久し振りの家
「ありがとうございました!」
「ありがとうございました!」
あの襲撃から2ヶ月の時が経ち
私達はバナージに帰還することになった。
シャリーズの国民達は私達に頭を下げ
お礼を言ってくれた。
その中には当然、チカちゃんの姿もある。
「リンちゃん、ナナちゃん。また来てね」
「うん、また来るよ!」
滞在期間の間に仲良くなった子供達だ。
ギフティーの騎士が1ヶ月も経たない間に
何故か帰ったお陰で
結構自由に動けるようになったからね。
ナナちゃんは短い間で友達を増やしていって
私も何故か、色々な子供達に懐かれた。
理由は分からないけど、誰かに好かれて
嫌な気持ちになる事は無い。
「またねー」
子供達や住民の人達に挨拶をした後
私達はバナージへ向った足を進めた。
ピンカーは用事があると言って
私達よりも先に何処かへ行った。
理由は教えてくれなかったけど
どうも、嫌な予感がするような気もする。
「でも、今は帰ろう」
不安な要素はあるにはあるけど
それは不確定な要素でしか無い。
とにかく今は戻ることが最優先だ。
だって、ソールティアスさんが
バナージを離れて、もう2ヶ月。
経済的に考えても、あまり良くないだろう。
「っと、帰ってきたね」
「うん」
道中は何に問題も無くバナージへ戻れた。
バナージの主力騎士が沢山居たわけだし
道中にちょっと強い魔物が来た程度で
問題が起こることは決して無かった。
私達は基本的には休みを与えられてて
夜の見張りや、そう言う役目は無かった。
「ローズ、居るんでしょ?」
「お! その声!」
ローズの部屋の前に来て、エディーが声を掛ける。
その声に反応したローズが元気よく扉を開けた。
同時にペロちゃんが私達に飛びついてきた。
「わん! わんわん!」
「っと、あはは、良かった! 元気だね!」
「ワン!」
ペロは私達の姿を見てかなり嬉しそうに駆け回ってる。
そして、エディーの部屋の前でワンワンと吠えてる。
速く家に帰ろうと、そう言ってるんだろうと分かる。
「ペロちゃん、中々あたしに懐いてくれなかったんだよね。
いや、悪い子って訳じゃ無いんだけどさ?
大人しくしてたんだけど、あそこまで楽しそうに
走り回ることは無かったって言うか?」
「懐かれてるってのは分かって嬉しいかな」
「それで? どうだったの? 何か問題とか?」
「問題って言うか? まぁ、不審な動きがあったって言う
ちょーっと不穏な報告があったけど
結局、何も無かったね」
「どう言う事? 不穏な報告って言うのは?」
「いや、ビレッジが何故か騎士を編成してたらしくてね」
「ビレッジが?」
ビレッジはギフティーの近くにある国だ。
宗教的な考えで支配してたとかいってたね。
今まで、全く話題には上がらなかったけど
まぁ、ソールティアスさんはビレッジも
結構嫌がってるみたいだけど。
「何で知ってるの? そんな事、遠いのに」
「まぁ、ソールティアス様が警戒してる都市が
ギフティーとビレッジだからね。
理由は分からないけど」
「実は僕は分かってるけどね、
実際あそこは不安だ」
「そうなの? どうして?
今までの分からないとか言ってたのに」
「僕ってほら、副団長の娘だからね。
色々と知ってるって言うか。
まぁうん、お父様はそこまで話しはしないけど。
そりゃ、都市の重要な話しだし」
重要な話し、ソールティアスさんや
エディーが隠してる理由なのは分かる。
でも、聞こうとしてもきっと教えてくれない。
「それは、あまり聞かない方が良い?」
「あぁ、聞かれても答えないからね
答えるつもりが無いから
今まで知らないフリしてた訳だし
今回は少し不穏だからちょっと伝えただけ
その時が来たら君達が僕に聞くようにね
でも、今回はこれ以上は伝えないけどね」
「ケチー」
「機密情報に近いしね」
結構軽そうなエディーだけど
ソールティアスさんへの忠誠は本物だ。
ソールティアスさんが言ったら駄目と
そう言ってたら、当然エディーは私達に
その情報を話したりはしないだろう。
「まぁこの話は後って言うか……てかさ、ローズ」
「お? あたしの変化に気付いた的な?」
「ウィンクしてダブルピースってアホっぽいよ?」
「はぁ!? アホってひどくね!?
