不意の遭遇
1日中泣いて、泣いて、泣いて。
自分達の惨めさに打ちのめされても
私達の時間は進んでいく。
なら、私達は進むしか無いんだ。
打ちひしがれても、時間は進む。
待ってくれない、時間は決して。
涙を流すだけで幸せになれるわけじゃ無い。
涙を流し続け、その辛さを糧にして
立ち上がって進み続けなければ
私達は決して、幸せにはなれないんだ。
救われたんだ、助けられたんだ。
誰かが命を賭けて私達を救ってくれた。
家族だったり、ただの知り合いだったり
騎士だったり、色々な人達が
私達を救うために、その命を賭して戦い
その結果、私達の命が繋がった。
なのに、絶望に打ちひしがれて
全く歩むことが出来ないなんて冗談じゃ無い。
無意味な物にはしない、無駄な物にはしない。
私達を助けてくれた人達が無駄に死んだって
そんな結果には決してさせない。
「はぁ、はぁ、はぁ」
私達は再び歩むために、努力をする。
ボロボロの建物を再興するために
瓦礫を運び、修繕を続ける。
「良い? 最優先は寝床だ! 寝床!
安心して眠れる場所を急いで確保!」
「は、はい!」
私達は寝床を確保するために場所を空けていく。
私がデミ・ビーストに吹き飛ばされたときも
こんな風に瓦礫の撤去は再建をしてたけど
今回は規模が全く違うと言える。
建物は殆どがボロボロ、これは間違いなく
あのカイザーオーガが原因だと分かる。
「……ごめんなさい」
瓦礫を撤去したときに発見した男性の亡骸。
私は手を合せ、彼の冥福を祈る。
その後、震えながらその亡骸に手を伸ばす。
「待った、リンちゃん」
「え、エディー……」
「君が運ぶ必要は無い、僕達に任せて」
「……でも、私も」
「無理をしなくて良い、辛い事は僕達がする。
君達は寝床の準備をしてきて」
「……うん」
「寝床は西門側だよ」
「どうして西門なの? 中央じゃ?」
「中央は魔物が来るリスクがあるからね。
西門は損傷が無いし、城壁付近だから
比較的安全だって判断らしいよ」
「そうなんだ、分かった」
「頑張ってね」
「うん」
エディーに言われて、私も寝床の準備へ向う。
「リンちゃん!」
「ナナちゃん、それに……チカちゃん」
寝床を準備してる場所にはナナちゃんと
チカちゃんが居た。
2人は寝床の準備を手伝ってるようだ。
「チカちゃん、どうして」
「……私も頑張りたいって、思ったから」
辛そうな表情のままだけど
チカちゃんは少しだけ、前を見たんだ。
自分に出来ることを少しでもやりたいと
そう思って、この場に来たんだ。
「……一緒に、頑張ろう」
「うん」
私達は一緒に協力して、寝床の用意を始めた。
騎士の人達の指示に従って、必死に。
そんな時、門が開く音と同時に
沢山の金属音が聞えてくる。
きっと鎧の音だろう。
「何だよ、もう終わったのか」
「はぁ?」
不意に来た、嫌なくらいに見た鎧の集団。
私はその鎧を見た瞬間に
心の底から憎悪が溢れ出す。
その鎧は、私達が嫌なくらいに見てきた鎧。
最悪の記憶しかない、ウツギの花が描かれた鎧。
「ギフティーの騎士!」
反射的に私はナナちゃんを庇うように前に出る。
同時に騎士の何人かが私の方を見た。
「あ? 何の声だ?
お? 鎧を着たガキだと?
その鎧はバナージの鎧だな。
はは! 優秀な都市とか言われてたが
んだよ、こんなガキまで騎士が出来るような
低レベルな都市だったんだな!」
「何もやらない、何も出来ないクソみたいな連中が
バナージの悪口を言うな! このカス共!」
「あぁ? 随分な口を利くな。
生意気なガキだ、何睨んでやがる。
あ? 良い剣だな、何処で拾ったんだ?」
「お前達に言う必要は無い!」
「宝石が埋まった剣、お前みたいな貧相なガキか?
