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3.二話目から五話目

 二話目。

「私のー、おばあちゃんがー、昔ー、若かった頃ー……」から始まった、癖のある喋りかたの雌学生の話では、その学生のおばあちゃんが主人公でした。

 読みやすく言葉を整えるとこのような話です。

「私のおばあちゃんは、昔のヒトノホシで戦争があった時代に、とっても不思議なものを見たのです。

 ある町の空が真っ赤に焼けてから、三日も経たない頃。

 焼けた町から逃げて来たと思われる猫が居ました。その猫は、背の一部と尻尾が赤くドロドロの皮膚に成っていて、毛のある部分は腹の方と頭だけに成っていました。

 おばあちゃんは、疎開先に連れて行ってくれていた飼い主に、その猫の事を教えました。

 飼い主は、『この猫、病気なのかな?』と言いましたが、気味悪がる風もなく、逃げてきた猫に、塩抜きをした柔らかいシシャモを食べさせてあげました。

 ドロドロの皮膚になった猫は、美味しそうにシシャモを食べると、『ニャ!』と一声鳴いて、尻尾を高くして先に歩き始めました。

『一緒に行くんじゃないよ』と声をかけられたけど、おばあちゃんは、怪我をしている猫が心配で、こっそりと後を追いました。

 怪我をしている猫は、まるで背中の様子なんて気にならないと言う風に、すたすたと歩いて行って、ある家の角で曲がりました。

 おばあちゃんがついて行くと、其処には、さっきまで元気で、すたすた歩いていた猫が、見る影もなく痩せてうずくまっていました。

 そして、そのしぼんだ乳に、やはり痩せて今にも倒れそうな子猫が、一生懸命吸い付いていたのです。

 おばあちゃんは、子猫の頭と顔を舐めてあげて、首をくわえて家に連れて行きました。

 その子猫は、五歳まで生きた後、ぽっくりと死んでしまったそうです。

 それから、おばあちゃんは、ツキノウラに来るまで、何度もその母子猫の白昼夢に出会っていたと言う事でした」


 三話目。

「目抜き通りにある、玩具屋の目玉商店では、昔は本当に目玉を売っていたそうです。その目玉と言うのは牛の目玉で、猫の子供が乳を欲しがって寝付かない時に吸わせておくための玩具だったと言います。

 歯が生えて来ても乳を欲しがる子供のためにと言って、陰でマタタビを渡すと、今でも目玉を売ってくれるそうです」


 四話目。

「ちょっと前に、蒼雀玉大学じゃない所の、別の大学生が、違法マタタビ煙草製造で捕まったんですけど、そいつは犬族だったらしいんですね。

 その犬野郎の家のタンスの中は、一面にマタタビの木が根を下ろしていたそうです。床だけじゃなく、壁も天井も一面です。もう、枝も根っこもぐちゃぐちゃになるくらい。

 どうやって、タンス中にマタタビを移植したのかの方法は分からないんですけど、猫だったら、すごく幸せなタンスを作ったんだなぁって思いました」


 五話目。

「ヒトノホシに居る猫族が、ご飯を食べた後に身づくろいしたくなるのは、食べ物のにおいを消す為だったと言います。歯ブラシとコップが持てないから、ベロで舐めて綺麗にするんですって。

 そんなことしたら、唾液で汚れると思うんですけど、ヒトノホシに居る時の猫族は、自分の唾液のにおいって言うのは、『とっても良い匂い』だと思ってる変猫が多いんです。

 飼い主によっては、歯磨きをしてくれる人間も居るんですけど、ヒトノホシに居る時の猫達は、大体の場合、歯を磨かれるのが嫌いらしいです。

 そんなのはとっても不衛生で気持ち悪いので、ヒトノホシの猫達を、私達が教化すべきではないだろうかと、ツキノウラの犬族達が画策しているそうです」


 二話目は、ちょっと良い話だったのですが、その後に続いた三話は、本当に聞きかじっただけの都市伝説である事が、猫又博士にも分かりました。

 目抜き通りにある目玉商店と言うのは、恐らく語り部の考えたジョークなのかな? と、猫又教授は思いました。

 そして話を聞き終えてから、「い・二」「い・三」「い・四」「い・五」にレ点を書きました。

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