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避難所の災禍

避難所に近付けば近付くほどに

悲惨な光景は酷くなってるように思えた。

沢山の亡骸が転がってるけど

その亡骸は決して、市民の物ではない。

倒れてるのは騎士だ、鎧を着てる。

腕が粉々になってる騎士も居るし

脚がグチャグチャになって死んでる騎士も居る。

騎士の殆どは武器が完全に砕かれてるし

ただの魔物じゃ無いのは明確だった。


「ひ、避難所は……こ、この先……なのに」

「いえ、まだです。悲観的に考えないで」

「ビフ……い、生きてて……どうか、お願い」

「ぐぎゃぁああ!」


大きな雄叫びがしばらく先から聞えてきた。


「急ごう!」

「うん!」


私達は急いでその叫び声が聞える場所へ進む。

そこには大量のゴブリンやリトルオーガの死体。

消えてないと言う事は、ついさっき死んだ個体だ。


「何だ!?」


沢山のリトルオーガやゴブリンが弾き飛ばされ

首を180度回転させて死亡して消えた個体。

上半身だけの個体が飛んで来たりもした。

そして見えてきた大きめの屋敷。

壁は壊され、既に中に侵入されてるが

かなり図体のデカい魔物だけは入れてない。


「カイザーオーガ!」

「カイザーオーガ?」

「オーガ種の最強の個体だ!

 その名の通り、オーガの中で最も危険であり

 最も脅威とされる最強の個体!」

「ぎ、がぁあああ!」


カイザーオーガが私達に気が付き、大声を上げる。

そして、私達の方へ向ってきた。

動きが速い! あの巨体でなんて速度!


「君達は先へ! 避難所の安否を確認!」


その指示と同時にソールティアスさんが剣を抜き去り

一瞬の間に間合いを詰め、カイザーオーガの掌を断った。


「速い!」


私達は見えなかった、でもカイザーオーガは反応してた。

ソールティアスさんは掌を両断したわけだけど

本来は首を狙った攻撃だったんだと思う。

だけど、カイザーオーガはソールティアスさんに反応して

ソールティアスさんを捕まえようと手を伸ばしたんだ。

でも、その掌を両断したという事だ。


「カイザーオーガは星5の騎士でも苦戦する化け物だ!

 ここは私が対処する! 君達は急げ!」

「はい!」


応援をしたい考えはあるけど、それは出来ないと察せた。

最初の攻防だけで分かる。私達とは次元が違う!

あの大きな化け物はソールティアスさんでしか対処出来ない。

悔しいけど、足を引っ張る訳にはいかない!


「急ごう!」

「うん!」


私達は一気に屋敷の中へ入っていく。

そして、救助した人達の案内に従って

非常時の避難所へ道案内して貰う。


道中、色々な魔物が出てくるけど対処した。

戦った感覚だけど、リトルオーガの強さは

デュラハン程では無いけど

デュラハンよりも、少し弱い程度の強さだ。

星で言えば、3相当の騎士じゃ無いと戦えないレベル。


シャリーズにも対処出来る騎士は居るだろうけど

この大群を相手に防衛戦は苦労してるようだ。


「こっち、こっちだよね!」

「う、うん」


周囲に倒れてる騎士と思われる亡骸。

その亡骸は全て首が無い状態だった。

明らかに不自然、明らかに異常。

何か居る、カイザーオーガの他にも何か!


「キハ! キハハ!」

「ッ!? きゃう!」

「な!」


不意に聞えてきた笑い声に反応して視線を向ける。

そこには緑色の女の人が一瞬だけ見えたけど

即座に間合いを詰めてきて攻撃をしてくる。

私は咄嗟に反応して、その攻撃を防いだ。


「キハ! 最高!

 強者の首! 強き女子の首! キハハ!」

「くぅ!」


その影は私に対して執着に攻撃してくる。

何とか反応して、私はその攻撃を受ける。


「リンちゃん!」

「クソ! あれが原因か!」

「良い反応だ! 良い反応だ小娘!

 良い! 実に良い!

 お前の脳髄はさぞ美味だろう!」

「うぅ! この!」

「キハハ!」


反撃をしようと思ったけど、私の堪が駄目だと呟く。

嫌な予感は大体当る、私は攻撃を止め、下がる。


「キハ! 惜しい!」


見えない程の速さで振われた一撃。

後方に下がったことで当らなかったけど

あのまま攻めていたら、私の首は断たれてた!


