砂時計
こぼれていく……
我が身が、静かにほころびていく。
眠りの底から浮上するように、まず目をひらく。 天井の染みが、昨日より一つ増えている気がした。
手を、握って開く。 皮膚は乾いて、指先にはささくれ。 動く。
足を伸ばしてみる。 シーツの中で、かすかに布が擦れる音。
まだ、動く。
深呼吸をしてみる。 胸の奥が少しだけ痛む。 それでも、息は入る。
まだ、動く。
腰に力を入れて体勢を変える。 関節が小さく鳴る。
動く。
膝に力を入れて、腕にも……
動く。
立ち上がってみる。 床に散らばったゴミを踏まないよう、無意識に避ける。
動ける。
少し、ホッとする。
まだ生き延びていた。今日も……。
思考を巡らす。
トイレに行こう。 そして、ゴミをまとめよう。
床には読みかけの本、空になった薬のシート、飲みかけで放置されたペットボトル。 どれも「あとで」のまま、ここにいる。
パンツをおろさずに、トイレットペーパーの芯を集めだし、 便座に座った自分に気づいて、ため息が漏れる。
芯をいったん脇に置き、 改めてパンツを下ろす。
……何をやっているんだろう。
俯瞰で自分を見下ろすと、 私は、生きる屍なのだろう。
内臓にはまった時限爆弾。 いつ破裂するか分からない、静かなカウントダウン。
腐りはじめる前の異臭に、 カラスたちが集まって、
「あれはまだか」
「もうすぐだ」と
会話を交わしていそうな気さえする。
俯瞰的視点で、丸ごと生きてきた人生だったなあ。
人のこと、よく見てるね。
人の痛みに、敏感だね。
人が抱く悩みに、寄り添えるね。
そんな言葉をもらうたび、 私は少し誇らしくて、 少し空っぽだった。
自分視点で生きていなかったから、 気づいたのかもしれない。
今更だけど、 自分視点で、生きたかったな。
終わってるな、この思考(笑)
もっと、わがまま言えばよかった。
もっと、やりたいことをやっておけばよかった。
もっと、好きな人に、 好きだ、って言えばよかった。
ゴミ袋いっぱいの後悔を、
今さら分別するみたいで、 笑えてくる。
人は、 無いものねだりで終わるように できているのかもしれないな……。
疲れた。
部屋の隅に積み上げた時間みたいなゴミを眺めながら、 少し、休もうと思う。
終わる前に、 こんな自分を愛おしいと思うなんて。
ね。
(笑)




