第3話 フレアザウスの戦闘人形 おもかげ
フレアザウスという常夏の国に、フィルという王子がいた。
その王子は、護衛の機械人形ササを大切にしていた。
ただの機械人形であるはずの存在に、フィルはなぜか愛着を感じていた。
それは、ササが亡くなった母の姿によく似ていたからだろう。
自分を産み落として亡くなった母と姿を重ねていたから、ササに危険な目にあってほしくないと思っていた。
だから、フィル王子は自分の命が襲撃されるたびに、ササの心配ばかりをしていた。
そのため、彼の結末は必然だったのだろう。
フィル王子は、とある暗殺者の手にかかって、瀕死の重傷を負った。
国の者達は機械人形をかばって死にゆく王子を理解できないと罵った。
命なき物が命ある者を守るならまだしも、その逆はあってはならないと。
フィル王子はしかし、彼らの価値観に頷かなかった。
機械人形に心があると信じているわけではない。
それでも、母と似ているササが大切だったからだ。
そんな王子の気持ちを理解していたから、ササだけはフィル王子を責めなかった。
亡くなる寸前にフィルは、ササに最後の願いを託した。
次の王子を守る事になっても、どうか自分の命を大事にしてほしいと。
ササはその願いをかなえる事に選んだ。
王子の護衛になったら、辞退しようと思った。
しかしササを待っていたのは廃棄決定。
ササは焼却場に贈られた。
ササはそのままだったら燃える運命にあった。
だが、王子の願いのために、役立たずを処理する焼却所からぬけだしたのだった。
その後ササは、部品が摩耗して動けなくなるまで人間にまじりながら、何百年も生活していった。