帰り道
帰りの道中は強い魔物は出て来なかった。
でも、リストウルフが結構出てきた気がする。
エディー達が言うのは、これも珍しいらしい。
リストウルフは本来臆病な性格らしくて
積極的に襲うことはあまり無いとか。
主に群れて行動してくるし
単独であれば、相手も単独の場合を狙う。
30の規模なら襲ってくるかも知れないらしいけど
10程度で5人を狙うことはあまり無いとか。
「ふーむ、ここまで襲われるのは驚きだ」
「行きでもまぁまぁ襲われたけど
帰りでも変わらず襲ってくるなんてね」
「狙いはリンちゃんらしいけど……
まぁ、普通だけどね?
小さい相手を狙うのは自然の摂理的な?」
「ナナちゃんは後衛だから狙いにくいしね」
リストウルフが主に狙ってきたのは私だ。
私は前で戦ってるからね。
体が小さくて前線にいるのであれば
最優先で狙われるのは当然とも言える。
ナナちゃんは魔法が使えて遠距離だから
後衛でアンナと一緒に居る。
その2人を守る為に、ローズが後衛の防衛。
これが、私達の布陣だったから
ナナちゃんは狙われなかったんだろう。
「しかし問題は、群れないことだね」
「そうかも、普通は群れるもんね」
「実際、リストウルフの襲撃は
群れての襲撃が報告じゃ多いわよね。
それなのに10体規模、少なすぎるわ」
「群れたリストウルフは異常な程に
自信過剰になるのは前の襲撃で確定だけど
10体規模じゃ、基本1人の相手しか狙わないはず。
異常な自体が多発してるから
安易に気のせいで流せないって言うね」
「でもさ、今回みたいな襲撃は
あまり報告されて無くね?
ちょっと妙だと思わね?
なんかあるんじゃ無い?」
「僕達の編成に何かあるって?
ははん、そりゃそうでしょ?
僕らは子供を2人編成してるんだ。
そりゃ編成としては問題しか無いでしょ?
更に女の子ばかり、そりゃ異常でしょ」
実際、私達2人が居るからね。
実際は3人と大差無い編成と言える。
魔物達からしてみれば、弱い人間が2人居て
食べるのであれば、弱そうな私達を狙うのは当然だ。
「いや、女性編成は私達良くやるけど
ここまで襲撃されたことは無いわよ?」
「その時は5人だろ? でも今回は3人だけ。
ナナちゃんとリンちゃんを含めれば5人だけど
魔物達の判定的には子供達は編成には含まないで
狙いやすい獲物としてカウントするだろう。
となれば、狙える獲物は2人、護衛は3人。
だから、襲撃をよくしてきてるのかも知れない」
「うー、言えてるかも、
やっぱ5人の方が良かったんじゃね?」
「まぁ、ソールティアス様からすれば
僕1人で過剰戦力だけど
念の為、君達を編成したという形だろうしね。
それ以上の編成は
必要無いって思ったんじゃ無いかな」
「いやまぁ、実際問題は無かったけどさ……
キメラを除いて」
「ありゃ想定できないっしょ、
キメラは超レアじゃん?」
「まぁね」
キメラの襲撃はやはり異常だったらしい。
私達はそう言う魔物の情報は分からないから
あまり会話には参加出来ない。
でも、そう言えば2人で動いてる時は
よくあの狼が襲撃に来てた気がする。
全部倒してたけど、最優先で狙ってたのは
何故か私だった。
その方が都合が良かったから気にはしてなかったけど
冷静に考えてみれば、
普通はナナちゃんを狙う気がする。
私の方がナナちゃんよりも少し背が低いけど
その程度の差で、私を集中的に狙うのかな?
