10話 奪還
『なぁ、ホントにそんなことできんのか?』
『ああ、一瞬だからさっさと準備しろよ。』
『準備終わってないのはコウとバルトロメオだけよ。』
『ほー、お前ら戦う時は随分早いんだな。この間の飯は30分待ったぞ。』
『馬鹿ね。戦う前に私にズタズタにされたいわけ?』
『……あぁ、それは勘弁。』
『微睡みの手杖再結成だぞ?気合い入れろよ……』
魔法をイメージする。
俺の魔法に詠唱はない。
素早く、正確に行う。
恐らく二人は拘束され、周辺に防衛装置と、多数の警備、場合によっては一時的に拘束対象を……父さんと母さんを心停止させる装置もあるだろう……
まずはEMP(電磁パルス)魔法。
次に、索敵魔法。
そして昏倒魔法だ。
俺はギィから貰った戦士の証を握った
――よしっ!
『行くぞ!!』
『『『『おー!!』』』』
一瞬で視界が変わる。
転移位置は……上手くいった!
速やかに電子機器を無効化。
そして索敵。
敵勢は……5!
「母さん!父さん!」
「光!?貴方……」
「ごめん、ちょっと待って。」
俺が二人の拘束を素早く破壊すると、すぐに振り返る。
『3人ダウーン!』
『こっちも2人!』
『回復魔法は使ってみたけど……ご両親に身体的異常はなさそうよ。』
俺が手を出すまでもなく、既に制圧済み。
『流石だな。』
『おうよ、俺等微睡み担当も頑張るぜー。』
『……負担デケェー。』
『私はそっちじゃないから!』
『無駄口叩きすぎだよ!』
『『イエスマム!』』
『もぅ……』
俺達の返事にフォルトナは不満そうにむくれる。
これは俺達なりのコーピング(ストレス対策)だ。
悪いがやめるつもりはない。
「母さん、父さん。いきなりで悪いけど。体に異常はない?」
「大丈夫だ、それよりお前は大丈夫なのか!?さっきのは?その人達は?」
「ごめん。説明する時間がない。俺のせいで2人は捕まったんだ。だから……取り戻しに来た。」
「木戸さんが私たちを見に来ていたの。もしかして……」
「うん、仕事関係。……とにかく、一度隠れていて欲しい。突然知らない場所に飛ばされるけど、安全だから。」
「……光……分かった。でも後で絶対に説明しろ。」
「……分かってる。」
『あ、あの!』
「ん?」
『私、光さんとお付き合いしています!フォルトナです!こんな状況ですいません!後日、必ずご挨拶に伺いますので!!』
「……光?彼女は何を……?」
「あー、とにかく全部後で話すよ。」
俺は2人を飛ばす。
『センドールとは言葉が違うから、伝わんないよ?』
『あっ!……そっか……』
『ヒュー!』
『ふぐぅぅぅぅっ!あー!なんなのよぉぉぉ!!』
ヘコむフォルトナ。
からかうバルトロメオ。
絶叫するエトナ。
我ながら酷いチームだ。
***
父さんと母さんの拘束を解き、素早く移動を開始すると激しい爆発音が入口から響く。
俺達は様子をうかがうべく慎重に覗き込むと……
「光さん!来ましたね!!」
「大勇!それに信号娘!」
「その呼び方やめろって言ったでしょ!」
「光さんを助けに来ました!」
「お前ら……そんなことしたら……」
「いいんです。見捨てるほうが辛い。それに……」
「まぁ、ほぼ異室全員の総意ですから。」
青藤が大勇の言葉を受け、続ける。
「元々異能開発機構はやりすぎでした。私たち異能者はずっと不満をためていた。そこに大勇くんが声を上げたんです。」
「こんな風にするのは間違ってます!だから、俺我慢できなくて……」
「木戸さんの演技なんて面白かったですよぉ!お腹が痛いからトイレだーとか行ってました!」
「お前ら……」
「ただ、大塚さんだけは別です。彼女はあちら側に付きます。」
「巡が?」
「大勇の異能があるからねー。みことは先に安全な場所に隠したんだけど。」
「大塚さんは……その重要度から体内に細工されていますし、大っぴらには行動できません。」
「そうか……」
詳しくは分からない。
だが、歯向かった瞬間に死亡するような毒か、爆弾でも細工されているのか……
アイツの豪快な笑顔からは想像できないが、相変わらず異能者の抱えるものは重い。
「――行こう。俺達はこの研究所をぶっ壊す。それでも引かないっていうなら総理大臣だろうと大統領だろうと引きずり下ろしてやる!!」
「はい!……ところで、なんで光さんずっと光ってるんですか?」
「ん?あぁ……かっこいいだろ?」
俺はニヤリと笑った。