「エディー! お前は非戦闘員の護衛を続けろ!」

「え!? ランバースさん!?」

「指示はお前が引き継げ! 俺はリンと共に

 あのクイーンゴブリンを排除する!」

「……分かりました、ランバースさん。

 リンをお願いします!」

「あぁ、任せろ」


このままだと私はやられる!

デミ・ビーストとは比べものにならないくらい強い!

動きが速いし、たまに異常な速度の攻撃が飛んで来る!

攻撃の予備動作が分かれば対処出来るけど、私じゃ!


「キハ! 死ね!」

「駄目……いや、駄目じゃない!」


不味いと一瞬思った、でも冷静に考えれば

別にそんなに焦ることじゃない、狙いは分かる。

私は咄嗟に剣で攻撃を防ぎ、流した。

狙いはやっぱり首だったから、何とか対処出来た!


「キハ! む」

「ふん!」

「ぎ!」


目の前から駆けてきた黒い鎧の騎士が

私へ向って振り下ろされた剣を弾いてくれた。

この人はランバースさん! 星5の騎士だった筈!


「リン、共に戦おう」

「ランバースさん……あ、ありがとう!」

「邪魔邪魔! 強き男の血肉も興味ある

 でも、今はさほど興味無い!

 そこの小娘の脳髄が欲しい!」

「我々の大事な娘の1人だ、

 貴様のような狂った魔物に

 大事な娘をくれてやる筈も無かろう!」

「ランバースさん」


私、そこまでランバースさんと会話してなかったけど

大事には思ってくれてたんだ。

大きくて黒くて、何だか恐くて近付かなかったけど

やっぱり良い人ばかりだ。


「キハ! 関係無い! お前殺して

 その娘の脳髄を食う!」

「ふん!」


ランバースさんとあの緑色の女の人が戦い始めた。

定期的に私に向って飛んで来る攻撃を

私は避けながら、反撃の隙を作るために立ち回る。


「キハ! 人なのに強い!」

「無論だ、伊達に鍛えてきた訳じゃ無い!」

「ぎぎ!」


あの緑の女の人が放った攻撃を切り上げて

大きな隙を作り、一瞬で間合いを詰めての一撃。

相手が並の魔物ならこれで決着だったかも知れないけど

あの緑はその攻撃を辛うじて避けて

ランバースさんに追撃をしてきた。


「っりゃ!」

「ギキ!」


私は即座に動き、ランバースさんの

股下をスライディングで通って剣を伸ばした。

小さい体を最大限利用した不意を突いた立ち回り。

この攻撃に反応が出来なかった緑の女の人は

私の一撃を腹に受けて、血を出した。


「見事!」

「がぎ!」


同時にランバースさんが剣を振って攻撃する。

緑の人はギリギリ反応して、その攻撃を防ぐも

大きく距離を取らされ、隙を晒す。


「それ!」


今度は私が矢を1本投げる。


「が!」


連続の攻撃となり、体勢を立て直せてない緑は

私が投げた矢を脚に受けて、再び怯む。

その隙を見逃さず、ランバースさんが接近した。


「キハ! キハハ!」

「く!」


だけど、ランバースさんの攻撃よりも先に

あの緑は動き、防御では無く攻撃を狙った。

咄嗟に反応したランバースさんが

その攻撃を剣の持ちでで受けて攻撃を止めた。


でも、勢いが相当だったみたいで、壁にぶつかる。

そのままランバースさんに追撃をするかと思ったけど


「キハハ! キハハハハ!」


狙いは私だった、例え有利な状況だったとしても

欲望を優先して私を狙ってきたんだ。

だけど、その行動は間違いなく失敗!


「ふん!」

「キハ!」


私は動ける状態だ、緑の攻撃を剣の腹で受け止め

逆方向の腹を腕で押すことで、両手で受け止める。

同時に掌は緑色の方に向けてる。


「キハ! し!」

「死ぬのはお前!」

「きふぁ!」


次の攻撃が来るよりも先に、私の魔法が発動した。

ナナちゃんほどの破壊力はないけど威力は十分。

私の攻撃は緑の頭部に直撃し、大きく吹き飛ばした。


ナナちゃんの火力なら、きっと頭を粉砕できてた。

やっぱり、私の魔法じゃ吹き飛ばすのが限界だ!