鎧的にてめぇ、バナージの騎士だが
普通じゃねぇな、その剣よこせ」
「渡すわけ無い! そもそもお前らなんかじゃ
私の剣は使えない!」
「はぁ?」
「この剣は私だけの剣だ、お前達に渡すもんか!
奪うつもりなら、絶対に抵抗する!
祈りの剣は、私だけの剣なんだ!」
「は、ガキに何が」
「なんのさわ、な! ギフティーの騎士!」
ギフティーの騎士が来たのに気付いた
バナージの騎士達が一気に動き
私達を庇うように前に出る。
「何だ、バナージの騎士」
「貴様ら、何故ここに居る」
「救援要請が来たから来てやっただけだ」
「おい、報告とかは無かったのか?」
「はい、何も。門の損傷も無く
安全な西門の見張りは
シャリーズの騎士に全て任せてました」
「災難だな」
私達の事を知ってるバナージの騎士達は
少しだけ冷や汗を流してる。
「どうした、何を焦ってる。
いや、そりゃどうでも良いか。
聞きたいことがあるんだ」
「何だ」
「お前らの後ろに居るガキ。
俺に生意気を言って来やがった。
それだけでも腹が立つが、何よりだ
俺はそのガキ、何処かで見た気がしてな」
「気のせいだろう」
「そうかい、まぁそれはさほど興味は無い。
だが、そのガキは俺らに暴言を吐きやがった。
折角来てやった俺らにその態度は何だ?」
「ふん、お前らに言われる筋合いは無い」
「……」
あの騎士は私の事が随分と気になるようだ。
私はこいつと会った記憶はない。
そもそも、あいつらの姿を思い出すつもりも無い。
仮にあってたとしても、忘れてるのは当然だ。
「ふん、気分悪くなったが、まぁ命令だ。
俺達も一応、テメェらに手を貸してやる」
「ほぅ、ギフティーの騎士にしては珍しいな」
「はん、レングラース様の指示だ、仕方ないだろ」
「……そうかい、なら瓦礫の撤去をお願いするよ」
「はん、そうかい。だがその前にだ
ソールティアスとシャリーズの代表は何処だ」
「……」
「おい、案内しろよ、手伝ってやるんだぞ?」
「はぁ、分かったよ」
バナージの騎士達は私達の事をよく知ってる。
だから、かなり嫌そうな表情を見せては居るけど
今はそれよりも、シャリーズを優先したんだ。
こんな状況だ、私だってギフティーは嫌いだ。
あいつらの事は腸が煮えくり返る位に嫌いだ。
でも、人手が足りないのは間違いない。
多少嫌でも、辛い思いをしてる人達を救うためなら
我慢するしか無いんだ。
「……り、リンちゃん……わ、私」
「大丈夫、もしもの時は絶対に守るから」
ナナちゃんは私に抱き付いて震えている。
当然だ、ナナちゃんだってすぐに理解出来た筈だ。
あの騎士達がギフティーの騎士だって。
ギフティーの騎士は私達に取っては
どうしようも無いトラウマだ。
当然、ナナちゃんも恐怖するのは当たり前で
震えてしまうのは当たり前だった。
「……安心してくれ、ソールティアス様も
あいつらが君達に接触しないように
細心の注意を払ってくれるはずだ」
「……うん、分かってる。仕方ない事。
人手が足りないんだ、例えあいつらでも
シャリーズの為なら、仕方ない」
「ごめんね、2人とも」
騎士達は私達に謝罪をしてくれた。
必要無いのに、紳士に頭まで下げて。
あいつらとは全然違う。
やっぱり、バナージは良い人達が多い。
私達も接触しないように動こう。バレたら不味い。