「もしかして、私が悪いのかも知れない」
「え? なんで?」
「だって、2人で旅してたときも私が狙われてた」
「あ、そ、そう言えばそうだね。何でだろう?」
「リンちゃんを集中狙いとは、確かに妙だね。
ふむ……美味しそうな匂いでもするのかな?」
「私、食べても美味しくないと思う」
「魔物と僕達じゃ、味覚違うだろうからね」
美味しそうなのかも知れない……私が。
変な事をしてた記憶はないし、魔物に美味しそうとか
そう思われるような何かがある気もしないけど、
私が優先的に狙われてるのはほぼ確定だ。
私の何処が美味しそうなのか、狙われやすいのか。
そう言うのはさっぱり分からないけど。
「でも仮にそうなら、酷い罠よね」
「あぁ、僕達の中で2番目に強いのは
ナナちゃんで確定しちゃってるわけだし?」
「全く否定できない……情け無いって感じ」
「私の場合は弓兵路線だからセーフね」
「いや、アウトだろ」
そんな会話をしながら、私達は都市へ戻っていく。
道中、ある程度の探索もしたりしたけど
襲撃されてる村とかは無かった。
「さて、そろそろ帰宅だね」
「えぇ、キメラとか出て来なくて良かったぁー」
「そう簡単に出て来たら困るっての。
キメラの危険度はデミ・ビースト以下とは言え
あれクラスなんだからな?」
「え? デミ・ビーストって強いの?」
「そりゃ、キメラ以上の脅威度だし」
「でも、エディーはデミ・ビーストには勝てるって。
でも、キメラ相手にはちょっと不味そうだったのに」
疑問に思ったことだ、キメラを相手にしたとき
エディーは冷や汗を流して、かなり危なそうだった。
でも、デミ・ビーストの時はそうでもなかった。
焦ってるのは間違いないけど
それは、私が狙われてたから焦ってただけで
多分、戦いってなればあそこまで焦ってない。
そもそも1人で追いかけてきてたから
1人で勝てるって確信があったんだと思う。
「相性だね、相性。デミ・ビーストは所詮は人型だ。
攻撃部位もキメラ程には多くないだろう?
だから、1対1であれば僕は勝てるんだ。
でも、キメラの場合は攻撃部位が多い。
当然、攻撃手数も多いから僕1人じゃ
その攻撃を捌き、
攻撃を叩き込む余裕が生まれないんだ。
でも、複数編成で挑めば大した脅威ではない。
動きもデミ・ビースト程に速くはないから
後衛に抜けられる可能性も低いから
前衛が2人居れば攻撃を余裕を持って捌けて
後衛で攻撃を叩き込んで対処が出来る。
デミ・ビーストは動きが非常に速く立体的。
知識も高く、後衛を狙われる危険性も高いし
立体的に動ける相手に前衛が釘付けも難しく
後衛が壊滅するリスクがとにかく高いんだ。
だから、脅威度で言えばデミ・ビーストは
キメラ以上だってのは確定なんだよ」
複数人で戦う事前提の脅威度なんだ。
だけど、デミ・ビーストは私しか狙ってなかった。
そこまで頭が良かったようには思えない。
だけど、エディーが適当なことを言うとは思えない。
そう言う知識は凄い筈だし
わざわざ、私に嘘をつく理由もないはずだ。
だから、本当なんだろうとは思う。
「まぁつまり、集団戦ならキメラはまだ雑魚なんだよ。
今回は前衛がローズと僕しか居なかったし
アンナの扱う通常サイズの弓矢じゃ
定石である蛇の排除が難しかったから
まともに戦えるのが僕だけだと判断して
このままじゃ不味いなと思ってただけだし」
「わ、私だって強弓の鍛錬はしてるんだけどね」
「う、あたしももっと鍛えなきゃやっぱ不味いよね」
「そう、不味い、今回の戦いで確定したしね。
君達、ほぼ確実に今のままじゃ抜かれるよ?
