依頼のご褒美
色々あったけど、バナージに戻って来た。
私達は今回の件をソールティアスさんに伝えた。
「以上が、今回起こった問題です」
「済まない、まさかキメラが発生するとは。
良く2人を守り抜いてくれたね」
「いえ、むしろ私は守られた立場です。
2人が居なければ、どうなっていたか」
今回の報告を聞いたソールティアスさんは
驚きの表情を見せながらも
問題に対処して私達を護ったエディーを
しっかりと評価した。
「そうだね、しかし2人とも」
「は、はい」
「エディーの命令を無視したこと。
それは、あまり良いことじゃない。
エディーは君達の上官であり
従うべき相手だと言う事を忘れるな」
「ご、ごめんなさい……でも、見捨てたくなくて。
だって、私、え、エディーお姉さんの事
大好きで……もう会えないって、い、嫌で」
「私も昔の嫌な思い出みたいに
大事な誰かの足を引っ張りたくなかった。
戦えるのにって……でも、ごめんなさい。
エディーの言う事を聞けなかった」
ソールティアスさんが私達の前まで歩いてくる。
少し怒りのような表情を見せたけど
私達の言葉を聞いて、少しだけ微笑んだ。
「君達の行動は、本来であれば
もっと怒られることだ。
でも、君達の行動のお陰で
エディーが救われたのも事実。
騎士としては駄目だが、人としては良い事をした」
そう言って、ソールティアスさんは私達の頭を撫でる。
「エディーの主として、君達に感謝も示そう。
ありがとう、エディーを守ってくれて」
「えへ、えへへ」
「……う、うん」
ナナちゃんは少し幸せそうに笑ってる。
私は……抵抗がある筈なのに、トラウマがあるのに
不思議なことにソールティアスさんに撫でられると
とても嬉しい気分になる。
「よし、エディー、報告ご苦労。
君には今後も変わらず、
2人の面倒を見て貰おうと思う。
とは言え、手に負えない問題児でもあるからね。
もし君が嫌だと言うのであれば言ってくれ」
「まさか、私からしても2人は可愛い妹みたいな物です。
確かに命令を聞かなかったのはありますが
それは私の事を思っての事。
喜ぶ事はあっても、嫌がる事等ありません」
「ふふ、それは良かった。ではお願いするよ」
「はい!」
「ナナの魔法が覚醒したのは大きな進歩だ。
リンも体特殊属性魔法のみでは無く
火属性の魔法も覚醒した。
このまま2人の才能を引き出してくれ」
「は!」
敬礼の後、私達はソールティアスさんの部屋から出た。
ソールティアスさんは私達の姿を見て
再び笑顔を見せてくれた。
「では、精進するように」
「はい!」
その一言の後、扉をゆっくりと閉めた。
もっと頑張ることが決ったんだ。
ナナちゃんの魔法が覚醒して、私も使える魔法が増えた。
魔法を鍛えたら大きく成長する事が出来る。
「ちょっと怒られたけど、褒められて良かったね」
「うん、もっと怒られると思った」
「まぁ、僕としても助かったわけだしね。
それじゃ、ナナちゃん」
「何?」
「ペット、買う?」
「買う!」
報告が終わった後、私達はあのペットショップへ行った。
ナナちゃんが気に入ってた、あのワンちゃんは
まだペットショップで売られてる状態だった。半額で。
「あ、50ユースになってる」
「あまり人気がなかったのかな」
あのワンちゃんは結構成長してた。
2ヶ月で、ここまで大きくなるんだ。
「わー! 大きい! でも可愛い!」
「いらっしゃい、あぁ君達は2ヶ月前の」
「おじさん! この子! この可愛い子頂戴!」
「あぁ、この子か。あと少しで処分対象だったから」
「処分? どう言う事?」
「いや、気にしないでくれ」
「あ、うん」
ちょっとあまり良い言葉では無い。
処分、実は危なかったんじゃ無いの?
