怒濤の事実
リンちゃんが、リンちゃんが攫われた!
が、瓦礫が邪魔で追いかけられない!
「クソ! この瓦礫を!」
「待て、その前にこっちの話だ」
「黙れ! このクズ!」
「この女が見えるだろ? エルフ」
「……」
あの男の人が女の人を人質にしてる。
さっきまでの話が本当なら
あ、あの人が私のお母さん。
でも、それよりも私はリンちゃんを追いかけたい!
「うぅ、こ、壊れて! ま、魔法、魔法で!」
「駄目だ、さっきの戦いで魔力が……」
「うぅ! そ、そんな!」
あの戦いがあったせいで、魔力が無い。
ソールティアスさんもそうだし、私も。
この瓦礫を吹き飛ばせるような魔法が使えない!
「貴様らの姫を死なせたくないのなら従え。
お前達が結構強いのはよく分かってる。
貴様らの姫を救いたければ俺の命令に従い
そこの小娘を俺に渡せ」
「私……」
「そうだ、お前はこの俺の奴隷だ。
所有物を返せと、そう言ってるだけだ」
「所有物だと!? ふざけるな!」
「そう焦るな、オルフィア、貴様には何も言ってない。
貴様に用があるのは俺じゃ無く、ビクトールの奴だ。
くく、信仰する神とやらが、
貴様の心臓を欲してるそうだ。
本来なら貴様らが居ない間にバナージを滅ぼし
都市の人間を人質にして、
ビクトールは貴様の心臓を。
俺はバナージを手にする予定だった。
だが、エルフのせいでその計画が台無しになった
しかし、大きな収獲もあった。
貴様が大事にしてるあの小娘の剣。祈りの剣。
あれに間違いない、黒夢の洞窟に眠る宝石は!」
リンちゃんが持ってた祈りの剣。
あ、あれは私達を助けてくれた大事な剣だ。
さっきリンちゃんを攫った人が言ってた。
ギフティーの騎士に剣を渡すって。
「その剣を手にして、この娘を蘇らせる」
「蘇生が目的であれば人質など無意味では?」
「そう思うか? いや、殺し手も構わないんだぞ?
貴様の背後に居る娘を育てて
俺の性奴隷にしても良いんだからな」
「貴様! そんなくだらない事を!」
「……あなたは少し、喋りすぎです」
「な! がは!」
そんな一言の後、不意に壁をぶち抜いて魔法が飛んで来た。
その魔法はレングラースの右腕を吹き飛ばした。
「ぐ、がぁああ!」
「今!」
「がふ!」
その後、エディーが即座に動いてレングラースを倒した。
「何とか! ソールティアス様!」
「ありがとう! エディー!
君はナナと一緒に動け!」
「了解です!」
人質を解放出来たことで、一気に動いた。
そして、窓を割ってソールティアスさんは外に出る。
窓はレングラースの近くにあったから
人質を解放しないと突破出来なかったんだ。
「私も行きたいけど!」
「待ってくださいナナ様!」
「でも! わ、私、リンちゃんを助けに!」
「その前に、お母様を、あなたのお母様を救って!」
「どう言う事!?」
「リージェル様はまだ生きてます!
回復の魔法を使えば、きっと蘇生できる!」
「え!?」
「ふ、ふざけるな、そ、その女は9年前に死んでる!
貴様の隣に居るガキを生んですぐな!」
「え? わ、私が……私のせいで、私のお母さんは」
「いえ! 生きてます! 奇跡的に外傷が無かったお陰で
仮死状態のまま、生き延びることが出来てる!
それが理由で、エルフの同胞達は手を出せなかった」
エルフ達が血を流して死んでたのはそれが理由?
まだ生きてるから殺される訳には行かなかったから!
「な……その女の体が腐敗しなかったのは……」
「ナナ様!」
「う、うん!」
ちょっとしんどいけど、やるしかない。
助ける事が出来るなら助けないと!
リンちゃんは大丈夫だ、きっと大丈夫だ。
ソールティアスさんが追いかけていったんだ。
だから、リンちゃんはソールティアスさんに任せて
私は私が出来ることをやらなきゃ。
救えるなら……救えるなら、助ける。
「えい……」
自分の残った魔力を使って回復を始めた。
一瞬のうちに、倒れてるエルフの肌色が綺麗になる。
青白かった肌も、美しい透き通るような白色に。
「う、ぁ」
「リージェル様!」
さっきまで動かなかったエルフが目を覚ます。
そして、私の方を向いて、笑顔を見せた。
「あ、あぁ……よ、良かった」
その一言の後、エルフは私を抱きしめる。
「あなたが……無事で……わ、私は」
「ど、どう言う事なの? し、死んだって
回復したらすぐに治って……
いや、それよりも……あなたは本当に
私のお母さんなの?」
「えぇ、私はあなたのお母さん」
とても弱々しい声で、エルフの人は
自分が私のお母さんだと告げてくれた。
不思議と体がポカポカしてくる。
「リージェル様、良かった……」
「ピンカー、ごめんね、迷惑を掛けて。
あなたが……この子を助けてくれたの?」
「いえ、私では無く、今はこの場に居ない
ソールティアスさんとリンと言う子が
ナナ様を救ってくれたのです」
「ナナ、ナナというのは」
「う、うん、私の名前なの。
ずっとナナって呼ばれてて」
「……そう、ナナちゃん、ごめんね
名前を付けてあげられなくて。
そうだ、その名前は気に入ってるの?」
「うん、最初は7番だけど、今の名前は好き。
リンちゃんや皆が名付けてくれた名前。
それが、ナナって言う名前だから」
「そう、分かったわ」
この人は私を強く抱きしめてくれた。
そして少しずつ、この人は私のお母さんなんだって
分かってきてるような気がする。
「お母さん……」
「何? ナナちゃん」
「……私、嬉しい。でも、それよりも……
私、やらなきゃ行け無いことがあるの」
「何かしら?」
「リンちゃんを助けたいし
エルフ達も助けたいの。
でも、今私がやりたいことは
エルフを助ける事!
リンちゃんはソールティアスさんが追いかけてるから
私は今、私に出来ることをしたい。
その後、急いで追いかけたいの!」
「分かったわ」
本当は今すぐにでもリンちゃんを追いかけたい。
そして、リンちゃんを助けたいんだ。
でも、今は私にしか出来ない事が目の前にある。
血まみれのエルフ達、きっとまだ生きてる。
エルフ達を全員助けて祈りの剣を探して
そして、リンちゃんの後を追いかけなきゃ!




