当たり前の1日
ナナちゃんはペロを気に入って
今日も一緒に散歩をする事になった。
騎士見習いとして任務をした後だから
私達は少しだけ薄暗くなってる時間に
2人で揃って散歩となった。
「ワンワン!」
「あはは!」
エディーは今日、仕事が残ってたらしい。
バナージの中であれば安全だろうと考えて
今日は一緒には回ってない。
私達の目的はペロのお散歩と同時に
今日の晩ご飯の材料を買うこともあった。
「おっと、ナナちゃんリンちゃん元気そうだね」
「うん! 元気だよ!」
お散歩コースが一緒で
いつもワンちゃんを散歩してるおばさんと会う。
ペロはそのワンちゃんと仲良く遊んでた。
「この子達は仲が良いねぇ」
「うん」
おばさんが言うには、散歩コースでは
今まで他の犬が来たことは無かったらしい。
特にこの時間ではほぼほぼ遭遇の機会も無く
ペット事情も、犬よりも猫の方が人気らしくて
お散歩仲間も殆ど居なかったらしい。
「それじゃあね、2人とも、また明日」
「うん! また明日! おばさん!」
「……ま、またね」
少しだけ抵抗を覚えながらも
私もナナちゃんと同じ様に手を振った。
やっぱりまだ慣れない。
そろそろ慣れれば良いのに、私は本当に駄目だ。
「よーし、着いたね! 八百屋さん!」
「うん」
「いらっしゃい」
いつもの八百屋さんに到着した。
いつも通り、ペロのリールの紐を
近くにある木に括った。
「今日は何を買うんだい?」
「うん、ちょっと待っててね、リンちゃん。
今日は何を作る予定だったかな」
「ネギハンバーグ」
「ネギハンバーグ?」
「うん、ネギを沢山入れたハンバーグ。
その中にうどんの麺を入れて食べやすくする。
うどんは美味しいから、私は大好きなの」
「おぉ! じゃあ、ネギだね!」
「うん、ネギ」
私達は八百屋さんの中に入ってネギを買った。
他にもふと思い付いた
カレーを明日作るために
いくらかの野菜も買っておく。
人参、ジャガイモ、タマネギ。
そして今回はシメジも買う事にした。
「カレーでも作るのかい?」
「ん、明日作るの」
「えー! わーいやったー!」
ナナちゃんはカレーが大好きだ。
今日作るネギハンバーグにうどんも使うから
明後日ついでに作るカレーうどん用に
多く買っておこうと思った。
「本当に偉いね、2人とも」
「料理は楽しいから」
「リンちゃんと何かするの凄く楽しいの!」
「はは、仲が良いね! 大事な事だ」
八百屋のおじさんが嬉しそうに笑ってくれた。
その言葉の後、私も不意に笑顔になる。
そのまま野菜の料金を払ってお店から出た。
「かわいいー!」
「ワンワン!」
木にロープを繋いでいたペロちゃんが
私達よりも年下の子供達に可愛がられてる。
良くここで出会う子供達だった。
「あ、リンちゃん! ナナちゃん!」
「今日も来てたんだ」
「うん! 2人とペロちゃんに会いたくて
お手伝いしてるんだ!」
「ふふ、あなた達のお陰で、私も楽よ」
大家族、確か5人家族らしい。
あの2人は双子だって言ってた。
そして、あの2人にも妹が出来てて
一緒に居るお母さんの背中には
幸せそうに寝てる赤ちゃんが居た。
「私もニック君とララちゃん会えて嬉しい!」
ナナちゃんは2人とも仲良くしてる。
ナナちゃんが私以外の子と仲良くするのを見ると
何だか……昔を思い出してしまってちょっと辛い。
仲良くしてた子達は全員死んでしまった。
ナナちゃんもそんなトラウマがある筈なのに
新しい友達を作るのは、本当に凄いと思う。
ちょっとだけ憧れるけど、私には難しい。
恐いからだ、また失ってしまうのが恐い。
そんな事無いと分かってるけど
あの嫌な記憶から不安は拭えない。
「実は今日ね! 僕転けちゃったの!」
「そうなの!? 大丈夫だった!?」
「うん! 泣かなかったし!」
「そうなんだ! 凄いね!」
「えっへん!」
いつも通りの日常会話をナナちゃんはしてる。
でも、私はあまり会話には参加出来なかった。
「ねぇ、リンちゃん」
「え? 何? ララ」
「実はね、私凄く悩んでるの」
「何を?」
「うん、ニックがね、いつも無茶しちゃうんだ。
駄目ーっていってもすぐに危ない事をするの。
どうすれば良いと思う?」
「うん、怪我をしたらお母さんが悲しむって
そう言ったらきっと止まると思う」
「あ、そうだよね! そう言ってみる!」
「うん、それが良い」
ニックはナナちゃんに話し掛けてて
ララは良く私に相談をしてきたりする。
まだ小さいのに色々と悩むことがあるみたいだ。
そんな会話をしてると、2人の両親が出て来た。
「あ! ママ!」
「お待たせ」
「荷物持つよ!」
「あら、ありがとう。でもどうして?」
「だって、リンちゃんも持ってるんだもん!
