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第8章 かなしみフェアウェル

研究塔の最上階、静かな一室。窓の外は曇り空で、今にも雨が降り出しそうな気配である。リリスは、いつものように週一回の進捗報告を進めていた。リリスはトランジスタを使った魔導論理回路の基本思想を話す。質問や提案のやり取りが続く中、部屋の扉がノックされ、郵便係が一通の手紙をセスに手渡した。


「先生、ご家族から手紙です」


郵便係が告げると、セスは無言で頷き、封を開けた。手紙を目で追うにつれ、彼の表情が徐々に強張っていく。やがて読み終えたセスは手紙を机に置き、呆然としたまま椅子に深くもたれた。


「……どうしたんですか?」


リリスが心配そうに尋ねると、セスはしばらく口を開けなかったが、やがて低い声で呟いた。


「……僕の友達の精霊が、消失した」


その言葉に、リリスは息を飲んだ。


「消失……?」


「僕と一緒に育った小さな精霊だよ。家族みたいな存在だった。僕の家族が魔獣に襲われたとき、そいつが最後の力を使って守ったらしい……。精霊疲労に耐えられなくなって、消えたんだ」


セスの声はかすれていた。その手は拳を握り締め、震えている。


「......僕の家系は特殊なんだ。精霊と触れ合うことで育ち、感情のやり取りさえできる。でも、その親和性が高いせいで、精霊たちは家族を愛するあまり、無理をして高度な魔法を使ってしまうことがある。それが、こんな結果を生むんだ」


セスは頭を抱え、静かに泣き始めた。


「僕にどれだけ多くの魔力があっても、精霊がいなくなったら意味がない。僕が守らなきゃいけなかったのに……」


その言葉に、リリスの胸が痛んだ。彼がどれほど精霊たちを大切に思っていたのか、痛いほど伝わってくる。しかし、ここで何も言わずにいるわけにはいかない。


「先生、聞いてください」


リリスは机を挟んで彼の正面に立ち、真っ直ぐに彼を見つめた。


「先生の研究によって救われた精霊たちだっています。それに、私たちが今やっている研究、新しい魔力の利用方法を確立できれば、精霊が酷使されるのをもっと減らせるかもしれません。それに……その精霊は先生の家族を守るために、自分の意志で行動したんだと思います。それだけ、先生たちの家族を愛していたんじゃないでしょうか」


セスは顔を上げない。リリスはお辞儀をして、静かに彼の部屋を辞した。大切な存在を無くすことに対する悲しみは、リリスもついこの間経験したものだった。彼にも泣く時間が必要だと思った。


その日以降、何かに突き動かされるようにセスとリリスは研究により一層没頭するようになった。

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