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男女比がおかしい世界で秘密結社のボスをしている  作者: かませ犬


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第三十三話 prologue

 私や部下だけでなく第三者から見てもルカさんの認識は同じようで安心しました。こればかりは流石ルカさんと褒めるしかないですね。


 犬も歩けば棒に当たるなんて諺がありますし、組織としましてはルカさん()も歩けば大惨事という新たな諺を定評させたいですね。


 どうして彼女は尽く騒動を起こすのでしょか? 本当に理解に苦しみます。


 さて、ゲームのような結末を回避する方法について私なりに考えてみました。まずは単純なもの。ルカさんが死ななければいい。殺されないように護りきればいい。 


 早い話が、ルカさんが亡くなる事で『腐心』が暴走するのであって生きているなら問題ないという事です。言葉にすると簡単そうでしょう?


 ですが、ルカさんの性格やこれまでの行動を省みるとそれがどれだけ難しいか。とてつもなく巨大な壁にぶち当たった気分です。


「困りましたね」


 ルカさんは猫のように気まぐれです。いえ、猫以上に気まぐれです。彼女の行動は予測不可能。事実、主人公や上司の私の知らないうちにルカさんが行動し、知らないうちに殺されるというのがデフォだそうです。


 ルカさんは悪くないんですよね。勝手に行動して勝手に死んでるだけなので。彼女がなにかやらかした訳ではないです。死んだ事が何よりのやらかしですけど。


 問題なのは『腐心』ですよ。死んだ後に暴走するなんて初耳ですね。所有者を変えようにもルカさん以外に所持する事は出来ませんし……取り上げて倉庫か何かで保管するとか?


 あ、それもダメなんですね。ゲームで同じように取り上げていても気付いたらルカさんが持ち逃げしていると……。で、死ぬわけですか。


 本当にクソみたいな仕様ですね。制作陣の悪意を感じ取れます。


 となると、ルカさんの命を狙うアビス教の信者を手早く始末するしかない? それはそれで無理ゲーですね。まさかこれほど頭を抱える問題になるとは……。


 私一人の知恵ではベストな答えは導き出せそうにありません。後で信頼できる幹部に共有して、いい対策案を出すとしましょう。


「レヴィ様もルカさんを救う手立ては思いつかない様子ですしね」


 ゲームの知識があるかと言って万能ではありません。


 レヴィ様以外にも私のファンはいるようで、コミニティーで色々と妄想するそうです。こうやったら助けられるんじゃないかと。ですが、全て『ルカさん(クソ猫)だから』という結論に至るという。すごいですね、彼女。


 とにもかくにも。ゲームの熱狂的ファンであるレヴィ様はゲームのエンディングが最高の出来だったと評価している一方で、彼女が愛するキャラクター早乙女 夏樹が死ぬ結末を受け入れる事は出来ないそうです。


 だからこそこの世界でレヴィ様という攻略キャラクターに憑依した瞬間から私を救う───未来を変える事を決意したとか。


「つまり、あなたは私の知らないレヴィ様という事ですか?」


 手紙に書いている内容では、レヴィ様はこの世界が変わった瞬間……原作が始まった瞬間のタイミングでレヴィ様になっていた。いえ、正確に言うなら成り代わっていた?


 不慮の事故で亡くなったかとは正直どうでもいいですが、気付いたらゲームの攻略キャラクターに憑依していた?では元のレヴィ様はいずこへ?


 これまでレヴィ様と思って接していたのが違う人物? この場合ですと高橋さんと呼ぶべきですか? ややこしいですね。


「道理で食い付きが良かったわけですね」


 私の知るレヴィ様は写真一つでこちら側に引き込めるような人間ではなかった。仮にも政府に近い位置にいる高潔な冒険者です。半裸の写真一枚で飛びつくとは思えない。


 世界の価値観が変わったから?なんて思っていましたがどうやら違ったようです。私の事を愛してやまない高橋さんがレヴィ様に憑依したからこそ、こちら側に引き込めた……というのが結論のようです。


「ダンジョンでの発言も……そういう事ですか」


 レヴィ様がダンジョンで仰っていた言葉を覚えていますか?


『生まれ変わったら夫婦になろう』と仰っていましたね。この台詞はゲームの私が好感度マックスの時にエンディングで主人公に向けて告げる最後の言葉らしいですよ。


 あの時は頭が可笑しくなったのかと思いましたが、レヴィ様に憑依した高橋さんがゲームで言われた台詞を真に受けた結果のようです。やっぱり頭が可笑しいですね。


「そしてあの時の言葉」


 エレベーターでレヴィ様が仰っていた言葉。


『君は異なる世界から、この世界へとやって来たんじゃないのかい?』


 レヴィ様は原作と違う私に違和感を感じ、自分と同じようにキャラに憑依したんじゃないのかと考えたようですね。


 原作の私はゲームの中盤までこの世界の男性らしく純潔を護っているそうです。なので原作が始まったばかりの今のタイミングなら、私は童貞だとレヴィ様は思っていたようですが……。


