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救われた命

怪我人の治療を完了させた。

かなりの人数だったけど、何とかなった。

次は復興作業の手伝いをしなきゃ。


「よし、では次は復興作業だな」

「うん、でもソールティアスさん、寝てない」

「大丈夫だ、体特殊属性魔法を使えば

 不眠で動くことが出来るからね」

「……あ」


不眠の魔法も体特殊属性魔法だったんだ。

でも、体に影響を与えるならそれしか無いか。


「でも、それは後で凄く眠ることになる」

「そうだね、だが問題は無い。1日程度なら」

「多分それ、1日で終わらないと思う」

「……まぁ、そうだね」


勢いで行動しようとしてたからなのか

私が言ったことに気付いて無かったみたいだ。


「はぁ、私の悪い癖だな。

 よくグラースに注意されてるんだが」

「グラースさんなんだ、騎士団長よりも。

 実はグラースさんの方が偉いの?」

「あぁ、階級で言えばエースの方が上だが

 実際はグラースの方が力があるんだ。

 彼は元騎士団長でね。


 先代の時から仕えてくれてる騎士なんだ。

 今の騎士団長は当時の副団長でね。

 グラースが私のせいで片腕を失って

 自らの意思で副団長になったんだ」

「え? ソールティアスさんのせいって……」

「あ、いや、はは、気にしないでくれ」


私の言葉を聞いたソールティアスさんが

焦った表情を見せて、隠そうとしてるのが分かる。

……でも、エディーも教えてくれなかったし

グラースさんが知らせないように

知ってる人にお願いしてるのかも知れない。


さっき、ソールティアスさんが失言したのは

多分、寝不足が原因だと思う。

寝てないからついつい口が滑ったんだろう。

このまま聞きたいような気もするんだけど

本人が知らせないようにしてるなら

あまり深く聞くべきじゃ無いだろう。


「とにかく今は寝るとしよう。

 明日からは本格的に動くことになるだろうから

 君達もしっかりと休むように」

「分かった」


ソールティアスさんの指示を聞いて、今日は休む事にした。

その道中、私はチカちゃんに出会った。

チカちゃんは私に気付き、小さく俯いた。


「……その」

「ごめんなさい」

「え?」


不意にチカちゃんに私は謝罪される。

何で私が謝罪されたんだろう。

私はチカちゃんのお母さんを救えなかったのに。


「ごめんなさい……リンちゃん、私」

「謝るのは私の方……ごめんなさい

 私はあなたのお母さんを……救えなかった」

「謝らないで……うん、分かったから」

「え?」

「お母さんと……どうして最後、お話しできたか。

 本当なら、私はあのまま……

 お母さんと会話も出来ないで

 いや、それどころか、私は魔物に食べられてた。

 リンちゃんが、皆が来てくれなかったら、私は」

「……」

「ごめんなさい!」

「え?」


不意に私はチカちゃんに抱きつかれる。

チカちゃんは私の耳元で泣いてる。


「わ、私……リンちゃんに酷い事を言った……

 お、お母さんを助けてくれなかった癖にとか

 辛い筈のあなたを叩いて、酷い事をして……

 八つ当たりって、が、頑張ってくれたのに

 や、八つ当たりして、あなたの、あなたのお陰で

 お、お母さんと最後、お、お話しできたのに。

 わ、私、私……私、あ、あなたを……叩いて!」

「私は叩かれて当然なの、

 あなたのお母さんを救えなかった。

 もう少し速く来てたら、もう少し私が凄かったら」

「違うの、あ、あなたは悪い事なんてしてないの!

 悪いのは……魔物なの……あなたじゃ無いの!

 いや違う、悪いのは私だ、私なんだ! 私が悪いのに!

 私が、私が悪かったのに……もっと私、が、速く……」

「……」

「私が……チップを探したから悪いの……」

「チップ……」

「私達が飼ってた犬、私、チップが……」


……犬、この子はお母さんの他にも家族を失ったんだ。

私達もペロを飼ってるから……分かる。

もしペロが見付からなかったら、きっと私達も

ペロを見つけるために必死になるだろうと思う。


「分かるよ、私もきっと探す……」

「チップはわ、私達を逃がそうとしてくれて。

 そ、それなのに私は……ち、チップを探して……

 お母さん、い、急ごうって言ってたのに!

