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姉の記憶

大きな貴族の家、ソールティアス家。

私の故郷、私の家だ。


「生まれた、生まれたぞギルティア!」

「あぁ、よ、良かった……ようやく

 ようやく私達にも娘が……」


私のお母さんは獣の耳と尻尾が生えていた。

お父さんは普通だった、周りと変わらない。

私の姿もそうだ、耳も尻尾の生えてない。


「オルフィア、今日からお勉強よ」

「はい、お母様」


私はソールティアス家の次期当主だ。

常に強く、常に上を目指さなければならない。

私達を慕ってくれる民衆を守らなければ駄目だ。


「良いかい、オルフィア。

 私達はバナージを統べる貴族だ。

 民衆達に決して飢餓の苦しみを与えてはならない」

「はい、バナージの人々の願いを聞いて

 他の都市とも協力して資源を確保して」


毎日毎日大変だった、お父様から色々と教わる。

民衆を飢餓の苦しみを与えないように。

民衆に悲しい思いをさせないためにも。

私は民衆を救うために、努力しなくてはならない。

私は次期当主だ、絶対に人々を導かないと。


「オルフィア、民衆を守る為には

 お金を集めるだけでは足りないのよ。

 強い力がないと、魔物達の手によって

 理不尽に人々の幸せが奪われてしまう。

 だから、強くなる努力を怠らないで」

「はい、お母様!」

「よし、じゃ、今日は私と組み手ね」

「はい!」


お母様からは強さが必要だと言う事を教わる。

お母様の指示に従って、必死に戦う。

組み手、だけど、私ではお母様には敵わなかった。

手も足も出ない、でも不思議と苦痛は無かった。


お母様は私を嫌ってるわけじゃ無い。

お父様も私を嫌ってるわけじゃ無い。

毎日毎日笑顔で話し掛けてくれてる。


戦いの訓練や、政治の勉強をしてる時は

ちょっと大変だったのは間違いない。

でも、私は次期当主だからやらなくては駄目なんだ。

都市を栄えさせ、平和を守るための教え。

お母様は弱き人々魔物からを守る為の力を鍛えてくれてる。

絶対的な強さ、全ての人々を守れる様な強さ。


だけど、訓練をすればするほどに私は惨めになる。

手も足も出ない、何も出来ない、敵わない。

私は弱い、弱いんだ……このままじゃ私は大事な人を救えない。

政治を覚えるのも難しい、大変すぎる。

何度も何度も教わっても、覚えることが出来ない。


「……」


お母様とお父様は私を責めたりはしなかった。

何度も何度も、出来の悪い私の為に貴重な時間を割いて

必死に教えてくれた。でも、私は物覚えが悪い。


……何で、私ばかり、こんな目に遭わないと駄目なんだろう。

何で、どうして……私が全てやらないと駄目なんだろう。

お母様もお父様も2人で協力してるのに

どうして私は1人でやらなければならないんだろう。


「……いや、甘えるな」


私はソールティアス家の次期当主だ。

バナージの民衆を守る為に私は強くならなければならない。

必死に必死に、私は強く……強く、完璧に。

諦めるな、諦めるな、毎日毎日。


そんなある日、都市で仲が良さそうな姉妹を見た。

お姉ちゃんは妹を抱きかかえて、笑ってる。

私も妹が欲しい……欲しいな。


「私にも妹が居れば……

 一緒に頑張って、一緒に努力して。

 ……お姉ちゃんとして、妹を守って。

 妹にも支えて貰って、一緒に……」

「……」


5歳の時だ、私は食事の席で、

今まで溜め込んでた思いを無意識に呟いてしまった。


周囲から感じる重圧、そして楽しそうな姉妹を見て来て

不意にでてしまった一言。

馬鹿な事を言ってしまったと思って、私は口を押さえた。


「妹、欲しい?」

「……う、うん」


お母様が私に聞いてくれた一言。

私はその言葉を肯定した。

妹が欲しいという心を少しだけ吐露した。


その言葉を聞いて、お父様が覚悟を決めたような表情を見せる。

お母様もそんなお父様を見て、覚悟を決めた表情を見せた。


「約束するわ、オルフィア。

 必ず妹を作ってあげる」

「本当!?」

「あぁ、時間が掛かるかも知れないけど……」


お父様とお母様は妹を作ってくれると言ってくれた。

私は楽しみだ、絶対に可愛がってあげるんだ。

何があっても守ってみせるんだ、可愛い妹を。

そう思うと、不思議と鍛錬が楽しくなってきた。

