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一生のトラウマと共に

回復の魔法で私は色々な負傷者を助けた。

沢山の人に感謝して貰った。

でも、救えない命も多くて……

当然、チカちゃんには睨まれたままだった。


「……」


いつ怒られるか分からないし

殴られるかも分からない。

そのどっちも、私は受けるつもりだ。

私が何でも治せるような魔法使いなら

きっとチカちゃんのお母さんは救えた。

だけど、私にその力がなかったから……


祈りの剣があの時、点滅してたら

もしかしたら、助けられてたかもしれない。

だって、ナナちゃんと自分の怪我を治した時は

凄い速度で怪我が治ってたからだ。


今回は駄目だった、骨折を治すことも出来ない。

大きな怪我を瞬時に癒やすことも出来ない。

血を止めたり、動ける程度にまで回復させたり。

それ位は出来たけど、寝たきりの人を

すぐに動かせるようには出来なかったし


足が骨折した人を一瞬で癒やすことも出来なかった。

祈りの剣が力を貸してくれないと

あの時みたいな回復は出来ないんだ。


「私が願ったとき、すぐに力を貸してくれれば……

 いや、違うのかも……私、もしかして薄情なんじゃ」


もしかしたら、私が……私の祈りが足りなかった?

ナナちゃんを助けたときは、心の底から救いたいって

縋る思いで……だから、力を貸してくれて

凄い速度で回復出来たのかも知れない。


でも、今回は……私は本気で助けたいと思ったけど

もしかしたら……本当は、そこまで思って無かったんじゃ。

分からない……分からないよ、どうして……


「リンちゃん」

「あ……な、ナナちゃん」


不意に握られた手に驚いて振り向く。

そこには辛そうな表情をしたナナちゃんが居た。

ナナちゃんは色々な子供達の心を支えた。

あの短い間に、家族を失ってしまった子供達に

ほんの少しだけ、希望を抱かせることが出来ていた。

それに対して私は……何も出来てない。


色々な人にありがとうと感謝はされた。

涙を流してくれた人も居た。

でも……何も出来なかった人も沢山居たんだ。

私は駄目だ、私は……私は……

自分に出来た筈のことも出来ない。


「私はナナちゃんみたいに誰かの心を救えない……

 私は誰かの傷を治すことしか出来ないのに

 私には治すことが出来ない傷が多すぎる。

 私は役立たずだ……」

「そんな事無いよ! リンちゃんのお陰で

 助かったって人は、沢山居るもん!」

「でも、救えなかった人も沢山居る。

 そう、沢山……

 ナナちゃんを助けたときは出来たのに

 今は出来ない……出来ない事が多すぎる」


色々と出来るようになったはずなのに

私は出来ないことがあまりにも多い。


「そんな事無いよ、私は辛い思いをした人の

 お話しを聞いて上げる事しか出来ないもん」

「そんな事無いよ、ナナちゃんは辛い思いをした人の

 お話を聞いて、その人を元気にする言葉も伝えられる。

 ナナちゃんは色々な人の心を救ってるんだ」

「それなら、リンちゃんだって色々な人の

 怪我を治して助けてあげてる。

 私とは違って、本当の意味で助けてるんだ」

「私が治せる怪我は、どうせその内治る怪我だけ。

 助からないような怪我を治すことは……出来ない」

「リンちゃんのお陰で助かった人は沢山居るよ!

 色々な人がリンちゃんにありがとうって言ってた!

 中にはリンちゃんが居なかったら死んでたかもって

 そんな人達だって居たもん!」


ナナちゃんは必死に私を励ましてくれようとしてる。

でも、私は自分をどうしても許せなかった。

私が駄目だから、全然魔法を使いこなせないから。

ナナちゃんや自分の怪我を治したとき見たいに

完璧に魔法を使えてたら……

助けられてたかもしれないのに。

私が救えるのは、私が居なくても大丈夫だったような

そんな、軽傷だった人だけだ。


「……その人は私が居なくても助かってた。

 私にしか救えない人なんて、何処にも居ない

 私なんか居なくても……」

「どうしてそんな事を言うの!?

 リンちゃんは頑張ってる!

 色々な人を助けて、色々な人の怪我を治して!