僕だって頑張るんだ! 男の子だもんね!」
「あら、リンちゃんに対抗意識でもあるの?」
「うん! 僕はリンちゃんやナナちゃんみたいに
いつかきっと、騎士になるんだ!」
「騎士、うーん。お母さん心配だなぁ」
「大丈夫!」
そう言って、ニックが母親が持っていた荷物を受け取る。
「うぅう! お、重いー!」
「ニック、2人で持と?」
「だ、大丈夫! 1人で!」
「お姉ちゃんも騎士になりたいから一緒に頑張ろう」
「そうなの? じゃあ、頑張ろう!」
「うん!」
「あら、ララまで、怪我しないでね?」
「大丈夫だよ! それじゃあ2人とも! また今度!」
「ん、またね」
「またね!」
私達は手を振り、2人を見送った。
そして、ペロちゃんと一緒に肉屋さんへ向う。
そこでミンチや豚肉とかを買った。
今日はネギハンバーグ、美味しく作ろう。
「リンちゃん、1個持つよ!」
「大丈夫、ペロをお願い」
「うぅ、でも重いんじゃ……」
「大丈夫、大した事無い」
騎士見習いとして鍛えてるから全然問題は無かった。
そのまま、私達は部屋に戻り、ネギハンバーグを作る。
2人で一緒に、ネギハンバーグを作ってみる。
「よいしょ、よいしょ、これ位で良いかな?」
「もうちょっとだね」
「はーい!」
ある程度練るのが終わって、いつも通り焼いていく。
少しだけ焦しておけば、ひっくり返すときに
形が崩れずに綺麗な形になる。
焦しすぎないように注意しながらも
ある程度は焦さないと駄目なのが難しい。
「うぅ、崩れた……あまり焦げてなかった」
「難しいんだね」
「大丈夫、2度目は行ける」
さっきの失敗を反省して、2度目は少しだけ待つ。
そして、これ位だという状況でひっくり返した。
「よし、良い感じ」
「おぉ! 凄いね! 流石はリンちゃん!」
「これ位の時間だ、しっかり覚えよう」
その1度の成功でタイミングをある程度掴んで
その時間でひっくり返すことにした。
「ねぇ、リンちゃん! 私にも1回やらせて!」
「え? うん、分かった」
「よーし! ちょっと焦げさせる方が良いんだよね!」
「うん、ちょっとが良い」
「よーし!」
そして、ナナちゃんがひっくり返すための料理を始める。
「……今だね!」
「もうちょっと待って」
「え? あ、うん! もうちょっとだね!」
少し早とちりをしそうになったナナちゃんを制止する。
その後、少しの時間を見て。
「うん、今だよ」
「うん! えっと、えっと……えっと、こ、この道具で」
「そう、その道具を下に入れて」
「うん」
「そして、一気にひっくり返す」
「一気に、えい! あ!」
ナナちゃんがひっくり返したタイミングは良かった。
でも、力加減が失敗して、ぐちゃっと崩れてしまった。
「あぁー! そ、そんなぁー!」
「大丈夫、まだ食べられるから」
「うぅ、やっぱりリンちゃんみたいに上手く出来ない」
「練習すれば出来るようになる」
「うん、頑張るよ!」
そのまま何度か挑戦したけど、崩れてしまう。
やっぱりもうちょっと待った方が良いのかも知れない。
私なら出来るでも、ナナちゃんはまだ難しいんだ。
「うん、うん、えい!」
「あ! 出来た!」
「やったー!」
そんな事を思ったけど、すぐに成功させた。
やっぱりナナちゃんも料理が上手い。
「じゃあ、この感覚をしっかり覚えよう」
「うん!」
そして、結構な量が出来た。
後半、ナナちゃんの成功率は跳ね上がってて
5回やって4回は成功させた。
それ以上はもう材料が無いから挑戦できなかった。
「一杯出来たー!」
「うん、これならお腹いっぱいになる」
「うへー、暗くなっちゃったよぉー」
料理が出来て準備をしてると扉が開いた音がした。
そして、少し疲れてる様子のエディーが帰ってきた。
「帰ってきた! エディーお姉さん!」
「お帰りなさい、エディー」
「ただいまー! 良い匂いがするね!
もう出来てるのかな!? 今日の晩ご飯!」
「うん! 今日はネギハンバーグだよ!」
「ネギハンバーグ!? 僕は知らないよそれ!」
「美味しそうかもと思って」
「むむ、つまりはリンちゃんのオリジナル的な!?」
「分からないけど、多分そう」
「おぉー!」
レシピとかは無い状態で作ったからね。
きっと美味しいとは思う。
「おっと! これは確かにボリューム満点だ!」
「どうぞ、食べて」
「うん! いただきまーす!」
「いただきまーす!」
「ワンワン! ワン!」
私達がご飯を食べようとするとペロが飛び起きて
机の上に前足を掛けて舌を出しながら
私達が作ったネギハンバーグを見ていた。
「おっとペロちゃん、駄目だよ?
これは人間用だからね」
「ペロはこっちだよ」
「ワン!」
私はペロのドックフードを準備する。
ペロは私が用意したドックフードに飛びつく。
「む、待て」
「ワン!」
私が待てと言うと、ペロは動きを止めた。
「……いただきます、これ、前足を合わせて」
「くぅん? はっはっは……」
私の手を見て、少し首をかしげた後
ペロは餌を見た後、私の真似をするように
ちょっとだけ体を起して、
手を合せる様な動作をしてくれた。
「よし、食べて良いよ」
「ワン!」
私が許可を出すと同時にペロがご飯を食べた。
「おぉ! す、凄いね! こんな隠し芸を!」
「初めて見たよ!」
「指示をしたらやってくれた、可愛い」
「あっはっは! こりゃいいや! 可愛いね!」
「うん! 可愛い!」
「それじゃあ、私も。いただきます」
「いただきまーす!」
私が席に着いて挨拶をすると同時に
皆もご飯を食べ始めた。
中々上手く出来た、うん、これは美味しい。
ふふ、今日もいつも通りの1日だ。
こう言うのはとても良い、幸せだ。




