表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

1話 転移

この世界が嫌いだった。

必ず帰ってやると心に決めた。

それなのに俺はこの世界で必死に戦っている。

なんで?

きっかけを探すけど思い当たらない。

きっと少しずつそうなったんだ。


いつの間にか帰る場所ができた。

いつの間にか声をかけられる様になった。

いつの間にか楽しむことを覚えた。

いつの間にか……


この世界は厳しい。

失うなんて当たり前。

足がすくんで止まったら、更に失う。

もう何も無いと思ったところから更に突き落とされる。

逃げているうちに、いつの間にか戦えるようになっていた。


そうだ、全ては十年前から。

この世界に来た瞬間からだ。




***




「え?」


周囲には木々。

青い空。

さっきまでオレは公園にいたのに……


「おーい!とーる?かず?」


友人を呼ぶが返事は無い。

しかし妙だ。

なんていうか、本当に変だ。

薄っすらと光る木も、さっきの声に反応したのだろう、目の前にいる四つ目の狼も。


「ガルルルルルルルッ!」

「うぁっ……!?」


威嚇し飛びかかりそうな狼。

中型犬にも驚くようなオレは尻もちをついて慄く。


「来ないで!来ないでください!」

「ガアアッギャフッ」


オレが手を前に伸ばすと指から光線のようなものが走る。

丁度今朝見たニチアサのヒーローみたいだ。


ぼとりと、狼の首が落ちる。

肌を温かい血が染める。

呆然としていると足音がする。

オレがゆっくりとそちらを見ると、髭面の大男がいた――




***




大男はオレを拾って育ててくれた。

言葉も通じない。

薪は割れない。

弓は使えない。

そんな無能に根気よく男は付き合った。

感謝はしてる。

まあ正直今でも無愛想な厳つい顔は怖いけど……


この世界は食べ物は味が薄いし、食感は悪い。

それでも飢える恐ろしさを知ってからは嫌いな野菜も胃に流し込むようになった。

唯一面白そうなのは魔法なのだが……


「おい、庭を手伝え。」

「あ、はい」


オレは慌てて家を飛び出す。

丁度じゃがいもの収穫時期だった。

小屋から取り出した貴重な鉄の農具は、折れた柄を何度も変えて直した恨めしくも可愛い相棒だ。


黙々と2人で収穫する。

この大男は名をギィといって、北のノストという国からやってきたらしい。

そこはオレ達のいるセンドール王国からは北蛮と馬鹿にされている地だとか。


それはノスト人が魔法の不得意な人種であり、センドールが魔法の得意な人種だからなのだとか。

……この世界の魔法は寒い環境だとあまり使えないのだ。

だから冬になるとセンドールでも魔法があまり使えない。

北の大地ともなれば尚の事であり、幼い頃から魔法ではなく体を動かしているノスト人は自然と魔法という文化が乏しいのだとか。


まあ魔法で戦う細身のセンドール人からすれば、筋肉質で武器を持って戦うノスト人はさぞかし野蛮に見えたのだろう。

実際、センドール人の中では筋肉質な農民などは下に見られがちだし……

……まあそんなわけでギィは魔法の勉強などしていないため、オレには教えられないのだと……

聞いた話ではイメージと詠唱が必要らしい。


「おい、真面目にやれ、芋が傷ついただろうが。」

「うっ、ごめんなさい。」


これが今のオレ。

山奥で隠れるように住むギィと2人で小さな畑を耕し、森で狩猟をしながら、月に1度街で毛皮などをやり取りする。

空野ソラノ コウの日常だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