リンちゃんは勿論、ナナちゃんにもね。
魔法の優位性は大きいからね」
「私の場合は剣が凄いだけで」
「馬鹿言っちゃいけない、
そりゃ君の剣は確かに凄い。
圧倒的とも言える切れ味だからね。
でも、君の隙を狙う技量は見事だし
本能的に1番倒すべき場所を君は見極めてた。
最初に胴体では無く
蛇を狙ったのは素晴らしい判断だ。
何も知らない状態で、
1番危険な部位が蛇だと理解し
最優先でそこを破壊することを選んだ。
隙が出来た蛇にも即座に反応して攻撃してたし
君の戦いに関する知能は相当高いのは明確だ。
隙を明確に狙える技量に、
的確に重要な部位を破壊する技術。
鎧を着けてる状態だろうと、
身軽に動ける身体能力。
小さい体で力という部分を補うために
全身を使って攻撃してるのも
実に素晴らしいといえる。
正直、戦いの天才と言っても過言じゃ無い」
エディーが滅茶苦茶褒めてくれてる。
少し恥ずかしい気がするけど、
私にはその自覚が無い。
無意識だ、蛇を狙ったのは
実際、危なそうだからって理由。
そこを排除できれば攻撃部位が減るだろうし
簡単に両断できそうだと思ってたからだ。
でも、両断できたのは
この剣の切れ味が凄かったからで
エディーみたいに普通の剣だったら
両断出来てないはずだ。
結果として良い方向に傾いただけで
あの選択は、最悪の場合は致命傷になってたと思う。
「……でも、剣の切れ味が無かったら
私じゃ、あの蛇を切れてない」
「君は君の剣の強さを信じてたという訳だ。
実際、切れ味が無ければ危なかったのは
そうだけどね」
エディーも当然、それ位は理解してたんだろう。
でも、私に自信を付けさせるために
私を褒めてくれたんだ。
更にだ、私が言ったことを聞いて、
エディーは少しだけ
嬉しそうな表情を見せたのも分かった。
「そう言うリスクに気付けたのは良い事だ。
終わった後だけど、
終わった後でもリスクに気付き
失敗したらどうなってたかを考えられるのは
とても大事な事だよ、リンちゃん」
エディーが私の頭を撫でた。少し、抵抗がある。
私はエディーの事を嫌ってるわけでは無いけど
やっぱり誰かに触れられると抵抗が出てしまう。
頭をなでなでも、少しだけ抵抗が生まれた。
私はやっぱり、
大人があまり好きじゃ無いのかも知れない。
「なんか不機嫌そうな顔だ、い、いやだった?」
「私、やっぱり昔のトラウマがあるからか
少し、抵抗があるってだけ。
エディーの事を嫌ってるわけじゃ無い」
「そうだよね、ごめん」
「謝らないで良いの、私が悪いから」
別に悪気があるわけでも無いはずなのに
私が無駄に過剰反応してしまっただけだ。
私が悪いのであって、エディーが悪いわけじゃ無い。
「あの子、撫でられるの苦手なのね」
「ナナちゃんの方は笑顔になるのに不思議」
「えへへ~」
頭をアンナに撫でられてるナナちゃんは
ニコニコ笑顔を見せてる。
私はブスッとした表情しか出来ないけど
ナナちゃんは笑顔だ。
やっぱりナナちゃんは可愛い。
「僕はリンちゃんを笑顔に出来る位には
好感度を稼いでみせるさ!」
「好感度というか、私のトラウマが原因で」
「そのトラウマを忘れる位、幸せにしてあげる。
僕は2人のお姉ちゃんだからね!」
「あんた、そんなに面倒見良かったっけ?」
「僕は妹が欲しかったんだ!
お姉ちゃんだ! 僕はお姉ちゃんだから
当然、可愛い妹の面倒を見るさ!」
「でも、見捨てろって言った」
「本当にごめん、
2人を信じ切れなかった僕を許して」
「……良い、生き残ってくれたからそれで」
「もう可愛い!」
エディーが私を抱き上げて抱きしめてきた。
「凄い不機嫌そうな表情ね……」
「トラウマがって言ってたし、抵抗あるんでしょ」
……やっぱり、誰かに抱きしめられても抵抗が出る。
いや、エディーを嫌ってるわけじゃ無いんだ、うん。
むしろ、エディーの事は大事だと思ってる。
だけど、やっぱり大人に抱きしめられるのは
抵抗がある。
とは言え、あまり抵抗するとエディーが傷付く。
ここは大人しく我慢して、抱きしめられておこう。




