大きな選択
沢山の金属音と一緒にやって来た何人かの騎士。
その戦闘にはソールティアスさんが居た。
「速かったな、オルフィア」
「ビクトール! リンフィアを返せ!」
「それは、貴様次第だ」
その言葉の後、バラドーザが私を掴む。
「バラドーザ様!?」
「折角だ、私が動いてやろう。
貴様だけでは不安だからな」
「申し訳ありません」
私を鷲掴みにしたままで
ソールティアスさんに見せ付けるように
私を前に出した。
「な! 何だ、その獣は!」
「獣? 失礼な事を言うな!
この方は我々の神、バラドーザ様だ!」
「バラドーザ様だと!? ふざけた事を言うな!
ユーランス王国の英雄であるバラドーザ様が
こんな醜い獣である訳がない!」
「貴様……許さん!」
「そう慌てるな、ビクトールよ。
くく、オルフィアよ
この娘が見えるだろう?」
そう言って、バラドーザが再び私を強く掴んで
すぐに私を口の中に入れる。
「リンフィア!」
「い、いぎぃ!」
力が少しずつ入っていく、肉が、さ、裂けて……
「このままこの娘を喰らっても良いが
私は子の娘の肉よりも欲しい物がある」
「あぁあああ!」
もっと深く、き、牙が私を裂いていく。
た、食べられる、せ、背中も噛み砕かれる。
こ、このままだと真っ二つにされて、た、食べられる!
「な、何が、何が欲しいんだ!」
「貴様の心臓だ」
「ッ!?」
その言葉の後、私は口から取り出された。
激痛に意識を失いそうになりながらも
自分の状況が宙づりなのが分かる。
後ろ手の枷を摘ままれて
腕だけで全体重を支えてる状態。
「はぁ、はぁ、はぁ」
お腹から大量の血が滝の様に流れていく。
私の体を伝って、足先から地面に垂れ続ける。
凄い出血量だ……このままだと、し、死ぬ。
「貴様が自らの心臓を俺に捧げるのであれば
貴様の大事な妹は解放してやっても良い。
ビクトール」
「は」
バラドーザの命令に従って
ビクトールと呼ばれた男は短刀を投げた。
その短刀を、私は何処かで見たような気がする。
あの淡い記憶の中で見た、あの短刀。
独特な紋様は見間違えることは無いと思う。
「それは特別な武器でな。
ヒューマンビーストを殺す為の武器だ」
「……」
「貴様の母も、その短刀で死んだ」
「な!」
「貴様の妹を救う為にな、くく。
良かったじゃ無いか、オルフィア。
貴様は最後、憧れの母と同じ様に死ねる。
貴様の母を殺した、その短刀でな」
「……」
震えながら、ソールティアスさんは
その短刀に手を伸ばす。
私の方を向いて、決意を抱いたように
再び短刀の方を見た。
「ソールティアス様! お止めください!
た、例えあなたが自らを殺したとしても
奴らはリンフィアを解放するはずが!」
「だが、や、やらなければリンフィアは……」
「1秒おきにこの娘の指を喰らう」
「いぎ!」
ゆ、指が……指が食べられて!
「分かった! やる!」
「くく」
このままだと私はまた……また、失う。
私の大事な人を私のせいで死なせてしまう!
いやだ、そ、そんな後悔を2度もしたくない!
こんな事で、ソールティアスさんを!
「う、がぁあああああ!」
「ぐ! がふ!」
今までにないほどの火力で私は魔法を放つ。
予想以上な高火力で驚いたんだろう。
バラドーザは私を離した。
このままソールティアスさんに合流……
いや、駄目だ。途中の邪魔な騎士に止められる!
こんな状況じゃ抵抗できるはずも無い。
再び掴まったら絶対に2度目は無い!
一瞬でも動きを止められてしまえば
ほぼ確実にバラドーザに掴まるのは明確だ。
なら、私が……私が、ソールティアスさんを
大事な誰かを失わないようにする為に……
私が、私がやらなきゃ行け無いことはただ1つ。
せめて邪魔にならないように動くしか無い!
この場に居たら掴まる、ソールティアスさん達に
合流しようとしたら、邪魔な騎士で足が止まって
そのまま掴まってしまう。
掴まればもう一度人質になって、
ソールティアスさんを殺してしまうことになる!
なら、ならなら! ごめんなさい、エディー
私は私の命よりも大事になった命のために
ごめんなさい、私はソールティアスさんに
2度目の後悔をさせる。
せめて、生きて欲しいから!
「さよなら、お姉ちゃん。
私が本当にあなたの妹なら……ごめんなさい」
「何を、リンフィア!」
私が選んだ選択は私自身を殺す事だった。
私はすぐに掛け出し、深い崖に身を投げた。
「どうして!? リンフィア! リンフィア!」
私があの場から居なくなれば、人質は居なくなる。
だから、お姉ちゃんも逃げ切れる。
……本当に私があの人の妹なのか。
それは分からないけど、きっと違うと
そう信じて、私は私を殺す事にした。
大事な人が生き残るには、これしか無かったんだ。
あぁ、こんな事ある? 一生の間に2回も
同じ場所の崖に落ちるなんて馬鹿な事が。
……私は、誰かを不幸にすることしか出来ない
どうしようも無い子だ、役立たずの女の子だ。
大事な人を泣かせる事しか出来ない奴だ。
そんな私は、きっと暗闇がお似合いなんだろう。
私の視界はドンドンと暗闇に包まれていった。
私も……骨になるのかな。
はは、でもそうなればもうきっと
誰かに迷惑を掛けることも無くなる。
大きな音が響き渡り、鋭い痛みが私を襲い
更には自らの血飛沫まで見えた。
私は……きっと、これで死ぬ。
……お姉ちゃん、ごめんなさい。