妹を守る、妹を支える。そんな思いが私を包んでくれる。


まだ見ない妹の顔を思い浮かべながら

その妹を可愛がる、自分の姿も思い描く。

支えてあげるんだ、私が妹を支えてあげるんだ。

守ってあげるんだ、私が妹を守ってあげるんだ。

何があっても、絶対に守ってあげるんだ。

その為に強くなる、少しでも速く強くなる。


でも、妹は中々出来なかった。

お母様とお父様が妹を作ってくれると

約束してくれて、もう5年は経ってる。

……やっぱり、駄目なのかな。

少しずつ、私は鍛錬に身が入らなくなってくる。

大丈夫、信じろと自分を励ましても

ドンドン熱が入らなくなっていく。


お父様とお母様に対しての不信感も出て来た。

言っただけなのか、適当に……

いや、そ、そんな訳無い、そんな訳無い。


「お、オルフィア!」

「え?」


そんな事を考えていると、お母様が

涙を流しながら部屋に入ってきた。


「やったわよ、オルフィア! で、出来た!」

「え?」

「あなたの妹が出来たの!」

「い、妹が!」

「えぇ!」


お母様は私を抱きしめながら

涙を流してその事を報告してくれる。

やっと、妹が出来るんだ、私にも……妹が。


「ご、ごめんなさい、お、お母様。

 わ、私、お母様とお父様を、う、疑って」

「ごめんなさいね、時間が掛かって。

 あと1年……我慢できる?」

「うん!」


妹が出来ると分かって、私は一気にやる気が溢れ出す。

毎日毎日、必死に必死に鍛錬を繰り返した。

強くなる為に、妹を守る為に強くなる為に!


「ふふ、大きくなってきたわね」

「う、うん!」


お母様のお腹が大きくなって来てる。

お腹の中に私の可愛い妹が居るんだ。

お母様に言われて、お腹に耳を当てる。


お腹の中で、お母様のとは違う心臓の音が聞える。

私の可愛い妹……まだ、顔も見てないけど

きっと凄く可愛い女の子に違いない。


「名前、どうしようか」

「名前?」

「えぇ、オルフィア、あなたが考えてみる?」

「うん!」


名前、妹の名前、可愛い名前が良いなぁ

私の妹だって、すぐ分かるような名前で

とても可愛い名前。

簡単に言える可愛い名前。

2文字とか? ナナとか、リリとか。

でも、それだと私の妹だって分からない。


名前を聞いただけで、私の妹だって

そう分かる名前が良いなぁ。

私と一緒の名前、私と一心同体って感じの。

一緒にこのソールティアス家を支えるような。

とても可愛くて、私の妹だって分かる名前。


「……リンフィア!」

「リンフィア?」

「うん! リンフィア!

 妹の名前はリンフィアがいい!」

「ふふ、可愛い名前ね」


可愛くて、私の妹だってすぐに分かる名前。

私の名前がオルフィアだから

同じ部分がフィアで、可愛い部分はリン。

その2つを合わせて、リンフィアって名前にするの。

そうすれば、一緒だって分かる。

私の名前と妹の名前、一緒って感じがして嬉しい。


「ふふ、リンフィア、お姉ちゃん待ってるからね」

「ふふ」


リンフィアが生まれてくるまで、私は努力を続ける。

リンフィアに誇れるお姉ちゃんになる為に。

私がリンフィアの自慢のお姉ちゃんになる為に。


何があっても、リンフィアを守れる様になるために。

強く強く、そして賢くなるんだ。

リンフィアが分からない問題をすぐに答えて

凄いね、お姉ちゃんって言って貰う。

自慢のお姉ちゃんになりたいから、私は努力する。

理由がある努力はとても、とても楽しい。


「わ、私も行きたい!」

「待つんだ……今は信じて」


ある日、ついに妹が生まれる日。

4月10日、私の誕生日の1日前だった。

お母様の元に行きたかったけど

お医者さんが待って欲しいと言ってた。

だから、私達はお祈りしながら待った。

そして、大きな可愛い泣き声が聞えてきた。


「生まれたのか!?」

「はい! 元気な赤ちゃんですよ!」


4月9日、私の妹が……ついに産まれた。

とても可愛い小さな赤ちゃん。

リンフィアの姿を見て、私は涙が溢れ出す。


「リンフィア……お、お姉ちゃんだよ……」

「おぎゃー! おぎゃー!」

「絶対に……お姉ちゃんがあなたを守ってあげる」


可愛い妹を見て、必ずあなたを守ると私は誓った。

お姉ちゃんとして、私は必ずリンフィアを守る!

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