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明確な覚悟

お姉ちゃんの辛い思い出。

そして、お姉ちゃんが抱いた覚悟。

私が今まで生きてきた中で感じたトラウマ。

痛みや激痛が何度も私を苛む。

でも、1番私を刺激したのは

間違いなく、お姉ちゃんの記憶だった。

私はお姉ちゃんに愛されていたんだ、あんなに。

私に名付けられた、この名前は

お姉ちゃんが必死に考えて付けた名前。

リンフィアと言う名前は、大事な名前だ。


私がお姉ちゃんの妹だと言う証拠だ。

私の大事な名前、私の唯一残った家族。

それなのに私は、お姉ちゃんの目の前で

また、お姉ちゃんに無力さを……絶望を。

色々なトラウマが蘇っても、どうでも良いと感じた。

お姉ちゃん感じてる辛い思いと比べれば

私のトラウマなんて優しい物だ。


「う、うぅ……」


色々な思い出が再び私を苛む。

色々なトラウマが、再び脳裏に呼び起こされる。

何度も何度も痛めつけられてた記憶。

ネズミを食わされたり、ミミズを口に突っ込まれたり。

そんな昔のトラウマが、再び私を襲った。

でも、その程度で私は折れない、折れてたまるか!


助けたい……お姉ちゃんを、助けたい。

幸せに生きたい、お姉ちゃんとナナちゃんと。

私が失ってしまった幸せを、

奪われた私達の幸せを取り戻して!


その為に、この辛い時間を乗り越えた先に

私達が奪われた幸せが待っているのであれば!

私がここで折れることは無い、折れない! 折れない!

乗り越えてみせる! 助けてみせる! 救ってみせる!


力がないからって、誰かを見殺しにしてきた

そんな思いは、もう嫌だ! もう嫌だ、嫌だ!

諦めるなんてごめんだ、何度も諦めてきたんだ。

でも、色々な人達に救われて、ここまで来たんだ!


「あ、あぅぅぅ!」


何度も私が折れてきた思いで、記憶。

何度も諦めてきた日々、時間が私の頭の中に

一瞬の間に思い起こされてくる。


だけど同時に、改めて確認することも出来た。

私は1度だって、1人で辛い時間を乗り越えた事は無い。

奴隷だったときも、人質にされたときも

辛い思いをした時には常に、誰かに救われてきた!


諦めそうになっても、周りは私に諦めるなと

そう告げてくれて、その人達に手を引かれ

ここまで来たんだ……なら、ならもう!

私は諦める事を止める! 諦めるもんか!

越えてやる! 越えてやる! 越えてやる!

痛みなんて、不幸なんて! 絶望なんて!

私にはもう、何の障害にもならない!


「私は……私は諦めない! 強く、強く!」

「そう、諦めないで、君は強い!」

「強くなる! い、ぎぃいぅう!」


心臓が握り潰されたかのような激痛が胸に走る。

体中の皮膚が引き裂かれるような痛みが私に走る。

意識が吹き飛ぶくらいの激痛が、私を襲う。


「あ、い、あぁぅ! ぐぅぅう!」


激痛に意識を飲まれそうになる。

意識を失って、逃げてしまいたい痛み。でも!


(リンちゃん、頑張ろう。

 1人でも多くの人を救うために。

 そして、死んじゃった人達の分まで

 きっと幸せになろう)


私は幸せになるんだ! 幸せになる為に!


「うがぁあああ!」


大きな覚悟が出来ると同時に心臓が大きく跳ねた。

ハッキリと聞えるくらいに鼓動が速くなり

そこを中心として、全身が熱くなった。


その熱が全身を全て掛けると同時に痛みが引き

代わりに、色々な感覚が私を包んだ。

不意に増えた感覚、急激に聞えるようになった音。


「よく、頑張ったね、リンフィア」

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」


激しい痛みや辛い思いが私を覆い尽くしたけど

私は色々な思い出を糧に、その辛い過去を越えた。

そして得たのは、多数の新しい感覚。


「……あ」


背中にある妙な感覚を操り

それが何かを見るために、前に動かした。

そこには大きな尻尾がある。


バラドーザさんの尻尾じゃ無い。

少し独特な、緑がかった尻尾。

私の髪色に似ていて、何ならお姉ちゃんにも似ている。


頭にある独特な感覚、動くと感じて動かすと

何かが動いた様な気もした。

今度は頭に触れる、そこには髪とは違う

もふもふとした柔らかい触感があり

何かが頭に当ってるような感覚もあった。


「もしかして、これ」

「あぁ、覚醒したことで君に

 デミ・ビーストの身体的な特徴が発現した。

 私と同じ、獣の耳と獣の尻尾。

 毛の色は髪色と同じ色になる。

 君の場合は、優しい緑色だね」

「……」


自分の姿をまだ鏡で見てないから分からないけど

きっと、今の私はお姉ちゃんと同じ様な姿なんだ。

お姉ちゃんと同じ、可愛い耳と尻尾が生えてる姿。

想像すると、何だか嬉しい気持ちになる。

でも、そんな事を思ってる余裕は無い。


「ありがとう、バラドーザさん。

 私の……ご先祖様」

「リンフィア、君はとても凄い人間になれる。

 色々な人を救えるような、強い人間に。

 私なんかよりも素晴らしく、私よりも強く」

「いや、私はご先祖様よりも凄い人間にはなれない。

 でも、あなたのような立派な人間になれるように

 私は努力することを諦めないと誓う」

「……ふふ、それで良い、良いかい? リンフィア。

 自分の生き方を疑っては駄目だよ。

 君は立派な子だ、色々な人達を救ってきた。

 君は自覚はしてないだろうが、

 君は色々な人の希望となる生き方をしていたんだ」

「それは、ナナちゃんだ」

「そうだね、君にとってナナちゃんは希望だろう。

 だが同時に、彼女にとっても君はきっと希望だろう。

 良いかい? これだけは忘れないで欲しい」

「何?」

「君は素晴らしい人間だ、自分を貶んでは駄目だ」

「……分かってる、バラドーザさんのお陰で

 私は今、私に絶対の自信を得る事が出来た。

 私は何でも出来る、だから、お姉ちゃんも救える。

 行ってくるね、ご先祖様。本当にありがとう」

「……ふふ」


お姉ちゃん、私は必ずあなたを助ける。

これから、一緒に幸せに生きていくために。

私達に降りかかる不幸を全て払いのけて!

一緒に、生きていくために!


私はすぐに洞窟の中を走り抜ける。

今の私には、この洞窟の暗闇は見えなかった。

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