大きな分岐点
リンフィアが生まれて、
私はもっと強くなるために努力をした。
絶対に守りたい、リンフィアを守りたい。
必ず、必ず。私の大事な妹を。
1人でも多くの人を救うためにも
私は今日も努力をし続けた。
少しだけ、最初よりは強くなった気がする。
そろそろ、私も頑張らないと駄目だ。
「お母様、許可が欲しいの」
「何?」
「私、依頼に出たい!」
「い、依頼!?」
都市の外で辛い思いをしてる民衆を救う任務。
依頼は今、辛い状態である人を助ける為に
このバナージがこなしてる仕事の1つだ。
危険な仕事はお母様が率先してこなして来た。
お母様は凄く強くて、ちょっと強い魔物なら
一瞬で倒してしまうくらいに強いんだ。
そんなお母様に私は常に憧れを抱いてた。
お母様のように色々な人々を救いたい。
そして、リンフィアに誇れる姉になりたい。
その為には、1人でも多くの人を救いたい。
だから、私は依頼を受けて人々を救いたい。
「何を馬鹿な! まだあなたは子供!
依頼なんて危険な事をさせるわけには行かない!」
「私はもう11歳! リンフィアに誇れる姉になりたいから
私は常に努力して来たんだ! だから、子供じゃ無い!
もうお姉ちゃんなんだから! 私は頑張りたいの!
1人でも多くの命を、私は救いたい!」
「駄目!」
「お母様!」
お母様とお父様は私が依頼に出ることを
中々許可してくれなかった。
でも、流石に1ヶ月間ずっとお願いしてたら
流石にお母様もお父様も許可してくれた。
「ありがとう! 私、頑張る!」
「許可はしたけど、私が言ったことは守るのよ?
良い? あなたが依頼に出るときは
必ず私も一緒に行くわ」
「1人でも」
「駄目! これが嫌なら行かない!」
「……わ、分かったよ、お母様」
お母様とお父様は私を心配して
お母様が一緒に行かないと許可しないと言われた。
……うぅ、もっと信頼してくれても良いのに
お母様は本当に心配性だ。
それから、1ヶ月で何度も色々な依頼をこなす。
そして、3度目の依頼。
「それじゃ、行ってくるわね」
「あぁ、リンフィアは私に任せてくれ」
「お願いね、バドルさん」
今日の依頼は少し遠い場所だった。
2日はかかる気がするけど、頑張ろう。
リンフィア、大丈夫かな? うん、大丈夫だよね。
だって、お父様が一緒に居るんだもん。
「オルフィア、夜営も出来るようになったわね」
「うん、3回目だから」
テントの張り方も分かってきたし料理も出来る。
屋敷で食べる料理とは比べものにならないけど
そんな事を考えてたら民衆を守れない。
例え泥臭かったり、大変だったとしても
民衆を守る為に、私は諦めないもん!
リンフィアに誇れるお姉ちゃんにもなりたいし
こんな事で弱音は言ったりしない。
夜、私はお母様と交代交代で見張りをして
1日を過ごして、先に進んでいく。
そして、目的の場所に到着した。
「来たわね、ここよ」
「何処かな?」
「あれね」
骨だ、動き回る骨が私の前に姿を見せた。
「スケルトン、弱い魔物ね」
「これ位なら倒せる!」
「油断したら駄目よ? 相手は3体。
良い? 撃破順序を考えるのよ?」
「うん!」
スケルトンは私の方に歩み寄ってくる。
からからという骨の音。足音が分かりやすいから
小さいからだというメリットが無い。
「ふん!」
私に攻撃を仕掛けてきた骨の攻撃を避けて
私はスケルトンの首を両断した。
すぐに他のスケルトンもやってくるけど
攻撃が遅い、これ位なら余裕で対処出来る!
「はぁ!」
動きが遅いスケルトンの攻撃を避けて縦に裂く。
もう1体もこっちに来たけど
相手はスケルトン、剣で攻撃しなくても余裕だ。
「っと、うりゃ!」
スケルトンの見え見えな攻撃を避けて
スケルトンの顔面に拳を叩き込み粉砕した。
「流石ね、これ位なら余裕よね」
「うん! でも、お母様。弱すぎる気が……」
「大丈夫よ、さ、帰りましょう」
少し違和感を感じながらも、帰る事にした。
だけど、ふと見た視線の先に
大量のバラバラの骨が見えたような気がする。
……気のせいかな、とにかく帰ろう。
リンフィアの姿を見て、癒やされたい。
「予想以上に強くなったわね、オルフィア」
「うん、でも今日は簡単すぎたよ」
「そうねー、不思議ねー」
「んー?」
お母様は何か知ってるのかも知れない。
も、もしかして、ただの訓練だったとか……
いや、こんな遠くにするわけ無いし。
そう言えば、依頼書……スケルトン3 体の撃破。
あれ? おかしくないかな? ここ、消えてる。
「お母様、これおかしくない?」
「な、何が?」
「だって、普通近付けて」
「あれよ、書くところを書き間違えたのよ、きっと」
「え? こんな所に書く方が不自然でしょ?
