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決着の後

心地よい振動を感じる。

規則正しい足音もゆっくりと聞えてくる。

状況がよく分からない私は

ゆっくりと瞳を開ける。


「馬車?」


豪華な内装である馬車が目の前に見える。

ゆっくりと起き上がり、周囲を見渡した。

周りは明るくなってて、沢山の騎士達の姿が見えた。

鎧はバナージの鎧、私が眠っていた馬車の

反対側の席にはナナちゃんが眠ってる。

その隣にはいつか見た、ナナちゃんに少し似た

エルフの女性が座ってるのが分かった。


「ナナちゃん、それに……あなたは確か」


ゆっくりと手を伸ばそうとしたときに何かに当り

金属が落下する音が聞えた。

同時に馬車の動きが止まり、騎士達がこちらを見る。


「リンちゃん!」

「え? あ、エディー」

「起きたのか!?」


エディーの声と同時に馬車が止まり

周囲の騎士達が一斉に私の方を向いた。

すぐに馬車の中にお姉ちゃんが入ってきた。


「あぁ……リンフィア……」

「あ」


私の顔を見て涙を流したお姉ちゃんが

一気に私に抱き付いて、涙を更に流す。

周囲の騎士達もその姿を見て、優しい笑みを浮かべている。


「うーん、あ、リンちゃん起きたの!?」

「あぁ、起きた」

「良かった! リンちゃん!」

「ふふ、良かった」


ナナちゃんはお姉ちゃんに遠慮してか

私の隣に座って、手を握るだけをしてくれた。


「良かった、本当に……よ、良かった……」

「お姉ちゃん、ありがとう、私を探してくれて」

「私は……なんて愚かなんだろう……」

「そんな事無いよ、諦めないでくれてありがとう」

「いや、私は……諦めかけたんだ、妹を探すことを。

 それを、他でもない妹に説得されて、なんて情け無い」

「諦めないように説得しようとしたのは私じゃ無い。

 ナナちゃんだから」

「でも、私が諦めないでって言わなくても

 きっとリンちゃんが妹だって分かってたと思う」

「いや、私の気持ちの中では全く違っただろう。

 ありがとう、ナナ。君に心からの感謝を」


お姉ちゃんがナナちゃんに深々と頭を下げる。

同時にナナちゃんが焦りの表情を浮かべた。


「私からもお礼を言うね、ありがとうナナちゃん。

 私を助けようとしてくれて」

「わ、私は何もしてないよ!」

「そんな事無い、ナナちゃんが

 祈りの剣を持って来てくれたお陰で

 あの戦いに勝てたんだから」

「あの剣は、私達を助けてくれた剣だから。

 きっとどんな時でもリンちゃんを守ってくれるって

 そう思っただけなんだ」

「うん、そのお陰で助かった。ありがとう」

「……えへへ、でも良かった。

 私がリンちゃんの役に立てて、本当に良かった。

 こんな私でも、誰かを助けられるって分かって

 凄く嬉しい気持ちになったの」


ナナちゃんは既に色々な人を助けてる。

シャリーズの時もそうだし、エルフ達の事もそうだ。

そして、私だってナナちゃんが居てくれたお陰で

ここまで来ることが出来た。


「ナナちゃんはいつも私を助けてくれてる」

「うん、でも私もずっとリンちゃんに助けられてきてたの。

 色々な人を助けても、リンちゃんの助けにならなかったら

 私は頑張ったって感情にはなれなくて

 でも、リンちゃんを助ける事が出来たって分かって

 その、優しい笑顔を見ることが出来て、私は嬉しい!」


ナナちゃんが私に抱き付いてくれた。

私もナナちゃんを抱きしめて、その優しい鼓動を感じる。

私がここまで来ることが出来たのはナナちゃんのお陰だ。

私が諦めないでここまで来られたのもナナちゃんのお陰だ。

私の心が折れなかったのも、ナナちゃんのお陰だ。

私はずっと、ナナちゃんに支えられてここまで来た。

優しい心に感化されて、私も同じ様になりたいとそう思って。

私はナナちゃんに憧れて、ここまで来たんだ。


「私はずっとナナちゃんに支えられてきた。

 何度も言ったけど、私はナナちゃんが居てくれたお陰で

 こうやって、進むことが出来た。

 ナナちゃんは、私の憧れ」

「それは私もだよ、リンちゃん。

 どんな時でも私はリンちゃんに支えられてきたの。

 どれだけ辛くても、リンちゃんと一緒に居たら嬉しくて

 頑張りたいって、そう思って頑張ったんだ。

 とても強いリンちゃんを見て、憧れて。

 いつも私を守ってくれるリンちゃんを見て、憧れて。

 でも、その度に傷付いて、私は情け無くて。

 でも、リンちゃんと一緒に居たいから、頑張ったんだ。

 リンちゃんは私の憧れだよ。

 リンちゃんが居てくれたお陰で、私はお母さんに再会できた」

「私もだ、ナナちゃんが居てくれたお陰で。

 私はお姉ちゃんに再会できた」

「……リンちゃん」

「何?」

「これからも、一緒に頑張ろうね!

