嬉しい1日
あの人達に連れられて進んで
小さな村に到着する。
今日はここで休むらしい。
「君達の部屋はここだ」
「……」
「わぁ、べ、ベットだ!」
部屋に案内されて、ナナちゃんが
嬉しそうにふかふかのベットにダイブした。
「あはは! すごーい! ふわふわだぁ!」
「喜んでくれて嬉しいよ」
「リンちゃん! リンちゃんも来てよ!」
「え!?」
嬉しそうにナナちゃんが私を引っ張った。
そして、私に抱き付いてベットにダイブする。
私もナナちゃんの勢いに負けて、そのまま
ベットに体を預ける事になった。
「あ……ふかふか」
「うん! ふかふかで気持ち良い!」
ナナちゃんが凄く嬉しそうに私に抱き付いて
そのまま頬ずりまでしてきた。
本当に嬉しいのがよく分かる。
「それと、この服をどうぞ」
「え? 可愛い!」
「簡素なワンピースしか売ってなかったけど
その服? よりはマシだと思う」
「あ、ありがとう! 傭兵さん!」
「ふふ、私達は傭兵じゃないんだ。
出来れば、騎士と言って欲しいな」
「じゃあ、騎士さん! ありがとう!」
ナナちゃんの言葉を聞いた傭兵…
うん、騎士さんはナナちゃんの笑顔に答える様に
同じ様に笑顔で言葉を返した。
私はあまり油断したくないからか礼は言えないし
笑顔を見せるつもりは無い。
「リンちゃんもお礼言いなよ!」
「え……い、いや、だって私、まだ信じてない」
「信じて無くてもお礼を言った方が良いよ!」
「わ、分かった……」
珍しくぷんぷんと怒るナナちゃんに負けて
私も騎士さんの方に近付いた。
「その、あ、ありがとう……」
「あぁ、喜んで貰えて嬉しいよ。
さ、着替えておいで」
「うん! リンちゃん! 行こう!」
「うん、分かったから引っ張らないで」
「きっと可愛いよ!」
「そうだね」
満面の笑みを浮かべながら、ナナちゃんは
私を引っ張って服を着替えようとする。
「じゃあ、着替え終わったら教えてくれ」
「はーい!」
騎士さん達はそのまま一旦部屋から出る。
わざわざ部屋から出る必要があるのか
私には分からなかったけど
私としても、隙だらけな姿は見せたくなかった。
……あぁでも、何言ってるんだろうな、私。
無駄に強情な気がする……意味ない事なのに。
だって、あの人達が私達を奴隷にするつもりなら
力尽くでいくらでも奴隷に出来るんだ。
だって、私じゃあの人達に勝てない。
「えっと、これで……いつも通りで良いのかな」
「多分……背中のこれなんだろう」
「え? 背中に何かあるの?」
「うん、動かせそうなのが」
「そうなんだ、動かして見て」
「うん」
ナナちゃんの背中にある動かせそうな金属を
私は動かして見る事にした。
「あ、何だか締め付けられてる気がする!」
「ここまで上がったけど」
「あはは! 凄いや! 動いても落ちない!」
「そうだね」
嬉しそうに走り回ってるナナちゃん。
今まで何でも無い茶色の布切れだったのに
今は青く明るいフリフリの服になってる。
「しかし、なんでワンピースなんだ?
動き回るんだぞ? あまり良く無さそうだが」
「だって、女の子の服なんて俺よく分からないんだ。
こう、ワンピースってイメージしかないし」
「まぁ、俺もそうなんだけどな。
騎士をやってると、余裕無いしな」
「俺達は人々を守る剣であり盾であれってのが
ソールティアス様の教えだからな。
俺達はバナージを守る為に鍛えて来たし
同僚の女性も、皆硬い服しか着ないからなぁ」
「まぁ、鍛えてなかったら俺は死んでるから
そこまで気にはしてないんだが」
「そう言えば、あの子の髪色は珍しいよな」
「あぁ、何度も見た記憶はあるが
1人だけしか見たこと無いからな」
「ま、俺達があまり誰かの髪色に対して
興味を持って無いだけだろうが」
外の方で小声で話をしてるのが聞える。
「リンちゃんも早く服を着替えようよ!