「でも、50ユースだけど大丈夫なのかい?」
「うん、はい!」
ペットを買うために用意してた50ユースを
ナナちゃんがお店のおじさんに渡した。
今回は私もお金を出して、25ユース。
私も可愛いペットが欲しい。
「おっと、小さいのに凄いね。
エディーさんからのお小遣い?」
「いや、僕と言うよりは2人が稼いだお金だよ」
「え? あ、騎士見習いとしてのお給料かな?」
「そうそう、この子達も頑張ってるんだ」
「はぁ、小さいのに凄いねぇ。それじゃ、待ってて」
ナナちゃんが手渡したお金を受け取り
店員さんはお店の奥へ戻っていく。
そして、私達に首輪とリールとドックフードをくれた。
「はい、これもおまけで付けておくよ」
「え? 良いの?」
「あぁ、頑張ってる君達にお礼だよ。
この子も君達に救って貰って喜んでるだろう」
そう言って、檻を開けてワンちゃんを取り出した。
ワンちゃんは嬉しそうに尻尾を振ってる。
「はい」
「ワン!」
「鳴き方が変わってる!」
「成長してるからね」
「でも可愛い!」
「ワン!」
「あはは! 可愛いね!」
ナナちゃんが笑顔でワンちゃんを撫でてる。
ワンちゃんも尻尾を振りながらナナちゃんの
掌を舐めてる。
「あはは! くすぐったーい!」
「ナナちゃん、しっかり面倒見るんだよ?」
「うん!」
「じゃ、ありがとうね、おまけまで貰って」
「いやなに、安いもんだこれ位。
この子も元気そうだし、それに越したことはない。
それじゃ、また来てくれよ!」
「分かったよ、これからお世話になるだろうからね」
「ワン!」
そして、私達はこのワンちゃんを連れて部屋に戻る。
ワンちゃんは広い部屋が嬉しいのか駆け回ってる。
「ワンワン! ワン! はっはっは! ワン!」
「凄い嬉しそう!」
「うん、でもあまり吠えないでよ?
ペット禁止じゃ無いけど、騒ぐと迷惑だ。
いや、アンナとローズが迷惑するだけだから
別にどうでもいい気もするけど」
「え? 隣なの? 会った事無いけど」
「任務で忙しいからね、あの2人は特に
周辺探索をよくしてるから大体部屋に居ないんだ。
都市外依頼にも積極的だからね」
そう言えば2人はそんな事を行ってた。
だから、あまり出会うことが無かったんだ。
「都市外依頼や周辺探索から帰ってきたら
大体夜間に帰還してくるからね。
より一層、出会う機会は少ないと言える」
「でも、疲れて帰ってきてるのに
あのワンちゃんが騒がしくて眠れなかったら」
「何言ってんの? 都市外異変や周辺探索を
あの2人はこなしてるんだよ?
夜営は常に獣の鳴き声とかうるさいし
犬の鳴き声が壁越しに聞えた程度で
騒がしいとか思ってたら夜営できるわけ無いじゃん」
言われてみればそうだった、夜営をしてるときは
色々な音が聞えてくるから静かな時間は無い。
そんな夜営をよくしてる騎士達が
ワンちゃんの鳴き声程度で反応する気はしない。
「流石に超近くから聞えてきたら起きるだろうけどね。
とは言え、あの2人も切替え上手い方だし
帰ってきたらそんな音には反応しないだろうけど」
「でも、下の人は?」
「確かにここは3階だから、下の人は居るけど。
そこはローラって奴が居るんだけど。
ローラも普通にペット飼ってるから気にしないだろ」
「ペット居たんだ、鳴き声聞えなかった」
「うん、猫だからね、あいつのペット」
「猫なんだ、でもそれならワンちゃんの鳴き声とか」
「いや、気にしないでしょ、
文句言ってくる奴でも無いし」
と言うか、冷静に考えてみると
ここに居る人達は皆騎士だから
エディーと知り合いだろうし、大丈夫なのかも知れない。
「ワン! ワンワン!」
「うわ!」
不意にワンちゃんが私に体重を掛けてきた。
不意の事で、私はワンちゃんに押し倒される。
「はっはっは! ワン!」
「うぅ、ほっぺ舐めないで」
「ワン!」
「むぅ」
「あぅ」
とりあえずワンちゃんの顔を掴んで止めさせた。
「あん!」
「顔舐めないで、ベトベトする」
「随分と人懐っこいよね、この子」
「うん! 私もそう思う! えへへ!」
ナナちゃんがあのワンちゃんの頭を撫でる。
するとワンちゃんは私からどいて
ナナちゃんを舐め始めた。
「きゃー! 舐め舐めされるー!」
ニコニコ笑顔でナナちゃんがワンちゃんと戯れる。
凄く楽しそうだ。
「さて、まぁこの子は大丈夫だろう。
とりあえずナナちゃん、この子の名前は?」
「ワンちゃん!」
「いや、それはちょっと、名前を付けてあげよう」
「じゃあアンちゃん!」
「いや、それもどうかなーと」
「茶色だからチャチャちゃん!」
「それじゃチャチャチャだね、玩具みたいだ」
「じゃあ、うーんとうーんと……
は! ペロペロしてくるからペロちゃん!」
「確かにありかもだけど、ここはベロちゃんとか」
「どうして?」
「そっちの方が言いやすくない?」
「ペロちゃん! ペロちゃんが良い!」
「じゃあ、ペロちゃんで良いね」
名前が決った、このワンちゃんの名前はペロちゃんだ。
ベロもペロもそこまで変わらないような気もするけど
ペロの方が、ちょっと可愛いかも知れない。