ねぇお母様、何か隠して」
「さぁ、帰りましょうほら!
リンフィアが待ってるわよ!」
「そ、そうだね!」
凄く怪しいけど、深く聞いても絶対教えてくれない。
まぁ、今は帰ろうかな。
そんな道中、騎士達が焦った表情でやって来た。
「ギルティア様! オルフィア様!」
「どうしたの? グラース、早いわね。
確か今回は大規模な依頼でしょ?」
「襲撃です! ソールティアス家の屋敷が!」
「ど、どう言う事よ! 襲撃って!」
「騎士達の一部が唐突に暴れ始めて、
不意に攻撃してきたのです!
不意の事で対処が遅れ、
主戦力がやられてしまい、戦力が足りず
まだ現在も戦闘中です!」
「クソ! どう言う事よ! とにかく急ぐわ!」
「うん!」
「オルフィア、あなたは来ないで!」
「な! そんな事!」
「駄目よ、来たら駄目!」
「行く! 行くんだ! リンフィアを助ける!」
「駄目よ! あなたはまだ弱い!
グラース! オルフィアを保護しなさい」
「な、しかし私は騎士団長です!」
「だからよ! 指揮は私がする!
あなたは必ずオルフィアを護りなさい!
あなたにしか任せられない!」
「……分かりました、ギルティア様。
オルフィア様は必ず護ります」
「お願いね」
「行きましょう、オルフィア様」
「離して! グラース! 離して!」
「いえ、駄目です! オルフィア様!」
「離して! お母様、お母様!」
グラースが私を拘束して、その間にお母様と
他の騎士達だけが家に向って走っていく。
行きたいのに、私だって助けに行きたいのに!
どうして、どうして私が、私が……!
「オルフィア様……」
結局、私はグラースに力で負けて
ソールティアス家の別宅へ連れて行かれた。
都市の外にある比較的安全な村にある別宅。
「食事が」
「話し掛けないで!」
「……申し訳ありません」
私を逃がしたグラーズに八つ当たりをする。
グラーズが私のお願いを聞いてくれれば
リンフィアを助けに行けたのに。
お母様はあれから帰ってこない。
何日も経ってるはずなのに……
お母様も私達が避難したのがここなのは
きっと分かってる筈なのに
「……何の音だ」
そんな時、沢山の足音が聞え
別宅の扉が破壊されて騎士達がやってくる。
あの鎧は……び、ビレッジの鎧。
「オルフィア・ソールティアス
ここに居るのは分かってるぞ」
「貴様はここがソールティアス家の
別宅と知っての狼藉か!」
「あぁ、当然だ。没落した家の
別宅などと言ったところで
何の抑止力にもならないがな」
「な! どう言う!」
「ソールティアス家は滅んだ!
よって、この土地は我々の物だ!
この場に居るオルフィアを出せ!」
「ビクトール……お前」
「オルフィア・ソールティアスだな。
共に来い、貴様に用事がある」
「お父様とお母様は……どうした」
「貴様の両親は愚行の末に部下に反旗を翻され
自らの部下達の下剋上で死んだんだ」
「ふざけるな! そんな訳あるか!
お父様とお母様が下剋上されたって!?
そんな事、あってたまるか!」
「事実だ」
「貴様がやったんだな、お前が、お前らが!」
こいつらだ! こいつらがやったに違いない!
殺してやる! 殺してやる! 殺してやる!
「殺す、殺す! 殺してやる!」
「オルフィア様、そ、その姿は」
「殺してやる!」
「その姿、急ぎ無力化を!」
「死ね! お前らは死ね!」
怒りのあまり、私は剣を振い大きく暴れた。
私を捕まえようとしてきた騎士を殺して。
大量の返り血を浴びながら、ビクトール以外を殺した。
別宅には血まみれの光景が広がっている。
だが、どうでも良い事だ、どうでも!
こんなゴミ共の命なんてどうでも良い!
「後はお前だ、ビクトール……殺す」
「待て! ち、違う! 俺達じゃ無い!
