エピローグ
フランソワ~!
出ていったことを知った玉留さんが叫んだ瞬間、目が覚めたの。
いつものベッドだったし、ママの顔が見えたの。
だから、夢のことを話したくて、「あのね」って言いかけたけど止めたの。
しゃべってしまったら何もかも消えてしまいそうに思ったから。
「どうしたの?」
「ううん、なんでもない」
目を瞑って夢のすべてを頭の中に閉じ込めてから洗面所に行ったの。
そして歯を磨きながら、顔を洗いながら、絶対に続きを見る! 今夜必ず見る! って心に誓ったの。
すると、フランソワの声が聞こえたような気がしたの。
「待ってるよ~」って。
そうだ、白い犬の絵が表紙に描かれている絵本を借りてこよう。
思いつけたことが嬉しくて、スキップを踏んで学校に行ったの。
でも、先生の話はまったく頭に入ってこなかったの。
フランソワのことばかり考えていたから。
次はどんな人に会うんだろう? って。
だから考えたの。
一生懸命考えたの。
露見呂嗚流さんと是仁久留玉留さんと富裸豚覇王さんに肩を並べる人がどこにいるのか考えたの。
するとね、大谷選手の顔が浮かんできたの。
世界一の野球選手だからひょっとしてって思ったの。
でもね、サッカーにもすごい人たちがいることを思い出したの。
メッシさんでしょ、ロナウドさんでしょ。
そう考えていくと、よくわからなくなったの。
それに、私の知っている凄い人はそう多くないから、諦めるしかなかったの。
でもね、給食を食べている時にいきなり声が聞こえてきたの。
「よ~く思い出してごらん」って。
夢の中に出てきた人にヒントがあるよって教えてくれたの。
だから、それは誰? って心の中で訊いたんだけど、返事は貰えなかったの。
仕方ないから、一人ひとり思い浮かべたの。
美椙子さん、
露見呂嗚流さん、
是仁久留玉留さん、
軽子さん、
富裸豚覇王さん、
自己中駄王さん、
それから……、
あっ!
そこで思い出したの。
ベールに包まれた人が一人だけいたことを。
間違いない、あの人だって思ったの。
富裸豚覇王さんと並んで記念撮影をした人がいるでしょ。
ムー大国の眠優王さん。
だから、絶対に間違いないって思ったの。
でも、すぐに疑問が湧いてきたの。
ムー大国ってどこにあるんだろうって。
名前からすると北の方のような気もするけど、そんな単純な答えの訳ないしね。
それでまた、う~ん、って唸っていると、今度も声が聞こえてきたの。
「アトランティス大国はどこにあったかな?」って。
それで閃いたの。
ムー大国はお空の上かもしれないって。
そうだ、そうに違いないって思ったの。
私は嬉しくなって、教室の窓から空を見上げたの。
すると、フランソワが浮かんでいるように見えたの。
待っててね、って胸の前で手を振ったら、尻尾を振ったように見えたの。
頭の中で「ワン」という声が聞こえたような気もしたの。
その日は放課後になるのを待ちかねて、図書館に駆け込んで絵本を借りたの。
『白い犬の大冒険』
表紙いっぱいに真っ白い毛の可愛い犬が描かれていたから、ぴったりだと思ったの。
早く読みたくて急いで家に帰ったんだけど、でも読まなかったの。
読んで夢が変わってしまったら大変だからって気がついたからなの。
それからあとはひたすら夜になるのを待ったの。
晩ご飯が終わると、歯磨きをして、早めにベッドに入ったの。
そして、借りた本を胸に抱いたの。
でも、どんな白い犬が出てくるかわからないから、頭の中でタイトルを変えたの。
『フランソワの大冒険』って。
これで準備はOKよ。
あとは目を瞑るだけ。
サン、ニー、イチ、
目を瞑ったら、雲に乗ってエベレストの方へ向かっているフランソワが見えたの。
私は嬉しくなって「待って~」って手を振ったの。
すると、あっという間に雲に到着してフランソワの横に並んでいたの。
また嬉しくなって、「どこに行くの?」って訊いたら、
「それはね、これからのお楽しみだよ」だって。
そういうことだから、続きはまた今度ね。
see you