 残念ながら私は童貞を卒業していました。


 その事実に頭が拒否反応を起こしてダンジョンで気絶してしまったそうです。寝盗られダメ絶対、なんて書いてますが元々あなたのものではありませんよ。


 そんなレヴィ様の個人的な感想はさておき、どうやら私はゲームに登場する早乙女 夏樹とは違うようですね。


 それはそうでしょう。


 ゲームに登場する早乙女 夏樹は男女比が偏り、貞操観念が逆転した世界で産まれて生きてきた私です。対して私は世界が変わる一週間前まで普通の世界で生きてきました。


 男女比はほぼ同数。貞操観念に関しましても男性の方が性欲が強いという印象。今の世界は性犯罪の被害者は男性ですが、一週間前までは女性が被害者でした。


 そんな何もかも逆な世界で生きてきたからこそ、今の世界の常識は違和感しかない。イカれているとすら思います。


 ですが、世界全体で見た時に異物なのは間違いなく私でしょう。この世界の人間は男女比や常識が突如として変わったというのにそれが当たり前のように順応している。


 私一人が別の世界にやってきたと、言われた方がまだ理解出来ますよ。


「だからと言って、私がやる事は何一つ変わらないのですがね」


 未来を知ったからと言って行動指針が変わる訳ではありません。我が組織の悲願はアビス教の打倒。最悪の未来を回避する為に、アビス教との戦いから手を引くなんて選択肢はそもそもありません。


 とはいえ破滅願望はありませんので、出来る限りはゲームのような展開にならないように動くつもりでいます。その為に、まずはレヴィ様の手紙から未来の情報を入手しなければいけない。


 レヴィ様の意味のなさそうな感想や的はずれな考察を読み飛ばし、直近の未来についての内容を確認しました。


「明日ですか」


 レヴィ様の手紙によると私がゲームの主人公と会遇するのは明日の正午のようです。場所はダンジョン前。主人公がチンピラに絡まれているところを私が助ける、なんて在り来りな出会いのようですね。


 これがゲームのラスボスと主人公の初会遇であり、私が仲間に加わる為の必須イベントとか何とか。それにしてもチンピラですか……。それと明日の正午……。


「んん?」


 チンピラと言われてパッと脳裏に浮かんだのはチン代様とピラ様です。組織に加入したばかりの彼女たちに、仕事の説明と事務所を案内する為にダンジョンの前で待ち合わせをしています。


「偶然ではないでしょうね」


 ゲームにおけるチン代様とピラ様は主人公との出会いのきっかけを作るだけのモブで、その後は登場しないようです。私の部下であるならば、出てきても可笑しくはないと思いますが……。


 もしかして、ゲームの私はチン代様とピラ様を部下に引き入れていない?ゲームの場合は 明日の出会いがチン代様とピラ様のお二人との初会遇の可能性すらあります。


 いえ、おそらくその通りですね。私がチン代様とピラ様のお二人に出会ったのはレヴィ様からのお誘いがあったからです。あの誘いがなければ私は事務所で仕事をしていた筈です。


 それに、チン代様とピラ様は英雄(レヴィ)様の知り合いであっても関係なしに絡んでくるような方々でした。主人公が男だからと言って臆したりしないでしょう。


 ───未来が変わっていますね。


 ラスボスである私自身がゲームと違う点。攻略キャラクターであるレヴィ様に高橋さんが憑依している点。そしてゲームや原作の知識を私に共有している点。


 以上の三つによって既にストーリーは本来のものから外れようとしております。


 予定通りに進むのなら明日の正午にチン代様とピラ様のお二人に主人公が絡まれてイベント発生なのでしょうが、彼女たちは上司となる私と会う約束をしていますからね。


 約束をすっぽかしてまで主人公に絡みに行くなんて事はしないでしょう。一応それなりに人を見る目はあるので、間違いはありません。


 ルカさん? あれは気付いたら私の懐に入ってきただけです。当初は迎え入れる気はなかったのですが、アビス教に対抗出来る手段が思いつかず途方に暮れていた時だったので……はい。


 それはもうこの際どうでもいいです。


 主人公に絡むチンピラ役のお二人が、私の部下になった事で本来ある筈の主人公とのイベントが無くなった可能性が高いですかね?


 私の行動を終始邪魔する正義に燃えるような主人公であれば、そもそも出会いたくないし早めに排除しようと動きますが、ゲームの主人公はどちらかと言えば私の味方に近い立ち位置ですし……出来れば仲良くなりたいですね。


「仕方ありません。ズレたレールを一度だけ元に戻すとしましょう」


 方法は簡単。チン代とピラ様のお二人にメールを一本送るだけ。


「これで後は私とお二人の演技力がものを言います」


 裏世界の住人として様々なやり取りと腹の探り合いをしてきましたからね。それなりに演技は得意ですよ。自分を偽る事すら慣れています。


「お二人も大丈夫そうですね」


 メールの返信には承諾の二文字と後で入念な打ち合わせをしたいとの事です。出来れば文字ではなく電話がいいなーなんて、書いてありますが下心が透けて見えますね。女性目線からもこういうのって分かるものなのでしょうか?


