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嗤える

 それにしても、彼らは、なぜ逃げるのか。いやいや、私には到底理解ができない。こうして、回収に来ているというのに。もしや、彼らは私たちと宇宙戦争でもしたいとでも思っているのか。お願いだ、王子を返してくれ。跡継ぎ問題で忙しい、我が国の事情も察して欲しいものだ。


 それにしても、この体はどうにも動きにくい。筋肉はとてもあると感じるのだが、いかんせんバランスが悪い。きっと、見た目だけなのだろう。このような体で、なにをしようとこの人間は考えていたのだ。もしや、この国の人間は、このようなスタイルが今流行りで、これの姿が人受けするのかもしれない。これは、想定外だった。国に帰ったら報告しよう。


 ああ、そういえば、事前情報によれば私が寄生する人間は、このような人物ではなかったしてきた。たしか、もう少し丸めの太った男だったはずだ。そう、私が先ほど蹴り飛ばしたような奴だ。ただ、私は指示された通りのポイントに現れただけだったのだが。これは、後で叱られるかもしれない。言い訳をたっぷり考えておこう。お土産を持って帰るのもいいかもしれない。

 やはり、走るのか。しかし、あまり早くないな。まだ、目の前に居る気がする。私も歩いて追ってはいるのだが、視界に十分に入っている。

 おや、何やら建物の中に入っていたぞ。なんだか、他の建物に比べると大分古そうな感じがする。色も灰色で黒ずんでいる。さっきの場所からあまり離れていない。いよいよ、私と話す気になってくれたのかもしれない。私は自然と笑みがこぼれてきた。

「おぉ!ここで対話といくのですね!良いでしょう!」

 私は、大きな声で聞こえるようにいった。悪意などない。早く、王子を返してくれ。

 私は、腰に付けているピンク色のモノのサイドを両手で引っぱり、そして放すとパチンと大きな音を鳴らした。皮膚とそのモノが激しくぶつかり合い、とても心地のよい音を奏でた。私は、それがなんだか妙に気に入ってしまい、連続して、鳴らしまくったのだった。パチンパチンと。またしても、笑みがこぼれた。


 しかし、建物に入っても彼らの姿は見当たらなかった。入り口には木で出来たモノが床に張り巡らされており、壁にはいくつもの収納スペースがあった。その中に、人間が履いていたものがいくつも入っており、人間の文化を私は少し知った気がした。

 そのため、その履物を脱ごうとしたのだが、私は履いていなかった。うむ。あの人間、もしかしたら、私たちに近い人間だったのかもしれない。エイリアン。

 パチンパチンと鳴らしながら、その建物の中を歩いた。沢山の絵と、沢山の文字が飾ってあった。人間を描いたものなのだろうか。しかし、私にはそれは人間と言うよりも私たちに近いような生き物に見えた。やはり、人間の中にも私たちに近い生き物がいるのかもしれない。実に興味深い。

 目の前に、長い通路が出現した。そして、壁には「廊下は走らないこと」と書かれている。なるほど、廊下というのか。そして、走るなということは歩けということ。しかし、私は私の国ではルールを守らないことで有名であり、どうしても反対のことをしたくなってしまう天の邪鬼な奴である。わたしは、独特なスタートフォームをし、脳内にスタートダッシュの合図をイメージさせ、「ゴウ!」と大声で叫び、スタートを切った。

 走り終えると、途端に息が上がった。はぁはぁと、呼吸が荒くなっていた。やはり、この体は走るには不釣り合いらしい。

 私は、両手を両膝にあて、肩で息をしていた。しかし、その時だった。私の首筋に何か金属のようなものがものすごい勢いでぶつかり、ゴツンと鈍い音がした。そして、続けて頭に当たり、私は床に頭を叩き付けられた。そして、気を失ったのだった。




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