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「国民の最大の不安は死への恐怖じゃ。病気の心配、働くことができなくなる心配も含まれる」


 なるほど、


 確かにその通りだった。

 癌や不治の病に侵される恐怖は何物にも代えがたいし、手術や長い入院生活は本人だけでなく看護する側の負担も半端ない。

 しかし、それを取り除くことなどできるのだろうか?

 疑いの目を向けていると、満面笑みになった富裸豚が自信たっぷりというような声を出した。


「我が国の最先端技術を結集して『癌細胞瞬殺カプセル』を開発したのじゃ」


 はっ? 

 何それ?


「血管内に投与したピコカプセルが全身をくまなく巡回し、癌細胞を見つけた瞬間それを破壊するのじゃ」


 SF……、


「究極の早期発見、早期治療を実現したのじゃ」


 そんなことが……、


「国民は年に1 回そのカプセルを血管内に注射し、癌の発生を抑えておる。その結果、平均寿命は200歳まで伸びたのじゃ」


 なんと、日本の2倍以上!


「そして、天寿を全うした国民は、ピンピンコロリであの世に行くのじゃ」


 ピンピン?


「さっきまであんなに元気だったのに、という感じで死んでいくのじゃ。死ぬ前の苦しみは一つもなく」


 凄い!


「だから、健診、受診、手術、投薬、放射線療法、入院、看護という癌対策の費用が一切かからなくなった。国の社会保障費が激減したのじゃ」


 凄すぎる!


「その金で新たなカプセルを開発した」


 今度は何?


「『悪意霧消カプセル』じゃ」


 は~?


「脳関門を通過して悪意を察知する特殊なカプセルの開発に成功したのじゃ。それによって、脳の中に悪意が芽生えた瞬間、それを瞬時に吹き飛ばすことができるようになったのじゃ」


 ということは……、


「殺人事件がゼロになった。窃盗事件もゼロになった。誰も人を傷つけなくなったし、他人の物を盗らなくなった。誰も悪いことをしようとしなくなったのじゃ。だから、警察がいらなくなった。そして、刑務所もいらなくなった。裁判所も必要なくなった」


 つまり、


「膨大な治安対策費がいらなくなった」


 やっぱり。


「その浮いた金で別の対策を行った」


 まだあるの?


「衝突防止機能が付いた電気自動車と電気バイク、それに、電動アシスト自転車を国民全員に配ったのじゃ」


 配った? 

 全国民に?


「これで交通事故がゼロになった。その結果、交通事故対策の膨大な費用もゼロになった」


 そんなことって……、


「積極的に良いことをすると、気持ちが良いのう~」


 富裸豚のガハハ笑いが1キロ四方に響き渡った。



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