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最終章 きらきら魔法世界

リリスは果てしない旅を続けていた。この魔法の世界は、彼女の知識や想像をはるかに超えた魅力で溢れている。


空に浮かぶ虹色の島々を遠くから眺めたり、夜になると木々が星のように輝く森を歩いたり。湖畔では魚たちが美しい調べで歌い、音楽に合わせて水面がさざ波を立てる光景に心奪われた。


夜のマーケットでは、カラフルな屋台が立ち並び、奇妙で便利な魔道具が飛ぶように売られていた。ある村では、魔法の花火と精霊たちが夜空に舞う祭りに出くわし、その幻想的な景色に息を呑んだ。


行き先も帰り先もなし、気の向くままに進む旅路。リリスの足は世界中をふらふらとさまよい、彼女の心に新しい風景を刻み続けた。



ある日、とある街の喧噪の中、新聞の一面が目に入った。


「セス・ヴェルナー氏の魔電磁気学プロジェクト、技術的難航により一時中断」


記事を読めば、プロジェクトの進展が「遠距離への魔電力の送電方法」を巡って停滞しているとのことだった。交流送魔電か直流送魔電かで激しい議論が巻き起こり、結論が出ず、事業が止まっているらしい。


「テスラとエジソンかい……」


リリスは思わず肩をすくめた。この世界でも、科学と技術が発展する中で同じような議論が繰り返されるのだと、少し微笑んでしまう。


彼女はその夜、旅先の宿で机に向かい、交流送魔電の利点と、それを支える変魔圧器の構造について簡潔にまとめた図面と説明書きを書き上げた。それを封筒に入れ、差出人不明の状態でセス宛に送った。


「名前は書かなくていいよね。タイガーマスクってことで。」



しばらく後、再び旅をしている最中に立ち寄った別の街で、耳にした噂が彼女を安心させた。


「ヴェルナー氏のプロジェクト、ついに交流送魔電方式で再開だってさ!これで各地に魔電力が供給される日も近いな!」


リリスはふっと息を吐き、空を見上げた。


「よかった。これでまた進むべき道が開けたね、ヴェルナー先生。」


心の奥底に小さな温かさを感じながら、リリスは次の目的地へと足を向けた。その目に映るのは、この広大な世界の無数の可能性だった。




冬の冷たい空気が静けさを運ぶ夜。リリスは、雪の積もる街の一角にある小さな宿に滞在していた。旅を続ける中、ここで冬を越すつもりで、いつもより長く滞在していたのだ。


部屋の中は暖かく、火の灯る暖炉が心地よい音を立てている。リリスは机に向かい、旅の途中で思いついた新しいアイデアをメモしていた。そんな時、不意にドアが力強く叩かれる音が響いた。


「……誰だろ?」


少し驚きつつ、ドアを開けると、そこに立っていたのは――雪まみれで、明らかに怒りを湛えた表情のセスだった。ひょろっとしたところも、目つきが悪いのにイケメンなところも、何も変わってないように見えるが、謎に怒っている。


「......っどうして勝手にいなくなった!」


第一声から怒鳴るセスに、リリスは目を丸くした。


「……ヴェルナー先生?どうしてここが……」


「共同特許料の引き出し。君の引き出した場所を問い合わせて、ここまで来たんだよ!」


その言葉に、リリスは思わず苦笑する。


「確かに、共同特許に関しては問題が起きたら困るね。無責任だった。ごめんなさい。」


そう言って軽く頭を下げると、セスは苛立たしげに髪を掻いた。


「そういうことじゃない!」


彼の言葉に勢いがありすぎて、リリスはさらに面食らった。セスは一瞬黙り込み、視線をさまよわせた後、息を吐くように言葉を吐き出した。


「僕は君が好きなんだよ!卒業したら迎えに行こうと思ってたのに……勝手にいなくなるんじゃない!」


その言葉を一気に言い切ったセスは、自分が何を言ったのかようやく気づいたようで、じわじわと顔を赤くしていく。


リリスは呆然として彼を見つめた。


ーはあ……?ちょっとこの人、最後に会ってからいったいどのくらい経ってると思ってるの?その間なーんにも言わないでそれ?ー


その言葉を飲み込みながらも、胸の奥から湧き上がる感情が抑えきれなくなる。おかしいのに、勝手に涙も出てくる。固まっているセスに飛びつき、彼の胸に顔を埋めた。


「先生、私の帰る場所になってくれる?」


その一言に、セスは一瞬ギクシャクしたが、やがて不器用ながらもしっかりとリリスを抱きしめ返した。そして、次第にその抱擁は強く、温かく、彼女を包み込むものへと変わった。


外では雪が静かに降り続いていたが、部屋の中は二人の間に生まれた確かな温もりで満たされていた。

読んでいただきありがとうございます。評価やいいねなどなど頂ければ嬉しいです。

明日12時に番外編を投稿して終了です!

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