「き、は、キハハハハ!」


炎に包まれながらも

あの緑は私へ追撃を仕掛けようとしてくるけど


「欲というのは必要かも知れないが

 貴様ほどの欲ならば間違いなく邪魔だな」

「キ……」


大きな隙が出来た緑をランバースさんが見逃すはずも無く。

即座に緑の首を両断した。


「どうだ、貴様がやって来た事をそのまま返された気分は」

「キ……ィ……ハ」

「いや、喋れるはずも無いか」


そのまま緑は地面に倒れ、消えていった。


「リン、大丈夫だったか?」

「見ての通り、ありがとう、ランバースさん」

「いや、俺も押されてしまった。

 君を危ない目に合わせてしまったこと、謝罪する」

「大丈夫、見ての通り無傷だから、急ごう」

「そうだな、避難所が不安だ」

「私も不安、大丈夫だと良いけど」


私達は急いで避難所へ向った。


「よし、避難所は大丈夫だったか!?」

「ランバースさん! はい、見ての通り被害はありません!」

「良かった、では君達はこのまま避難所の防衛を。

 私はソールティアス様と合流し」

「いや、その必要は無い。カイザーオーガは仕留めたからね」

「ソールティアス様!? ふふ、流石ですね」


全く疲れた様子がないソールティアスさんが

避難所に姿を見せ、小さくため息をついた。

避難所まで被害が出て無くて安心したんだろう。


そんなソールティアスさんの元に

2人の男の人と、1人の女性が近付いてきた。

3人とも風貌から貴族なんだと予想出来た。


「本当に助かりました、ソールティアス様。

 あなた様のお陰で、民衆達は」

「いえ、お礼は必要ありません。

 我々があと少し速く到着していれば……

 ここまでの被害になってるとは思わず、申し訳ありません」

「いえ、あなた達のお陰で数多の命が救われました。

 ですが、まだ都市内には魔物が多く」

「えぇ、理解しております。殲滅はお任せください。

 この場には、我がバナージが誇る精鋭を

 防衛として配備し、私は魔物殲滅を開始しようと思いますが

 構いませんか? エリザード殿、バード殿、レディオン殿」

「迷惑を掛けます、ソールティアス殿」

「シャリーズの騎士もご自由にお使いください」

「そうだな、少しでも速く奪還を叶える為だ。

 ソールティアス殿に任せよう」

「承知しました、では、私はこれで」


3人との会話の後、

ソールティアスさんは一部の騎士を引き連れ

そのまま避難所出口へ向った。


「リン、ナナ、君達はここで待機しておいてくれ。

 リンはその間、負傷した民衆や騎士の手当をお願いする。

 君の回復の魔法なら助けになるだろうからね」

「うん、任せて」

「ナナ、君は子供達の心を癒やしてあげるんだ。

 君にしか出来ない事だろう。傷付いた子供達の

 心を支え、寄り添うことが出来るのはね」

「うん! 皆の思いを聞いて、支えてみせる!」

「頼んだよ、2人とも」


その言葉の後、ソールティアスさんは避難所を後にした。


「あ、貴族の人。負傷した人の手当をします」

「魔法を使えるんだね、君は」

「はい、使える……あ、使えます」

「無理に敬語を使う必要は無いよ」

「あ、はい……じゃ、じゃあ、手当てします」

「ありがとう、負傷した人々はこっちだ」

「ん」


貴族の人達に案内されて、怪我をした人達を治す。

その間にナナちゃんは子供達を励ましてた。

私達は私達に出来る最大限のことをする。

外はソールティアスさん達に任せよう。


その後、何時間も回復の魔法を使ったけど

やっぱり治せない人がどうしても出て来た……

必死に手当をしても、そのまま死んでしまった人が多い。


私がもっと凄ければ……救えたはずなのに、私が……

自分の頼りない小さな手を見て、

心の底から情け無いと、そう思った。


この程度の事でしんどいと感じてる自分も不甲斐ない……

もっと辛い人や怪我をした人が居るのに……

魔法を数時間程度使っただけで……

私は本当に……役立たずだ。

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