 色々な人を守ったのに! どうして自分なんかって!」

「私があの時みたいに魔法を扱ってたら!

 救えた命が沢山あった!

 でも、私が……私が駄目だったから!

 私が弱いから、駄目だから! 本当に助けが必要な人を

 私は救えなかったんだ!

 私が駄目だから死んだ人が沢山居る!」

「そんな事無い! リンちゃんは凄いんだ!

 誰よりも凄いんだから!」

「そんな訳無い! 私は駄目なんだ! 役立たずだ!

 私のせいで沢山死んだ! 私の、私のお母さんだって!

 きっと私のせいで死んだ! 私が邪魔だったから殺された!

 私が居なければ、お母さんはきっと生きてたのに!」

「リンちゃんが居なかったら私は死んでたし!

 もしかしたら、ここの人達も死んじゃってたかもしれない!」

「そんな訳無い、私が居なくてもエディー達が居る。

 エディー達が守ってたに決ってる!」

「リンちゃんは!」

「待った!」


ナナちゃんが何かを言おうとするけど

すぐに私達を静止する声が聞えてきた。

私達を静止したのはエディーだった。


「2人とも、そうやって怒鳴らないで」

「でも、でもエディーお姉さん、り、リンちゃんが……

 自分は要らないって、や、役立たずだって。

 そ、そんな訳無いのに!」

「私のせいで色々な人が死んだんだ……

 チカのお母さんも、私が凄くなかったから……

 あの時みたいに怪我を治せれば助けられた筈なのに……」


だって、あの時のチカのお母さんが受けてた傷は

私があの時受けてた傷よりは絶対に浅かったんだ。

それなのに、私は救う事が出来なかった。

祈りの剣が力を貸してくれなかったから。

どうして力を貸してくれなかったのかを考えれば

私が本心では救おうと思って無かったからって……

そう、考えるしか出来ないんだ。

あの時の私は本気で助けたいと思ってた、けどきっと

心の奥底は救うつもりなんて無かったんだ。


「……リンちゃん、自分を責めないで。

 あれは君が悪かったわけじゃ無いんだ。

 体特殊属性魔法では深い致命傷を治すことは出来ない」

「そんな事無い! 私は……私の怪我は治せたんだ!

 ナナちゃんの怪我だって治せた!

 骨折だろうとすぐに治せてたんだ!