は、反乱を先導したのは俺達じゃ!」
「うるさい、死ね!」
「反乱を先導したのはレングラース家だ!
お、俺達じゃ無いんだ! 許してくれ!」
「分かった、お前を殺した後に
レングラース家も滅ぼす」
誰がやったのかはどうでも良かった。
私の大事な家族を奪った奴らに慈悲は無い。
私のお母様を、お父様を、そしてリンフィアを。
こいつらは殺したんだ、だから、殺す!
「私の家族を貴様らは全て奪ったんだ。
慈悲は無い、お前も死ね」
「お前の妹は生きてる!」
「な!」
「隙を見せたな! 死ね!」
一瞬、リンフィアが生きてるという言葉を聞いて
驚いた私は動きを止めてしまった。
その瞬間にビクトールが剣を伸ばして
私に斬りかかってくる。
「オルフィア様!」
動けなかった私を庇うようにグラースが出て来て
私の代わりに右腕を斬られてしまった。
「ぐ、グラーズ!」
「クソ、仕留め損ねた!」
「あ、待て! いや、そ、それよりもグラース!」
「わ、私の事は構いません、オルフィア様……
そ、それよりも奴を……ビクトールを」
「て、手当をしなきゃ死んじゃう!」
「大丈夫です、私は」
「いや、いや!」
どうすれば、どうすれば助けられるの!?
思い出せ、思い出せ、そうだ、か、回復!
お母様が教えてくれた回復を!
ど、どうすれば回復出来た!?
た、確か治るようにイメージして!
とにかく怪我を触って、イメージ、イメージ!
「治れ、治れ! 治って! 治って!」
必死に願い、何とかグラーズの怪我を治した。
……だけど、ビクトールは殺せなかった。
いや、それは良いんだ……あいつを殺した所で
お父様とお母様は……いや、信じない。
きっとお父様とお母様も生きてるはずだ!
だけど、その淡い希望はすぐに奪われた。
家に戻り、その光景を見て絶望する。
沢山の騎士が死んでる……
そして、部屋には……お父様の亡骸があった。
「……お、お父様」
少しだけ腐敗が始まってる亡骸。
私達の幸せは、一瞬の間に奪われた。
私が……私が依頼に行きたいなんて言わなければ。
言わなければ、お、お母様が居れば……
きっと、こんな事にはならなかった。
お父様は死なないで済んだのに!
でも、でも……リンフィアはきっと生きてる。
リンフィアは、リンフィアだけは、き、きっと!
「……レングラース家を滅ぼす」
「待ってください、オルフィア様。
今の状態で復讐など成せるはずも無い」
「じゃあ、このまま黙ってろって言うの!?」
「いえ、ソールティアス家を復興させましょう。
そして、戦力を整えて
まずはリンフィア様を探しましょう」
「……うん、そうだね」
このままだと何も出来ないのは明確だった。
今は家を復興させないと駄目だ。
都市の市民達を説得して、家を復興させる。
でもまずは、屋敷を……あの姿に戻さないと。
死んでしまった騎士達を弔い、お父様を弔った。
お母様は屋敷には居なかった。
もしかしたら、お母様も生きてるかもしれない。
そんな淡い希望を抱きながらも、すぐに絶望する。
それは、お母様の亡骸が見付かったという報告。
ギフティー側で見付かったらしい。
だけど、リンフィアの亡骸は見付からなかった。
きっとあの子は生きてる、生きてるに違いない。
そう信じて、必死に家を建て直す。
そして、数年で家を建て直すことが出来た。
だけど、リンフィアは見付からなかった。
……同時に覚悟を新たにする。
必ずリンフィアを見付けてみせる。
「……グラーズ」
「はい、オルフィア様」
「私はこれから、その名前を封印する」
「え?」
「リンフィアを見付けるまで、
私はオルフィアじゃ無い。ソールティアスだ。
必ず見付けてみせる、リンフィアを」
「何故、名前を封印すると」
「私への罰だ、弱かった私への罰。
家族を守れなかった愚かな私への罰。
妹を救えなかった私が、両親から授かった
その名前を言いふらして良いはずが無い」
「……」
「せめて、お父様とお母様に誇れる
立派な娘になるまでは……
その大事な名前を決して語らない
今の私は、まだソールティアス家の当主でしかない」
「……分かりました、ソールティアス様」
リンフィアはきっと生きてる。
きっと、きっと……私の唯一の家族。
必ず……見付けてみせる。
そして今度こそ、立派な姉として
唯一残った家族として、君を愛すと誓う。