 ひとまず承諾と返しておきますか。時間は一時間後にしましょう。


「さて、私の方は念入りに準備をしてあなたとの出会いを心待ちにしておきます」


 同じ敵を持つ者同士、ゲームのように仲良くしようではありませんか。ね?


















 ───翌日。


 予定よりも少し早い時間から、ダンジョンの近くで待機しておりますがレヴィ様の情報通りの人物は見かけませんね。


 チン代様とピラ様のお二人は既に現地にて、絡む対象である主人公を探していますが見つからずに困り果てております。本当に来るのですかね?


「時間ですね」 


 正午を告げる鐘がゴーンゴーンと鳴りました。


 場所も時間もレヴィ様の記した手紙通り。ですが……ん?


「……いましたね」


 ダンジョン前は冒険者で溢れかえっているので、人混みの中から特定の人物を探すのは難しいと考えておりました。


 レヴィ様の情報はそこら辺がイベントだからとかなんとかで具体的なものが一切なく、あやふや。探す身にもなってくださいと文句が出かけた時に私は見つけました。


 男性が珍しいから? そうですね、今の世界においては男性の冒険者は極小数です。


 男性という性別だけで、生きているだけでお金が国から支給されます。わざわざ命をかけてまでダンジョンに潜る必要はありません。


 わざわざダンジョンに潜るのは私のようにお金以外の目的があるもの。それは主人公も同じです。


 女性の冒険者ばかりの空間に男性の冒険者がやってくればざわつきます。騒ぎのする方へと視線を向ければそこには主人公と思わしき男性の姿が。


 特徴的な桜色の髪。男性にしては長めの髪ですね。手入れをしっかり行っているのか艶があるのが遠目でも分かります。前髪を髪留めで止めて、目にかからないようにしていますね。


 大きくパッチリとした髪と同色の瞳。目鼻立ちの整った美少年と呼ぶに相応しい容姿。昨今のゲーム事情ですと、主人公の見た目も重要ですからね。やはり主人公となると美形です。


 設定によると成人しているようですが、顔つきは幼いですね。女性物の服や化粧をすれば、女性に見られても可笑しくないでしょう。


 そんな主人公の容姿も相まって、主人公と私のカップリングがあるとかないとか。出来ればない方がいいですね。


 身長は170cmほど。体格は中肉中背。体つきを見るだけで体を鍛えていないのが分かります。そのような軟弱な肉体でどうやって冒険者に?


 主人公は才能があるのは知っていますが、それでも冒険者になるには最低限のスペックが必要。ここに来たという事は既に資格をお持ちだと思いますが、大変失礼ですがあの細腕では資格試験に受かるとは……。


 ───裏金です、か。


 念の為に持ってきていたレヴィ様の手紙によると主人公を保護した富豪が援助していようです。見返りに肉体を求めているので、善行による行いではありませんが……主人公を保護した人物は政府にも顔が効く要人のようですね。


 まぁいいでしょう。私も裏の世界に生きる住人。汚いことの一つや二つ気にする事はありません。


 富豪が揃えたと思わしき一級品のブランドに身を包んだ主人公は、チンピラに絡まれておりました。


「話と違う」


 ですが、主人公に絡んでいるのはチン代様とピラ様ではありません。見ず知らずの冒険者。


 いえ、あの方々は見覚えがありますね。Aランクの冒険者パーティー『クレイジーモンキー』の皆さまです。


 冷静に対応している主人公に対して、クレイジーモンキーの皆さまはお怒りようにも見えますね。なにかあったのでしょうか?


 いえ、そんな事を考えている場合ではないですね。私の想定とは異なりますが、既にイベントは始まっているご様子。


 人混みの中で主人公を探し続けているチン代様とピラ様のお二人にメッセージを送ってから、クレイジーモンキーの冒険者に胸ぐらを掴まれている主人公を助ける為に向かいます。


 これが、私と主人公の初会遇という訳ですね。


「おや、どうしましたか?」


 このイベントをもってゲームのプロローグは終わり。


「おっと、そんなに身構えなくても大丈夫ですよ。私は正義の味方という訳ではないですし、第三者としての立ち位置で話を聞きにきただけですので」


 そして、本編が始まる。


「だから、私に話してくれませんか。ね?プレイヤー(皆さん)?」


 












 この物語は秘密結社『faceless angel』のボス、早乙女 夏樹と原作という運命により袂を分かつ宿命の相手、主人公───『()()() (あい)』との出会いまでを描いた、長い長い序章(prologue)である。

はい。という事で本作はこれにて完結となります。


続きは近々公開予定の『気付いたらラスボスになっておりましたのでストーリー壊します』で書く予定ですので、引き続きよろしくお願いいたします。


ここまで読んで頂きありがとうございました

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