出会う
小学生の頃。たぶん、一年生とか二年生とかそれくらいの学年だった気がする。
私は、不思議な体験をした。不思議な体験と言っても、体が宙に浮いたりだとか、体がバラバラになったりだとか、催眠術にかかったりだとか、そんなオカルトではない。
単純に、よくわからない生物が目の前に居て、私はそれを触ったりして遊んだということだ。しかし、今となってはその生物の特徴はあまり覚えていない。液状のような物体だったか、ほ乳類のような生物であったか。ただ、覚えているのはそれがこの日本、いや地球上には存在しないような生物であったということだ。
春休みが終わって、学校に登校して友達にすぐさまこの話をした。でも、友達みんなは何を言っているんだコイツはという顔をしていた。
「おまえ、いよいよ頭がおかしくなったんじゃないかー」
ガキ大将のブンタが私を小馬鹿にしながらいってきた。
「そんなことないよ。見たんだ。それに、触った」
私は、必死に弁解した。
「じゃあ、そいつを明日もってこいよ!」
ガキ大将の腰巾着的存在のホネが言った。
「そ、それは……」
私は、たじろいだ。
「やめなさいよ!」
一人の女の子が、私の前に現れた。ノリコちゃんだ。
「嫌がってるじゃない。どうせ、いじめてたんでしょ」
ノリコちゃんは言った。ノリコちゃんの威圧感に負けたのか、ブンタとホネは「ふん」といって教室から出て行った。
ノリコちゃんは、勝ち気な性格の女の子だった。女の子なのに運動神経は抜群で、他の男の子とも喧嘩を平気でするような女の子だった。でも、時々見せる女の子の仕草がとてもかわいい女の子だった。ちなみに、彼女はクマのぬいぐるみが大好きで、誕生日に大きなクマのぬいぐるみをもらったことを大喜びで私に報告してきたことがあった。
「あ、ありがとう」
私は言った。
「ううん。平気。むしろ、君こそ大丈夫?いじめられなかった」
「大丈夫大丈夫。いつものことだから」
私は、健気に振る舞った。
「そう。それで。なんか、面白そうな話をしてたでしょ」
彼女は、目を輝かせながら私に話しかけてきた。
「な、な、なんのことかな……」
私は、黒板のあたりを見ながら遠い目で話を逸らそうと試みた。
「あら。しらばっくれるつもり?ふーん。今度、いじめられたら、ブンタとホネに君が春休み中に盛大な世界地図をお布団に描いたことを言ってあげても良いんだよ?」
ノリコちゃんの両親と私の両親は仲が良かった。よく、夜遅くまでお酒を飲んでいるところ私は目撃していた。それにしてもノリコちゃんは、しらばっくれるなどという難しい言葉をどこで覚えたのだろうか。お母さんがしゃべっているのだろうか。
「それは、勘弁。わかったよ。教えるよ。」
「さっすがー。男の子って感じだね」
「意味がよくわからないけど、確かに私は男だよ」
「実はね、こないだ学校の裏にある空き地で、変な生物と出会ったんだ」
私は、得意げな顔で彼女に説明した。
「変な生物?どんな?」
彼女の目が輝いていくのが私にはわかった。
「うんとね……」
私は、このとき何を話したか覚えていない。でも、その後、ノリコちゃんと二人で空き地にいってその生物を探しに行ったのは覚えている。また、なんだかんだでブンタとホネもその生物を見た気がする。たしか、私たちの後を彼らが密かに尾行していていたのだ。小学生らしい発想である。
それから
時は流れて、
僕は、大学受験に失敗して
そのまま、浪人生になる形で高校を卒業した。
そして、なんとか浪人時の大学受験に成功し、大学進学を控えた3月
それは、僕の前に現れたのだった。