表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/62

思い出の導き

(目を覚まして、こっちへ)


朦朧とした意識の中、声が聞えた気がした。

誰かの声、直接頭の中に響く声。

何? 何の声なの? 閉じようとしてる瞳を

無理矢理開けて、周囲を軽く見渡す。

何も見えない、骨も何も見えない。


(こっちへ、こっちへ来なさい、私の子孫よ)

「子孫……?」


薄らとした意識の中、私はゆっくりと起き上がる。

閉じてしまいそうな瞳を無理矢理こじ開けて

私はその声が聞える場所を見た。


何も無いけど、私は再び歩き出す。

フラフラと、大量の血を垂れ流しながら。

自分の命を1度諦めて身を投げたはずなのに

みっともなく、まだ生きたいと縋って。


「ケホ! ケホ!」


口から血が出る、死ぬ。

でも、回復が出来ない……魔力が無い。

さっきの全力で、殆ど使った。


全く不確かな足取り、動けてるのが不思議なくらいに

私は大量の血を流しながら、ゆっくりと進んでいく。

暗闇の中、周りが見えるという不思議な現象。

その視界も、何度か暗くなりかける。


意識が遠のき、倒れそうになる度に踏みとどまる。

悲しそうな表情を見せる人達を思い出しながら。


(うぅ、恐いよ……リンちゃん)

「大丈夫、大丈夫だよ、ナナちゃん」


進まなきゃ、進まなきゃ……

誰が私を呼んでるのか分からない、だけど。

だけど、進まなきゃ……死にたく無い。


(どうしてリンちゃん普通に歩けるの?)

「どうして……どうしてだろう……」


分からない、分からない。

どうして私はまだ、歩けるんだろう。

もう、体は動かない筈だし、死んでもおかしくないのに。

もう、動くのを止めて、そのまま眠れば……

きっと、楽になれるはずなのに。


(何処に行ってるの?)

「分からない……」


私が何処に向ってるのか、私には分からない。

ただ朦朧とした意識の中、無意識に近い状態で

ただただひたすらに、ただただ光を見て

ゆっくりと歩みを進めてるだけなんだ。


この奥に希望があるかもって

そんな、淡い希望に突き動かされて。

でも……本当にそんな物はあるの?

仮にあったとしても、私は……役立たずだ。

もう、ここで諦めた方が良いんじゃ無いの?


「あ……」


骨だ……いつか見た骨が、朦朧とした意識で見えた。

骨は私に気付いて近付いてくる。


「あぃ」


骨の攻撃を避けることも出来ずに受けてしまった。

骨の攻撃で私は押し返され、壁に背を預けた。

このまま諦めて、大人しく座ってしまおうか……

こんなに痛い思いをしてまで、私は何で……


「……」


骨がカラカラと音を鳴らしながらこちらに近付いてくる。

朦朧とした意識、ゆっくりと近付いてくる骨。

このまま諦めて、楽になってしまいたい。


生きてても辛い思いしか出来ない。

誰かの足を引っ張ることしか出来ない。

誰かを殺す事しか出来ない……足を引っ張ることしか出来ない。


「あ、ぅ」


骨が再び私を斬り裂いた。

血飛沫が私の周囲を赤く染める。

このまま、私は死ぬのかな……起き上がれない。


「……」


私は色々な人の不幸を見続けて、最悪を見続けてきた。

本当なら、とっくに死んでてもおかしくなかったんだ。

それなのに、ここまで生きてこられた。

1年だけだったけど、幸せな時間だった。

もういいや、満足だ……もう、私は満足なんだ。

このままもう休んでしまおう……


私はよく頑張った……だから、おやすみなさい。

私は自らの瞳を閉じる。もう、進みたくない。


(暖かいね……リンちゃん)

(うん、ナナちゃんも……暖かい)

(……生きていこうね、絶対に)


瞳を完全に閉じようとした瞬間に

不意に思い出した言葉。

ナナちゃんと誓った約束。

例え……例え辛くても。


「う、うぁあああ!」


例え辛くても……生きていかなきゃ!

色々な人が掴み取りたかった今を

私は……諦めてたまるか!


何が、何が満足だ! 自分を騙すな!

この程度で満足できるはずが……無い!

私はまだ……幸せになりたいんだ!

辛かったんだ、だから、もっと幸せに生きたい!


「まだ、私は! あき……らめない!」


目の前の骨を枷で掴まってる腕で殴りった。

力を入れてしまったことでバランスを崩し

一気に倒れそうになるけど

何とか両手を前に出し、倒れるのは避けた。


「あ、ぐ、うぅうう!」


体が重い……普段、当たり前の様に起き上がってきたのに

私の両手は、私の体重を支えきれなくなってきてる。

枷のせいもあるんだろうけど、力が入りきらない……

でも、あ、諦めるか……生きていくんだ、ぜ、絶対に。

折角手に入れた幸せを……諦めて、た、たまるか!


「う、ぐうぅう!」


残ってる気力、全てを使って私は無理矢理体を起す。

そして、再び前を見据えた。

そこにはいつか見た、大きな門があった。


(こちらへ、私の子孫よ)

「はぁ、はぁ、はぁ」


必死に歩みを進め、その門の前に進んだ。

鍵の様な物を何とか開けて、門に力を掛けた。

でも、意識が……もう殆ど……う、動けてる?

私は……生きてる? 本当に、生きてる?


「はぁ、は、あ、う、ぐ」


それを決めるのは、今は後だ、後で考えよう。

生きてるかもしれないし、死んでるかも知れない。

ただ、目の前の門を開けた後に考えよう。


「あ、け、あい、て、がふ」


全身で扉を開けるために

全力で力を込めたことで、

私は口から血を吐いた。


同時にバランスを大きく崩し

門にもたれ掛かるように倒れる。

同時に、門が開いていった。


「あ」


そのまま力無く、私は門の目の前で倒れた。

もう、立つ気力が……ここまで来たのに、私は。


「よく来ましたね、私の子孫よ」

「え?」


とても優しい、お爺さんのような声が聞えて

私は温かい何かに包まれていく。

今はもう、その温もりに身を任せたい。

ゆっくりと瞳を閉じて、私は意識を失った。

死んだのか生きてるのか、分からないままで。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