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恐怖に負けず

何とか壁を登ることが出来た。


「明るくなってきた……かも?」

「そうだね」


壁の上には松明があったからなのか

ようやくナナちゃんも

周りが見えるようになったみたいだ。

ナナちゃんの言葉から

安堵の感情を感じた気がする。


「あ……う、うぅ」

「……」


だけど、崖を登って少しして嫌な物が目に入る。

生贄……3人の生贄を捧げろって書いてる。

奥で血が飛び散ってるのが分かった。

血の出所は何とか視界には入らなかったけど

出所は絶対に見たく無いと、そう思った。

本能が見ては駄目だって、そう言ってる感じだ。


「……」


そもそも、変な音が聞えてるんだ。

行ったら駄目だって言うのが良く分かる。

何かを食べてるような咀嚼音。

いやだ、行きたくない……


「あ……」


大きな音と同時に視界に入ってきた小さな手。

その手が何なのか……考えたくは無い。


「あ……あ、あ……」

「い、行こう」

「……うん」


絶対に行っては駄目だと確信した私は

少しでもある可能性に縋るのを止めて

剣が光る方向に向って進んでいく。


出口に向けて進むしか出来ないんだ。

あっちは駄目だ、絶対に行っては駄目だ。

あんな光景を見せ付けられた以上、誰でも分かる。


恐怖に震える手足を無理矢理動かしながら

私達はただ、生き残る為に進むことを選ぶ。

それしかないんだ、それしか……出来ない。


「……」


帰りの道中に何カ所か見る祭壇。

そこは総じて生贄を捧げろと書いてあって

そこに一緒に来てた仲間達が転がってた。

お腹に小さな刃物が刺さって死んでる子が多い。


「……何でこんな」


祭壇の近くに血以外の痕跡がある。

何かを吐き出したような異物が転がってた。


「急ごう」

「……ごめんね、ごめんね」


ナナちゃんが泣きながらその亡骸に謝罪をする。

私もその子に触れ、あまりにも冷たい体温に恐怖した。

……見たく無い、触れたくない、

知りたくない、感じたくない。

私なら逃げる、絶対に逃げる、恐怖で逃げ出す。

でも、ナナちゃんは……逃げなかった。

その子の手を握って、涙ながらに謝罪をする。

私には出来ない……恐すぎて、私には……


「ナナちゃん」

「うん、行かないと……

 ごめんね、連れて行けなくて……」


最後の謝罪の後、ナナちゃんは私の方に来て

すぐに私の左手を両手で掴んでくれた。

暖かい……ナナちゃんの暖かい手が

私達は生きてるんだって、教えてくれる。


「暖かいね……リンちゃん」

「うん、ナナちゃんも……暖かい」

「……生きていこうね、絶対に」

「うん」


道中目に入る仲間達の亡骸を見て

私達は生き残る覚悟を決めることが出来た。

……頑張らないと、折角助かったんだから。

頑張って、皆の分も生きていかないと……


「あ、眩しい…」

「出て来たね、外に」

「……うん」


仲間達の亡骸を見て、恐怖を感じながらも

私達は奇跡的に生き残る事が出来た。

絶対に死んでてもおかしくなかったのに

奇跡的に私達は助かったんだ。


……自分で手に持ってるこの剣。

確か祈りの剣だったね。

この剣のお陰で、私達は助かった。

……ありがとう。


「……これから、どうする?」

「ご主人様の屋敷に行っても……意味ないよね」

「うん……また酷い目に遭わされるだけ」

「……で、でも、帰らないと怒られるんじゃ」

「帰っても怒られるだけだと思う」

「そうだよね……私達だけで生きないと駄目だよね」

「うん」


もう、私達に居場所はないんだ。

ご主人様の家に帰っても怒られるだけだし

今度こそ殺されるかも知れない。


折角あの洞窟から助かったのに

またあの場所に行くのは絶対に嫌だ。

でも、私達だけで生き残れるのか分からない。

このままだとご飯が食べられない。


「どうしよう……ご飯とか、お金とか」

「うん、困るよね」


お金……お金……この剣を売ったらお金貰えるかな?

いや、駄目だよね、折角助けて貰ったのに

この剣は大事にしないと、私達の恩人だから。


「お金がないと大変だよね……ご飯食べるのに

 お金がないと駄目なんだよね?」

「うん、そうだよね」

「でも、どうやってお金貰うのかな?」

「……働いたら貰えるとか聞いた気がする」

「でも、どうやって働くのかな?」

「分からないけど……

 とにかく人が沢山居る場所に行こう」

「そうだね、そこで聞こう」


とにかく人が沢山居る場所へ行くべきだよね。

とりあえずこの剣は鞘に収めておこう。

誰かに当ったりしたら怪我させちゃう。


「えっと、人が沢山居る場所って何処かな」

「うーん……あ」


さっき戻したけど、すぐにもう一度引き抜いて

周囲をグルグル回ってみて、光る場所を見つけた。


「こっち行こう、こっち」

「あ、分かるんだ、その剣」

「うん、また光ったから」

「凄いね、その剣!」

「うん」


とっても凄い剣を見つけちゃった。

これで何とか人が沢山居る場所へ行ける。


「あ、でも私…水浴びしたい」

「そうだね」


ナナちゃんは私の血で汚れてる

私も血で汚れてるし洗いたいからね。

私達はまず水浴びをしておく


「キレイになったね

 服は目立たないから良いけど」

「うん、これなら大丈夫。

 それじゃ、行こう」


その後、再び剣の案内に従って進んだ。


「良い武器だな、おい」

「え!?」


沢山の男の人が出て来た。


「それに小さいガキが2人。

 良い性奴隷になるんじゃねぇか?」

「最近ご無沙汰だったとしても

 ガキに欲情するのはどうよ」

「へ、見るからにこのガキは親死んでるぜ?

