、始めさせて頂きますまずは、開式の言葉ー」