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「コンコンコン」
私が食べ終わったのを見計らったかのようにノックが鳴り響いた。
扉が開かれる。
「クリスティーナ様!!休憩は終わりです。続きを始めますよ!」
地獄のレッスンが再開した。
ーーーー
「今日のレッスンはここまでです。お疲れ様でした」
───はぁはぁ、指先にまで神経を張り巡らせて精神がすり減る思いだった・・・ってあれ?まだ少し明るいくらいなのに終わるの早くない?
「クリスティーナ様、少し、外でお話ししませんか?」
「?はい」なんの話だろ?私がクレア先生の後に続く。
「あっ!クリスティーナ様ドレス、ドレスを着てください。外はもう寒いので」
「はっ!!」・・・もう毎日この格好だから気になんなかったけど私、今、全身タイツ(トレーニングスーツ)着てるんだった・・・
バルコニーに出るとクレア先生が静かな話し出した。
「明日はあなたにとって大切な日です。」その声にはいつも通りの厳しさが感じられるが、どこか温かみもあるような気がした。
私はつい手でドレスをキュッ少し握りしめる。「でも、先生、私はまだ完璧にはできていません。もし、失敗したらどうすれば・・」
自分で言いながら自分の本音に少し驚いた。
すると、クレア先生は私の前に歩み寄り、じっと私の目を見つめる。その目には強い意志が宿っていた。「失敗を恐れてはいけません。大事なのはあなたが全力で挑むこと。その心意気が、すべてを決めるのですよ。」
「でも、クレア先生…私、まだ足りない気がします。食事の作法なんて完璧には及ばない。」
クレア先生は微笑むと、私の肩に手を置いた。
「完璧でなくても、あなたが心を込めて行動すれば、それが一番大切なことです。マナーは形だけではなく、心からの思いやりが表れるものです。あなたは、すでにその心を持っています」
「ありがとう、クレア先生。明日、私、頑張ります。」
本当は形を完璧にしたかった、いやアクシデント(?)がなければ完璧にできたはずだ。何よりクレア先生からはこれまでそのマナーの「形」を教わってきたはずだ。だけど不思議とクレア先生から教わったどのマナーの「形」より今はこのクレア先生の言葉が深く体に、心に、刻まれた気がした。
「それでこそ、私の生徒です。」
先生は満足そうに微笑み、背筋を伸ばして立ち上がる。
「さあ、明日に備えてゆっくり休みなさい。明日は、クリスティーナ様が輝く時です。その磨き上げられた肉体から繰り出す上品の具現化とも言えるほどの一挙手一投足が私たちの誇りです。」
「はい」
私は強く頷いた。




