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男女比がおかしい世界で秘密結社のボスをしている  作者: かませ犬


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第二十六話 パトロン

 ルカさんの能力は他の冒険者同様に魔道具ありきのものです。なので言ってしまえば他にルカさんの魔道具を使える者がいれば替えが効くということ。


 他の幹部がルカさんのやらかしに胃を痛めた結果、一時的に魔道具を没収し組織の一員でルカさんの魔道具を使える者がいないか探しました。


 その結果は言わなくても分かるでしょう。誰もいませんでした。


 使える者がもしいたとするならば、今頃ルカさんは生きていませんからね。私は手を出しませんが、部下の一人が猛烈にルカさんの事を嫌っているので彼女に殺されていたでしょう。


 利用価値がなければ組織にとって損害ばかりもたらす存在を許容出来ないそうです。


 私自身も扱いに困っていますから、気持ちは嫌というほど分かります。一応対策としてお目付け役の子を付けていますが、この様子ですと撒いてきたみたいですね。いやはや、本当に猫のような方です。


「以前もいいましたが、ルカさんに付けた部下を撒かないでください」

「撒いてないにゃー」


 撒いたから事務所にルカさんしかいないんじゃないですか?ルカさんが撒いていなければ、部下から私の方へ連絡があった筈です。


 念の為スマホを確認しましたが、そのような連絡は一切ありません。


 レヴィ様から先日の件の謝罪のメールが届いていましたが、それの対応はまた後でいいでしょう。


「なら、どうしてこの場にいないのですか?」

「し、知らないにゃー。歩くのが遅いだけじゃにゃいか?」

「わざわざ人が通らないような細い道を行ったり、屋根の上を跳んだりすると報告が上がってますよ」

「にゃーに付いてこれないのが悪いにゃ!」


 あ、開き直りましたねこの子。


 こうなると押し問答です。過去に何度も経験したやり取りなので、これ以上は無駄と判断して諦めます。本当に胃が痛いですね。


「まぁいいです。それで、どこでアビス教の信者を殺したのですか?」

「覚えてないにゃ」


 最初から期待はしていませんでしたが、その返答が私の中の評価を下げる事を自覚して欲しいものです。


 一応思い出そうとはしていますが、期待はしない方がいいでしょう。私の方で対処した方が間違いなく早い。という事でスマホを取り出して連絡先からお目当ての相手に電話をかけます。


「しし、オレ様に何かようかい旦那」

「突然のお電話ですみません。綴様にお願いしたい事がありまして」


 ルカさんと違ってワンコールで電話に出てくれました。ルカさんなら5回くらい電話をかけて出るか出ないかくらいの感覚です。それはさておき。


 私がお電話した相手は先日のチェリーボーイラブの件でもお世話になった綴様でございます。表では記者として活動していますが、彼女の真の顔は情報屋です。裏の世界の、ね。


「アビス教の信者が殺されたという情報は入っていませんか?」

「どうだろうなー? 昨日、ダンジョンで殺されていたような」

「ふふ、綴様でも記憶違いはあるのですね。冒険者を護って亡くなったと、今日記事に出ていたじゃありませんか」

「ひひひ、そうだったなー。オレ様とした事が抜けていたぜ。だが、記事として出した後は興味がなくてな」


 綴様は大変仕事がお早い。


 昨日依頼したものが、今日の朝にはネットニュースとして広まっていました。これをアビス教の信者が見れば私たちが何もしなくても教会のイメージアップの為に動いてくれるでしょう。


「私が仕入れた情報によりますと、本日もアビス教の信者が亡くなったとか」

「ひひひ、いい情報網を持ってるな旦那。間違っていないぜ……ただ今回に限って言えば殺人だ」


 そうでしょうね。だって殺したのはルカさん(私の部下)ですから。


「殺人ですか」

「ああ、そうだ。旧渋谷跡地でアビス教の信者が祈りの為に集まっていたそうだ。そこを狙って襲った狂人がいたらしいぜ」

「なるほど。その様子ですと、目撃者はいたようですね」


 チラッとルカさんを見るとソファに座って、コーヒーを飲んでおいでです。いつ煎れたんですか、それ?


 あと、自分は関係ないみたいな顔をしていますが当事者ですよ貴女。頭に生えた猫耳が飾りではないことを知っているんですよ私。


 私と綴様とのやり取りを聞いていてその態度なのだとしたら、天晴れとしか言いようがありません。


「旦那が心配するような事はないぜ」

「と言いますと?」


 どこか楽しげな口調。あまりいい内容ではなさそうですね。


桐生院(きりゅういん)って言えば旦那には伝わるじゃないか?」

「そうですか……()()貸しを作ってしまった訳ですね」


 綴様の口から出たパトロンの名前に思わずため息が出ました。


「オレ様が言えた事じゃないが、桐生院の姉御にはあまり貸しを作らない方がいいぜ。あの女傑に喰われたくなかったらな」

「善処します」

「ひひひ、それじゃまた依頼があったら連絡してくれ。今回の情報料はいつもの通りで頼むぜ」

「はい。振り込んでおきますね」


 通話の終えたスマホを胸ポケットにしまい、ソファに座って寛ぐルカさんと向かい合います。


「ルカさん……働いて貰って構いませんか?」

「にゃ? 今日は打ち合わせの為に来ただけにゃんだけど」


 前回に引き続き桐生院様には貸しを作ってしまいました。彼女の性格を考えるとある程度、私に対する貸しが溜まった事に回収しにくるでしょう。


 その時、綴様が言うように私は喰われてしまう。もちろん性的な意味で。


 出来ればそのような展開は勘弁願いたいので、桐生院様からの依頼を受けて貸し帳消しにして貰いましょう。そういう契約ですので。


 なので、そんな嫌そうな顔は止めて頂きたい。事を辿れば全てルカさんが悪いのですよ。作りたくもない貸しを作ってしまったし、綴様に情報料も払わないといけない。


 このままではルカさんの後始末だけで赤字です。その程度倒れるほど柔な組織ではないですがね。


「その件は急ぎではないので後で構いません。代わりに人を二人をほど消してきて欲しいのですよ」

「仕方ないにゃー」

「では、お願いしますね」












 ルカさんが依頼先で問題を起こして、頭を抱えるのは後の話です。

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