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砂時計

掲載日:2026/01/25


こぼれていく……


我が身が、静かにほころびていく。


眠りの底から浮上するように、まず目をひらく。 天井の染みが、昨日より一つ増えている気がした。


手を、握って開く。 皮膚は乾いて、指先にはささくれ。 動く。


足を伸ばしてみる。 シーツの中で、かすかに布が擦れる音。


まだ、動く。


深呼吸をしてみる。 胸の奥が少しだけ痛む。 それでも、息は入る。


まだ、動く。


腰に力を入れて体勢を変える。 関節が小さく鳴る。


動く。


膝に力を入れて、腕にも……


動く。


立ち上がってみる。 床に散らばったゴミを踏まないよう、無意識に避ける。


動ける。

少し、ホッとする。


まだ生き延びていた。今日も……。


思考を巡らす。


トイレに行こう。 そして、ゴミをまとめよう。


床には読みかけの本、空になった薬のシート、飲みかけで放置されたペットボトル。 どれも「あとで」のまま、ここにいる。


パンツをおろさずに、トイレットペーパーの芯を集めだし、 便座に座った自分に気づいて、ため息が漏れる。


芯をいったん脇に置き、 改めてパンツを下ろす。


……何をやっているんだろう。


俯瞰で自分を見下ろすと、 私は、生きる屍なのだろう。


内臓にはまった時限爆弾。 いつ破裂するか分からない、静かなカウントダウン。


腐りはじめる前の異臭に、 カラスたちが集まって、


「あれはまだか」

「もうすぐだ」と

会話を交わしていそうな気さえする。



俯瞰的視点で、丸ごと生きてきた人生だったなあ。


人のこと、よく見てるね。

人の痛みに、敏感だね。

人が抱く悩みに、寄り添えるね。


そんな言葉をもらうたび、 私は少し誇らしくて、 少し空っぽだった。


自分視点で生きていなかったから、 気づいたのかもしれない。


今更だけど、 自分視点で、生きたかったな。


終わってるな、この思考(笑)



もっと、わがまま言えばよかった。


もっと、やりたいことをやっておけばよかった。


もっと、好きな人に、 好きだ、って言えばよかった。


ゴミ袋いっぱいの後悔を、

今さら分別するみたいで、 笑えてくる。


人は、 無いものねだりで終わるように できているのかもしれないな……。



疲れた。


部屋の隅に積み上げた時間みたいなゴミを眺めながら、 少し、休もうと思う。


終わる前に、 こんな自分を愛おしいと思うなんて。


ね。


(笑)

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