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墜ちる

「あのさ、こないだの件なんだけど……」

 僕は、口を開いてしゃべろうとした瞬間であった。

 ものすごい音と衝撃が僕の目の前で同時に発生した。そして、辺り一面は、砂煙で真っ白となり、視界は奪われてしまった。

「だ、大丈夫?」

 僕は、ノリコの肩に手を当てながら聞いた。

「大丈夫」

 そういって、ノリコは、僕が肩に置いた手をゆっくりと振りほどいた。


「おいおい!なにが起こってるんだよ!!」

 公園の入り口の方で騒いでいる奴がいた。あの喉に餅でも詰まっているような声を僕はどこかで聞いたことがあった。ああ、ブンタだ。

「し、知らないよ!公園に隕石が落ちてきたみたいだ。さっき、公園に大きい岩のようなものが降ってくるのを見たから」

「んなこと、どうでもいいんだよ。あいつらは無事なんだろうな」

「わ、わかるわけないだろ!」

 どうやら、ホネもいるらしい。しかし、砂煙が引かないせいか、まだはっきりとは見えていなかった。



「どうして、彼らがここに」

「私が呼んだ」

「どうして?」

「その必要があったの。アメーバのことについてね」



 砂煙がようやく晴れた。そして、僕の目の間に大きな岩があることが確認することができた。到底人が何人いようとも持ち上がらなそうな巨大な岩だ。たとえが難しい。やはり、隕石がここに落ちたということらしい。そして、落ちた場所が、先ほどまでマッチョメンが体を余すこと無く焼いていたベンチの真上であった。彼はどうなったのだろうか。無惨なベンチの残骸が岩の周りに確認できるのだが……。

「見て」

 ノリコはそういって、岩の方を指差した。いや、言われる前から僕は岩の方を注視していたのだが。

「何かいる」

 僕は、改めて岩を良く見てみた。たしかに、岩の下に何か居る。生物、とは言い難い。なにやら液体のようなものが動いている。そして、それが『あの』アメーバ御一行様であることに気がつくのに時間はかからなかった。やはり来たのだ。この地球に。わざわざ遠い宇宙から無骨な宇宙船に乗って派手な感じに着陸をして。


 液体が岩のしたからヌルヌルとこちらに向かって、溢れるようにして向かってきた。しかし、敵意のようなものは自然と感じることはなかった。しかし、驚くべきことにその液体は次第に集まり始め、人の形へと変わっていった。

「アイツは……」

 僕は、驚いた。なぜなら、その変化した人の形に見覚えがあったからだ。そう、何を隠そう今しがた見ていた。あの、筋肉筋肉筋肉。三度の飯よりプロテインと言わんばかりのマッチョメンだ。ブーメランパンツの色が、ピンク色に変わっているのは、アメーバの趣味なのだろうか。そして、驚きはさらにつづいた。

「君かね。私たちの国の王子を喰らった輩というのは」

 なんと、しゃべったのだ。

「失礼。そんなことよりも、自己紹介か。私は、火星からやってきた、ドンだ。よろしく」

 そういって、彼は握手を求めようとこちらに歩いてきた。ブーメラン筋肉がこちらに歩いてきた。なんだか、ドキュ、ドキュ、という人間とは思えないような足音がとても似合いそうな風貌であった。

「近づかないで」

 ノリコはそういった。

「おっと、怖い目をした人間だ。君は、どうしてそんな怖い目をしているんだい」

 ブーメランは、笑いながら問いかけてきた。しかし、その答えを聞く前に、彼は何かを閃いたようだった。

「そうか。わかったぞ。大変すまなかった。私は、この地球の人間ではないからね。初対面の礼儀作法というものを理解していなかった。すまないすまない。私は怖くないぞ」

 そういうと、筋肉ブーメランはおもむろに腰に手をかけ、その派手な蛍光ピンクのブーメランを脱ごうとした。

「ちょ……」とノリコが動揺をしていたが、僕は「やめろ!」大きな声で叫んだ。

「なんだね?」

「おまえ、今なにを……というか、とっと帰れ!地球外生命体なんて、僕は、認めないぞ」

 僕は激しく怒鳴った。何年ぶりかに激高した。

 すると、変態ブーメランは、あごに手を当て、考え始めた。ふむふむと言う感じだ。

「じゃあ、王子を返してくれ。君たちのどちらかだろう。君かね?それとも君かね?」


 すると、空き地の入り口にいたブンタとホネが走ってきて「コイツです!」と、僕を勢いよく指さした。

「ほほう。君かね。あまり、強そうには見えないけどね。うちの王子は油断でもしたのか。ふーん」

 僕は、つばをごくりと飲んだ。

「返してくれる?」

 変態ブーメランは、そう言って手の筋肉を確かめるように、指の一本、一本を丁寧に伸ばし始めた。

「いや、君の中にいるなら取り出さないと」と笑いながら言った。

 ノリコは、僕の手をひっぱりその場から逃げようとした。そして、僕らは走った。

「そうか。怖いのか。怖いよねぇ。じゃあ、実演とかしようかね」

 そういうと、変態はホネの頭をがっしりと右手でつかんだ。ホネは必死に抵抗するがその手から逃れることはできない。そして、筋肉ブーメランは「ちょっと、痛いよ〜」と気色の悪い笑みと共に、ホネの体を左手で貫いた。

「ホネ!!!」

 ブンタは叫んだ。

「ちくしょぉぉぉぉっぉぉおおおおおううう」

 ブンタは、叫びながら筋肉ブーメランに突進していった。が、ブンタの巨体をもってしても、彼の前では子豚同然であった。変態ブーメランは右足でその突進する子豚を蹴り飛ばした。金網の方で、ピクピクと動く物体と化したのだった。


「ねぇ、早くしようよ」

 笑いながら、そしてゆっくりと、その鬼畜は僕らを追ってきたのだった。


 


 


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