 言うこと聞かなくて、だ、だからお母さんが死んで……

 私が、私が悪いの、私が、私が全部悪いのに!

 なのに、なのに! 私はあなたに……八つ当たりして。

 私は……私は! 私は! ごめんなさい、ごめんなさい」

「……大丈夫、謝らなくても良い……チカちゃん。

 八つ当たりしても良い、私を怨んでも良いの。

 でも……でもね、し、幸せにならなきゃ……」

「……私はし、幸せになんて……なれない、ならない。

 お母さんを失って、チップも死んじゃって……

 お父さんはもう居ない、私にもう家族は居ない……

 私はもう1人なんだ……私なんか、い、居なければ。

 私が居なければ、お母さんは助かってたのに……」

「チカちゃんが居たから、きっとチカちゃんのお母さんは

 幸せだったんだ、チカちゃんのお母さんは最後まで

 チカちゃんを愛してるって……そう、言ってた。

 辛い時も最初にチカちゃんの事を心配してた。

 それが証拠……だから、チカちゃん。

 とても辛いだろうけど、諦めないで。

 自分が居なければなんて、言わないで」

「う、うぅ、うわぁああああ!

 ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい!

 私、私……私! 私は! う、うわぁあああん!」


チカちゃんは私に抱きついたまま、大きな声で泣いた。

私もチカちゃんと一緒に涙を流す。

チカちゃんと私は……一緒だ、そう、一緒なんだ。

私も、私が居たせいで

お母さんを殺してしまった。


私が捕まって、何も出来なかったから

私のお母さんは、きっと殺されたんだ。

そして、チカちゃんもそうだ、私と同じだ。

逃げなかったから、

そのせいでお母さんを死なせてしまった。

でも、それはチカちゃんが悪かったわけじゃ無い。

大事な家族を失いたくないと思うのは当然なんだ。


例えワンちゃんでも、チカちゃんからすれば

そのワンちゃんは大事な家族で、失いたくないって。

そう思うのは当然で、助けたいと思うのは当たり前だ。

その結果、自分のお母さんまで殺してしまって

チカちゃんはとても辛くて、悲しくて。

自分が悪くないって思いたいから、私に怒って。

それは当然だ、当然だ、自分のせいなんて思いたくない

理解したくない。でも、チカちゃんは……チカちゃんは

自分が悪いって、そう……受入れる事にしたんだ。


それはきっと凄い事だ、とても凄い事だ。

理不尽に出会って、自分が悪いって思いたくないのに

それなのに、自分が悪いって受入れて。

きっとそれは、先に進むために必要なこと何だ。


チカちゃんはただ泣いていた、ひたすらにひたすらに。

自分を責める心に苛まれて、泣いていた。

きっと幸せだった記憶を思い起こして、そして泣いてる。


「……」


私達の泣き声を聞いて、色々な人達が来た。

だけど、誰も声を掛けることは無かった。

涙を流してる人も沢山居る。そう、沢山。

チカちゃんの泣き声を聞いて

同じ様に、幸せだった記憶を思い起こし

2度と戻らなくなってしまった命を思い出して。

でも、私達は……私達は生き残ったんだ、私達は。

だから、生かされた私達は、幸せにならないと。

そう、幸せになってみせる、幸せに。

私が殺してしまったお母さん。

きっとお母さんも私の幸せを願ってくれた筈だ。

だから、私も……先に進みたい。


「うわぁあああん! お母さん、お母さん!」

「……」


でも、今は……涙を流させて欲しいの。

辛いから、目一杯涙を流して、流し続けて。

そして立ち上がるんだ、幸せになる為に。

その時のために、今は泣くんだ。

自分の無力さを思い出しながら

もう2度と、こんな思いをしないと

心に誓うために。

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