可愛くね!? めちゃ可愛くね!?」
「あんたって、色々と矛盾してるわよね。
何で騎士やってるのよ。
可愛いの好きならそう言う仕事すれば良いのに」
「可愛いのは趣味だし? ま、あたしの場合はね
そんな事よりも、誰か護りたいって言うか?
最優先はその誰かを護りたいって言う思考って感じ?」
「じゃあ、後衛で良かったんじゃ無いの?
前衛ってどうよ、もう結構ムキムキなのに」
「気にしてるんだよね-、筋肉、ちょっと太くなったし?
まぁ、腹筋はほら、腹見せてないし見えないっしょ?」
「後衛は」
「知ってるっしょ? あたし、狙うのちょー苦手だし?」
狙うの苦手なんだ、それはどうしてもあるよね。
「いや、まともに練習してないじゃないの」
「いやほら、あたしには合わないんだって!
やっぱりあたしは前衛でキラキラしたいって言うか?」
「前衛で戦ってる時、君の顔は全くキラキラしてないけどね。
滅茶苦茶真剣じゃん、君」
「う-、エディーみたいに余裕を持って戦えれば良いけど
あたしは流石にエディーほど強くないし?」
エディーは本当に強いからね、間違いない。
今でも戦って勝てる気がしない。
でも、ナナちゃんと共闘すれば行ける気がする。
だって、ナナちゃんはかなり魔法使えるようになった。
魔力の使い方を教えて貰ったことで
私も体特殊属性魔法の身体強化も使える様になった。
流石にそこまで万全に効果は発揮できないけど。
「ワンワン! ワン!」
「あ、あはは、じゃ、先に帰っておこうね」
「ワン!」
「エディー、私達は先に部屋に帰るね」
「本当はもうちょーっとお話ししたいけど
まぁ、ペロちゃんが急いで帰りたがってる訳だし?
ま、今日はここまでって事で!
ほらほら、エディー」
「まぁ、隣だし大丈夫かな
僕はちょっとローズたちと話をするよ」
「うん! ご飯を用意して待っておくね!」
「うん……いや、材料無くない?」
「……2ヶ月たってる」
「れ、冷蔵庫の中身」
そう言えば、処分とかをしてなかった気がする。
急いで出たから、そこまで気が回らなかった。
流石に冷蔵庫でも2ヶ月も経ってたら
中の食べ物、く、腐るんじゃ無いかな!?
「それはあたしが処分してるから大丈夫!」
「そう言えば鍵を渡してたね、盗んでない?」
「そんな小物臭い事、このあたしがするわけ無いっしょ?」
「あぁ、知ってる。だから預けたわけだしね」
「ちょい待ち、っと、ほいこれ、鍵。
あ、こっちはアンナのね」
「サンキュー」
「ありがとう」
「掃除はやってっから、埃臭いことは無いと思う」
「ありがとね、色々と」
「良いって良いって! 友達だしね!
それに、大した事じゃ無いし?
そんじゃ、お土産話よろー」
「あぁ、色々あるからね、しっかり聞くと良い」
その一言の後、エディーが私達に鍵を渡して
2人はローズの部屋に入っていった。
私達は鍵を開けて、部屋の中に入る。
ローズが言ってた通り、部屋は綺麗だった。
埃っぽい場所は無く、掃除も丁寧だった。
結構独特な喋り方をしてたけど、ローズって
一緒に行ってたとき、料理も作ってたし
炊事洗濯とかやっぱり沢山出来るんだろうなぁ。
多分、エディーがあまりにも何も出来ないだけで
大体の人は炊事洗濯出来るんだろうけど。
アンナも料理作ってたし、部屋も綺麗だったしね。
まぁ良いか、今は私達もいるし問題は無い。
「ワンワン! ワン! ワン!」
「あはは! 楽しそうだね!」
「うん」
今日は1日中、ペロと遊ぼう。
ペロも私達が帰ってきて、凄く嬉しそうだしね。
シャリーズであったことを忘れることは出来ないけど
今を楽しむことは出来るから。
嬉しそうにお腹を見せてるペロを撫でて
今の幸せを、私達は再び噛みしめる事が出来た。
……頑張ろう、これからもこの幸せを守る為に。