この緑色がリンちゃんのだよ?」
「う、うん、この布切れよりはマシ」
私もナナちゃんに急かされて服を着替えた。
「可愛い! リンちゃんも可愛いね!」
「ナナちゃんの方が可愛い」
「えへへ! ありがとう! でも
リンちゃんの方が可愛いよ!」
自分の姿が見える鏡で姿を見た。
お揃いの服だけど色が違う。
私の髪の毛はボサボサで手入れは出来てないけど
改めて自分の姿を見ると、服の色が何故緑なのか
それが改めて分かった気がする。
私の髪の毛の色は緑だ、若干青も混ざってる緑。
髪の毛は伸びてない、ショートヘアーだった。
それはナナちゃんも同じで髪の毛は短い。
だって、邪魔だって何度も切られてきたから。
そして、ナナちゃんの髪の毛の色は白が混ざった青色。
そうだなぁ、空の色と似てる色なきがする。
だから、青色の服を渡したんだって分かった。
「じゃあ、騎士さん達を呼ぼう!」
「ん、分かった」
「騎士さん達! 着替えたよー!」
「あぁ、分かった」
ゆっくりと扉が開いて騎士達が入ってくる。
「おぉ、可愛いな、似合ってるよ」
「えへへ! ありがとう!」
「……あ、ありがとう」
本当に恥ずかしいけど、私もお礼を言う。
騎士達も私達のお礼を聞いて笑顔を見せた。
「あ、そう言えばこの子達って下着はどうなってる?」
「そうだな、下着とかも無いかも知れないのか。
よし、そっちも用意しておこう。
その間、お風呂に入ってると良い」
「お風呂?」
「あぁ、ここに湯船がある」
案内された場所に入ると湯気がでてた。
そして、暖かそうなお水が溜まってる。
「え? なにこれ……」
「ここは湯が出てるらしくてね。
ここに服を脱いで入ったら温かいよ」
「あ、温かい!」
恐る恐る水に手を触れたナナちゃんが
嬉しそうにそのまま手を湯に入れた。
「それ以上は服が濡れちゃうよ。
まずはここ、脱衣所で服を脱いで」
「うん!」
着たのにすぐ脱ぐなんてって思うけど
ナナちゃんはすぐに脱ごうとしたけど脱げない。
「ぬ、脱げないよぉー!」
「背中のファスナーを外さないと」
「背中の? えっと、こ、これ?」
「そうそれ、降ろして上げよう」
「ほら、君のも降ろして上げる」
「いい、自分で出来る」
私は自分で背中の金属を降ろした。
ナナちゃんは手が届かなかったけど
私は十分届いたからそのまま降ろす。
「体も柔らかいんだね、君」
「知らない」
「やったー、脱げたー! じゃ、入ろう!」
「引っ張らないで! まだ脱いでない!」
「あ、そうなんだ!」
私も同じ様に服を脱いだ。
「やっぱり下着は無かったみたいだね」
「うん、知らない」
「じゃ、俺達は買ってくるからゆっくりしてて」
「はーい! さ、行こう!」
そのまま私はナナちゃんに引っ張られて
温かいお水の中に入った。
「き、気持ち良い! 温かいよぉ!」
「水浴びしかしてなかったから……新鮮」
「うん! 温かい! あはは! 温かいよ!
あはは! 温かーい!」
「だ、抱き付かないで!」
興奮したナナちゃんが私に抱き付いてくる。
裸だからちょっとだけ恥ずかしい気がする。
「えへへ、頭も洗おう!」
「うん、洗ってなかった」
「えいえい! あはは!」
「ナナちゃん、私、視界が振り回されてる」
「あ、ごめん、ちょっと嬉しすぎて」
「大丈夫、私も洗って上げる」
「わーい!」
「だから、後ろを向いて欲しいの」
「このままで洗おう! その方が早いよ!」
「いや、あの……分かった」
「えいえい!」
「えい、えい」
顔を近付けてお互いの頭を洗うんだけど
正直言うと、凄く洗いにくい。
「きゃー!」
「あ、きゃふ!」
バランスを崩したナナちゃんが倒れ込んで
私もナナちゃんに押されてお水の中に全身入る。
ちょっと不意で驚いたけどそのまま顔をお水からだす。
「はぁ、ちょっと驚いた」
「あはは! えいえい!」
「この状態だと私、ナナちゃんを洗えない」
「大丈夫だよ! 今は私が洗って上げるの!」
「う、うん」
ナナちゃんが後ろから私の頭を洗ってくれてる。
私はお水が入ってる器の端っこに居る状態で
ナナちゃんが後ろから体重を掛けて洗ってる訳だから
あまり動ける状態じゃない。
「あはは! 気持ち良いね! リンちゃん!」
「うん、気持ち良い……じゃ、洗う」
「うん! お願い!」
今度は私がナナちゃんの頭を洗う。
凄く嬉しい気分になる。
「あはは! 温かーい! 楽しー! 気持ち良いー!」
「……うん」
な、なんだろう……眠たくなって来ちゃった。
今まで1度も寝てないから……
「リンちゃん! あれ? リンちゃん?」
「……」
「寝てるの? ねぇ、リンちゃん」
「……あ、ね、ねて、な……」
眠ったら、だ、駄目なのに……駄目なのにぃ……
だめ……なの……に