 下手すりゃ、奴隷かもしれねぇな

 あんな布切れ1枚だしよ」

「持ち主が居るかも知れねぇじゃねぇか」

「居たとしても、どうせ気にしちゃ居ねぇさ

 俺達がどうしたって構わねぇよ」

「まぁそうだな、武器だけ妙に立派だが

 どっかで拾ったのか?」

「こ、来ないで!」

「ガキに何が出来るよ、大人しく掴まれ」

「リンちゃん……こ、恐いよ…」

「こ、こっちに来るなら、攻撃する!」

「剣持ってるだけあって、随分と勝ち気だなぁ。

 もう1人の方はビビってるのによ」


守らないと、ナナちゃんを守らないと!

倒さないと、この人達を倒さないと!

絶対に掴まったら酷い目に遭うんだ!

嫌だ、折角生き残ったのにそんなのは嫌だ!


「折角解放されたんだ……

 また酷い目に遭いたくない!」

「安心しな、気持ち良い事をしてやるからな」

「キモいな、お前は相変わらず」

「じゃあ、テメェは何もしねぇのか?」

「いや、俺もご無沙汰だったからな。

 ガキでも処理は出来るだろ」

「お前もじゃねぇか」

「小さかろうと穴は同じだからな。

 サイズが小さくなるだけだろ」

「そ、それ以上来るな!」


相手は5人……に、逃げられるわけない。

倒さないと私達は掴まる!


「じゃ、捕まえるか」

「う、うわぁあ!」


急いで攻撃をしたけど、避けられた!


「はは! やっぱ拾っただけだな!」

「活きが良いのもわるかねぇ!」

「うぁ!」


蹴っ飛ばされた、お、お腹が……痛い……


「リンちゃん!」

「おっと」

「は、離して! 離してよ!」


ナナちゃんがあの男の人達に捕まった。

そ、そんな、わ、私が弱いから、私が……


「友達の心配してる余裕はねぇぜ?

 まぁ関係ねぇか、お前ら2人は仲良く

 俺達の処理をして貰うからな」

「手足として使った方が良いんじゃねぇか?」

「こんなガキが手足として使える分けねぇだろ?

 奴隷として売っても足が着いたら面倒だから

 俺達で好きにした方が良いだろ?

 そう考えりゃ、性処理が1番だろ」

「まぁ、どうせ売っても大した価値ねぇだろうしな」

「離して! 離してよ! リンちゃん!」


男の人達がこっちに来てる。

このままだと、またあんな時間を過ごすことになる。

そんなの、そんなの嫌だ! いやだ、嫌だ……

折角助かったのに、解放されたのに!


「強くなりたい……強く、強く……

 皆を守れるくらいに私が強かったら……

 強かったら…」

「ガキが強くなれるわけがねぇだろ?」

「……これ以上、これ以上

 惨めな思いはしない! したくない!」


このまま諦めるわけには行かない! 

嫌だ! 諦めたく無い!

折角ナナちゃんと一緒に幸せになれる筈だったのに

こんな奴らにまた踏みにじられたくないんだ!

強くなりたい、強く強く! 誰にも邪魔されないくらい!


「私は……幸せになる為に強くなりたい!」

「あ?」


剣を構えると同時に、再び宝石が光った。

今度は1番上の黄色の宝石に赤い光りが混ざる。

宝石の色が変わると同時に、力が溢れてきた。


「う、りゃぁあ!」

「な! うぎ!」


さっきとは全然違う速度で動けた!

あの男の人が反応出来ないくらいの速度で移動できる!


「何だ! おい! ガキ相手に!」


男の人を斬ると同時に私は男の人を踏み台にして

次の男の人に斬りかかった。


「何だ! このガキ! さっきとちが!」

「私の! 私達の邪魔をするなぁ!」

「うぐぁ!」


男の人の左腕を斬り裂いた。


「この! がは!」

「うぁああ!」

「何だ! こい、ぐは!」

「お、おい! このガキがどう!」

「うらあ!」

「なげ、うが!」


最後、ナナちゃんを捕まえてた男の人に剣を投げ

左腕を貫いて撃破することが出来た。


「はぁ、はぁ、はぁ」

「な、なん……」

「もう、私達の前に出てくるな」

「わ、悪かったよ! もうしねぇ!」

「……消えるなら殺さない。

 消えないなら……ここで殺す」

「分かったって! もう消える!」


男の人に刺した剣を引き抜いてナナちゃんに近づく


「り、リンちゃん、怪我は…」

「大丈夫」

「が、ガキ……」

「……」

「分かったよクソ!」


男の人が倒れた他の男の人に駆け寄り

動けそうな人を起して

動けない人は抱えて何処かへ消えた。


「凄いねリンちゃん、こんなに強かったんだ!」

「私、こんなに強くないと思うけど……

 でも、助けられて良かった」

「でも、血が……」

「ただの返り血だから、怪我はしてない」

「また、水浴びしよ?」

「……そうだね、怖がられちゃう」


あの人達の返り血を流すために川へ向った。

そう言えば、あの後今度は2番目の宝石が光った。

どう言う意味があるのか分からないけど

光ってたら凄いのかも知れないって言うのは分かった。

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