 でも、今の私にはそれが出来ない……

 祈りの剣が力を貸してくれれば……治せた筈なんだ。

 でも、力を貸してくれなかった……理由はきっと

 わ、私が心の奥底では救うつもりが無かったからだ。

 本気で救いたいって、そう思ってたはずなのに……

 きっと本心の本心は……救うつもりなんて無かったんだ」


そうに違いない、それで間違いない筈なんだ。

だってそうじゃ無いと、

あの時、ナナちゃんを救えた理由が

全く分からなくなる。


「……祈りの剣がどんな効果を持ってるのか分からない。

 君が本心で思った事を助けてくれるのかも知れない。

 でも、剣は君の力を引き出すだけで

 君が出来ない事までは出来ないのかも知れない」

「それだったら、私がナナちゃんを救えた理由が分からない。

 私はあの時、骨が何カ所も折れてたナナちゃんを

 すぐに治せたんだ。

 祈りの剣の力じゃ無いなら、何だって言うの?」

「それは分からない。

 僕は祈りの剣がどんな物なのか知らない。

 謎ばかりの剣だからね、その剣は。

 宝石が点滅してる時以外は

 効果が発揮できないのかも知れない。

 だから、君が悪いんじゃ無くて、

 剣の効果が発揮できなかっただけなのかも知れない」

「……」


私もこの剣の事は良く分からない。

点滅してるとき以外効果を発揮できないなら

どうして今、私は魔法を使えてるんだろう。


「ただ、君は自分に出来ることを全力でしたんだ。

 確かに救えなかった命は沢山ある。

 それは、僕達も同じだ、救えなかった命は多い。


 でも、君は自分に出来る事を全てしたんだ。

 だから、自分を責めないで欲しい。

 君は頑張た、それを証明してくれる相手は沢山居る。


 僕もそうだし、君の親友だってそうだ。

 ソールティアス様も君を責めたりはしないし

 君が頑張ったことを知ってる。

 この避難所で君が救った人達も

 君が頑張ったことを証明してくれる。


 君が居なければ救われなかった命は多いんだ。

 だから、自分を責めないで、リンちゃん」

「私が居たから、お母さんは殺されたんだ」

「お母さんが命を賭けてでも君を守ったのなら

 君のお母さんは君が生まれてきてくれて

 本当に嬉しかったに違いない」

「……」

「リンちゃん、私もリンちゃんに出会えて

 本当に嬉しかったんだもん。

 私が……生きてるのは、り、リンちゃんのお陰だし

 わ、私が今まで頑張って来られたのも

 リンちゃんのお陰だもん……だ、だから」

「……」


ナナちゃんとエディーが私を励ましてくれる。

だけど、私の心の中には後悔が残る。

私が凄ければ、私が居なければ……

救えた命がもっと沢山あったし

私が居なければ、お母さんは殺されなかった筈だ。


「私が居なければお母さんは死ななかったはずだ。

 私がもっと凄ければ、もっと沢山の命を救えたはずだ」

「……リンちゃん、確かに君がもっと凄ければ

 もっと沢山の人を救えたかも知れない。

 でもね、君が居なければ少なくとも、

 君が今日救った沢山の人が死んでいた」

「……」


エディーに言われて、少しだけ驚いた。

……そう、私が居なければ沢山の人が……


「いや、私が居なくても……私が治せるのは

 所詮、死なない程度の怪我の人だけ」

「そう思ってるのは君だけだ。

 君が居なければ死んでたであろう人は沢山居る」

「……」

「今回の襲撃は僕達にも大きなトラウマになった。

 でも、必ず再び前を向けるようになる。

 リンちゃん。君は自分がもっと凄ければ

 救えた命が沢山あったと、そう言ったね」

「う、うん」

「なら、もしまた今回の様な事があったときに

 もっと沢山の人を救えるように前を見よう。

 ここで自分を否定して、君が救えるかも知れない人を

 更に減らしてしまうのはあまり良い事じゃ無い」

「……」


私は……もっと凄くなれるのかな……

こんな駄目駄目な私が……今より凄く……

自分の小さな掌を見て……頼りないと感じる。


「すぐに前を向くのは難しいだろう。

 うん、それは僕達だって難しい事だ。

 だからきっと、君だけでは無理かも知れない。

 でもね、君達なら出来る筈だ」

「……達」

「あぁ、君にはナナちゃんが居る、僕も居る。

 そして、君達を娘の様に思ってる騎士達が居る。

 僕達は君達に出会えて良かったと、本気でそう思ってる。

 だから、自分を貶むのは止めるんだ、リンちゃん」

「……」

「君が君を貶すと、僕達も悲しい」

「うん……私も悲しい、

 リンちゃんが貶されるのは嫌だ。

 例えリンちゃんがリンちゃんを貶したとしても……」

「……」

「私もいつか、誰かを治せる魔法を使いたい。

 だから、私も頑張るよ、リンちゃん」


ナナちゃんが私に顔を近付けた。

ナナちゃんの目には大粒の涙が見える。

同時に、ナナちゃんの瞳に鏡の様に映る

情け無い顔をした私も見えた。


「一緒に……が、頑張ろうよ……り、リンちゃん……」

「……うん、うん……あ、ありがとう……ナナちゃん」


ナナちゃんの表情を見て、私も限界で涙が溢れ出す。

そして、お互い抱きしめ合って大きな声で泣いた。

自分達の不甲斐なさを目の当たりにして

自分達の情けなさを受入れて。


私達はきっとこのトラウマを見続けるだろう。

力が足りずに救えなかった多くの命を思い出して

その度に折れそうになって。

でも、2人で一緒に泣いて、そして、前に進むんだ。


もう、こんな思いをしたくないから

もう、こんな思いをさせたくないから

もう、誰にも辛い思いをして欲しくないから。

私達はこのトラウマを思い出し続けて

その度に糧にして、先へ先へ……前へ前へ……

もう2度と、こんな思いをしないために……諦めない。

もう諦めない、諦めない、諦めたく無い。

私達は1人でも多くの人を救うために……諦めない!

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