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プロローグ

 ――ルクディム

遥か太古から存在する辺境の都市。レンガ造りの家や歴史的な建物が時代の波に呑み込まれず今も色あせることなく残る。そしてファーディナンスという一人の女王によってその都市は統治されていた。

しかしその日、普段美しいはずのルクディムは漆黒の闇に覆われ所々から煙が上がっていた。

そしてその頃、ルクディムの王城では兵士達かあわてふためいていた。

「ファーディナンス様! 大変です! 魔属の反王政派からの奇襲です! すぐに避難を」

 そうなのだ。敵による奇襲。ルクディムは突然の襲撃によって騎士団が存在しながらも、為すすべがなくなっていた。

「落ち着きなさい」

 ファーディナンスと呼ばれた女性は、突然部屋に飛込んできた兵士を制し、かたわらに立つ従者に直ちに避難の準備をするよう指示を出す。そう彼女こそ女王ファーディナンスその人である。背は少し高めで大きな、空をたたえる様な青い瞳。すらっとし血色の良いピンク色の頬。顔立ちはもう美人としかいえないものである。髪は漆黒の黒だがそれがとても似合っていた。

 その後ファーディナンスは自らもネグリジェ姿から着替え、普段身に付けている純白の動きやすいドレスを身に付ける。

「さあいきますよ」

 落ち着いた物腰で彼女は話す。だが彼女は落ち着いているように一見見えたが心の中は不安と恐怖でいっぱいだった。

「必ずあの人が助けにきてくれるわ……私の子は特別だって言っていたもの……」

 ファーディナンスは一人悲しそうにつぶやいた。

「さあこちらから避難を」

 彼女は従者と護衛の兵士達に案内されるままに隠し通路を進む。先を急ぐ彼女の腕には赤ん坊が抱かれていた。

そしてやっと通路を抜けると、そこは都市の城壁の外。だが目に入ってきた光景は彼女に絶望をもたらした。

反魔属王政派の軍服を身に付けた人の集団に待ち伏せされていたのだ。

ウエアの種族か。

ファーディナンスはふと思った。

魔属には半分程魔属の血が混ざったウエア族と生粋の魔属の血の者がいる。

生粋の魔属は人間の姿をしていないのがほとんどだ。

まあ人間の姿も出来るのだが……。色々あるのだ。そして敵の兵達は人間の姿をしている。反王派の魔属の軍服を着ている以上ウエア族ということしかない。その時、突如ファーディナンスの背後から叫び声が響いた。倒れていく兵士が二人。そして剣を持った兵士が二人いた。残ったのはファーディナンスと赤ん坊、従者の三人。第一この隠し通路は王族近衛兵しか知らないはずなのだ。それなのに待ち伏せされていた……裏切り者がいたということだ。それに女王の近衛兵に裏切り者がいるという事はかなり前からこの襲撃が計画されていたことを意味している。

「残念だったな。これ以上は逃げられない。まあ私達が用あるのはその赤ん坊だが」

 その時リーダーらしき魔属の男が言った。(あれは反王派の将軍、かなりの使い手らしいけど……)流石のファーディナンスにも焦りの色が浮かんだ。

「この子は誰にも渡しません! 命にかえても守ります。クレアこの子を連れて逃げて……そして静かに暮らして」

「ですが……」

「これは命令よ!」

「おい、この私がそうあっさりと逃がしてやるとでも思ってるのか?」

 二人の会話を聞いていた男はそう冷たく言いはなった。だがファーディナンスもそんなことは承知している。

「何か忘れて無いかしら? 私はこの世界屈指の転移魔法の使い手なのよ?」

 ファーディナンスは不適な笑みを浮かべて言った。

「お前達赤ん坊を早く確保しろ!」

 その事を忘れていたためリーダーらしき男は焦り叫んだ。

この声に男の手下達は一斉に襲いかかる。だが時既に遅しファーディナンスの呪文は完成していた。

「二人を遥か異国の地へ運びたまえ……」

「女王様!」

 クレアという名の従者の叫びにファーディナンスは笑顔で答えた。消えていくクレアと赤ん坊の姿。これで赤ん坊は無事だろう。だがファーディナンスの心は子供の将来を思い苦しかった。

「……女王を確保だ。捕虜として連れていく」

 男は静かにそう言った。内心男はかなり悔しい思いをしていただろう。ファーディナンスはふと思った。

 魔属の者達に捕えられる間ファーディナンスは抵抗はせずただ空を見上げていた。

「結局魔王であるあの人は来なかった……」

 ファーディナンスは一人つぶやく。

 そして何事もなかったかのように空には満天の星が輝いていた。

全くの初心者なのでアドバイスとか頂けたらうれしいかぎりです。よろしくお願いします!

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