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魔法都市の広場  作者: 三日月 帆立


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3/3

市場に

 宿の机で目が覚める。どうやら手紙を読んだまま、椅子で眠ってしまったらしい。体がバキバキだ。体を動かすと、ポキポキと小気味のいい音が鳴る。伸びをしたワールは何気なく窓を開け、横目で時計を確認する。時間は午前8時、市が始まるまであと一時間はあるだろう。とりあえず食堂に行き、朝食をとりに向かった。


 朝食を終え、時計を見ると丁度9時になりそうな時間、外からは陽気な音楽が聞こえてくる。市が始まった合図だ。

「お、ラビ族のお客さん。昨日はよく眠れたかな?」

「それが机の方で寝ちゃって…」

「あれま、じゃあ今日は布団で寝なよ! うちのベッドは国一だよ」

「あはは、前の支配人にも言われましたよ。今日は絶対ベッドで寝ます」


 市に向かうと音楽が次第に大きくなってゆく、管弦楽団がアップテンポな曲を奏で、踊り子がそれに合わせて踊っている。以前来た時と似た光景、もちろん奏者や踊り子は別の人だ。あれから既に30年は経っているから、そもそも市に彼らがいるかも定かではない。


 市を周っていると見覚えのある背中を発見する。数回声をかけるも、解体に夢中で気が付かない様だ。

「すみませーん!」

「? あぁ…最近耳が遠くっていけねぇ」

 ポリポリと頭をかくウル族の店主、彼は一息つくとこちらを見た。

「わりぃな、解体に夢中で年老いて耳も遠いもんでな」

「解体中に集中してるのは昔と変わらないですね」

「あん? お前どっかで会ったか?」


 どうやら覚えていないらしい。30年も経ってればそうなるか…何か思い出させるいいものは無いか考えを巡らせる。

「あ、これ!」

 短刀を見せる。彼にもらって旅でも助けられ、今まで一切刃こぼれも切れ味の落ちもない。完璧な代物だ。

「お? うちのよく行く店の……ん? お前さんもしかして」

 ウル族がよく見ると目の前のラビ族の青年が、小さかったころの姿がおぼろげに見える。彼の笑顔は昔と変わらない。


「おぉ、ドライアド探しの小僧か…でかくなったなぁ」

「えへへ、実は村の再興が終わったので皆さんにお礼をと思って」

「ほぉ! 誠実だなぁ。俺はもう嬉しいぜ……」

 涙ながらに語る。戦渦に巻き込まれた都市では次々と、成人のオスは徴兵されたという。彼は膝に矢を受け、負傷兵として名誉除隊を命じられたと語った。


「市も様変わりしちまって、多分あんたの探すパン屋はまだ戦場にいるし、この街に残ったオスはみんな何かしらハンディキャップのあるやつさ」

「そう…ですか。あの、何か力になれませんか?」

 ワールはあれこれと考えた案を提案し、ウル族の店主はうーんと唸る。

「悪か無いが、議事堂に行った方が早いな。友人が議員なんだ。昼に店じまいするから待っててくれや」


 昼にウル族に連れられ議事堂に入場する。国会が開かれており、議題として”戦後復興”を与党と野党が議論している。ウル族の店主は事情を説明し、それを聞いたマウ族の議長は議会に入る事を許可する。

「はい、議会の皆様! 戦後復興についてとても有力な情報を持った方が来訪してくれました! ドライアド様より豊穣の果実を授かりし紛争で荒れた故郷を復興したラビ族の長! ワールさんです!」


 議会がどよめく。ドライアドは伝説上の精霊と信じていたものも多いからだ。

「議長さんの友人に復興策を話したら、ここに行くように言われました。皆さんの役に立てるといいと思っています!」

 そのまま先ほど話した復興策をいくつか挙げてゆく、先ほどまで与党にヤジを投げていた野党ですら彼の話を集中して聞いていた。寝るような議員も、いるはずがなかった。


 それから数年後、終戦した知らせが村に届き、正式にキト族の王より招待を受け復興顧問として国に招かれ、キト族の王国の食糧問題などを物資支援を行いながら改善していった。元々基盤はあったため、さほど問題も起きず、2年で復興して見せた。キト族の名誉勲章を受け取り、王立図書館には彼の写真が飾られた。

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