 今度は一緒に幸せになるの! 笑顔になるの!

 どっちがニコニコ笑顔になれるか、勝負だね!」

「ふふ、そうだね、ナナちゃん。でもその勝負は決ってる

 勝つのは私だ、これは確定だ」

「そんな事無いよ! 笑顔は私の方が得意なんだから!

 私の方がニコニコ笑顔で毎日笑うんだ!

 だから、勝つのは私だよ! これは確定なんだから!」


お互いの勝利宣言と同時に顔を見合わせ同時に笑顔を見せる。

絶対に勝つのは私だ、そこは譲れない。

大事なお姉ちゃんに再会できた私の方が幸せになる。

負けない、ナナちゃんに負けないくらい幸せになる!


「……なら、私達も勝負しないと行けませんね

 リージェル殿」

「えぇ、ソールティアス様。ですが勝負は決ってます」

「えぇ、決ってますね」

「勝つのは私です」


ナナちゃんのお母さんとお姉ちゃんが同時に笑顔を見せ

お互いに同じ言葉を呟いた。

敵対心は無い、お互いに笑顔を見せた言葉だ。

この言葉に敵意など無い、どんな時でも譲らない

世界で1番自分が不幸だと思ってしまうように

世界で1番、自分が幸福だと思う為に。

誰かを妬まない、妬む必要は無い。

むしろ、誰かに妬まれるくらいに幸せに生きてみせる。

やっと取り返した幸せは、もう2度と離さない。


「……そうだ、お姉ちゃん」

「どうした? リンフィア」

「その、私達のご先祖様はどうなったの?

 バラドーザさんって言うんだ、崖の下の神殿に」

「……そうだね、リンフィアを助けてくれたであろう

 その人物を私達は探しに行ったが、結果として言えば」

「……」

「私達のご先祖様は、笑顔のまま死んでいたよ」

「……そうなんだ」


何となく分かってたけど、少しだけ安心も出来た。

バラドーザさんは最後、笑顔だったしその姿を見ることが出来た。

それは……バラドーザさんが人間であった証拠だから。

長い月日の中でバラドーザさんは本当の人間になったんだ。

魔物なら、死ねば姿が消えてしまうのだから。


「ご先祖様の亡骸はどうなったの?」

「リンフィアを救ってくれたご先祖様だ。

 バナージで手厚く弔うつもりで連れてきてる」

「何処に居るの?」

「そうだな、こっちだ」


お姉ちゃんに案内されて、大きな馬車へ向う。

そこには両手を胸当りで組まされてる

バラドーザさんの姿があった。

その死顔は安らかな物だ。


「……回復とかは出来ないのかな」

「既に試したが、無駄だった」

「そうなんだ……」

「そうだ、リンフィア。この方は一体」

「この人はバラドーザさん、ユーランス王国の本当の英雄。

 デミ・ビーストとして生を受けて、

 人間のお母さんに育てられて、私達の為に立ち上がってくれた

 優しい人だよ。そして、私を導いてくれた人。

 バラドーザさんのお陰で、私はこの姿になれたし

 こうやって、生きて幸せに笑うことが出来てる」

「……そうか、ありがとうございます、バラドーザ様。

 私の妹を導いてくれて、私達を救ってくれて。

 あなたの事は生涯、語り継いでいきます。

 魔物として生まれながらも

 人として生きて、人として死んだあなたの事を。

 私達の英雄、バラドーザ様の新たな伝説を」

「バラドーザさん、あなたの遺志は決して忘れない。

 これからも私達と一緒に歩んで欲しい」

「ありがとう、リンちゃんを助けてくれて。

 あなたのお陰で、私は今、凄く幸せだから!

 優しいあなたと、私も1度お話ししたかったな」


周囲に居る騎士達とエルフ達も皆

バラドーザさんに手を合せ、それぞれ感謝の言葉を告げた。

最後の力を振り絞って、私を救ってくれた英雄。

今度は私が、私達があなたのような英雄になってみせる。

色々な人を守り、導き、幸福にする為に。

あなたの死は無駄では無い、それを証明するから。

私も手を合せ、深く頭を下げる。

私達も頑張るから、見守っててね、ご先祖様。

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