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依頼の場所

ある程度歩いて、そろそろ依頼の場所だ。

近場に村とかは無いけど何処だろう。

依頼で魔物を倒してから村に行くのかな?


「っと、ここら辺だけど……あ」

「え?」


地図を見たエディーが嫌な一言を呟く。

あ、と言う言葉は、何だか恐い気がした。


「何よエディー、地図逆さまだったとか?」

「馬鹿言っちゃいけない、僕は普段は腑抜けだが

 仕事の時は結構しっかりしてるんだから、ただ」

「ただ?」

「移動中にイレギュラーが発生したパターンだ」

「え!? あんたのそう言うの恐いんだけど!?」


実際、エディーは結構腑抜けてる風に立ち回るけど

結構頭が良い印象がある。

生活力は無いような気はするけど

そこ以外はとても優秀なのは明確だ。


「リストウルフの襲撃から唐突のイレギュラー。

 最近は異常事態が多いようで困ったなぁ」


その言葉の後、大きな音が響き渡り

森の方から熊が飛んで来た。


「な!」


飛んで来た熊は私達の近くに転がり消えた。

同時に大きな咆吼が森の中から響き渡る。


「やっぱりか、森の木が一部なぎ倒されてたから

 こりゃ、プロントペアーじゃ無いとは思ったが」


森の奥から何か、大きな影が姿を見せる。

デカい……デュラハンよりもデカい!

あの熊よりも大きいし! どうなってるの!?


「ぎがぁあああ!」

「ちょ! 嘘でしょ!? キメラ!?」

「何あれ……」

「デミ・ビーストの亜種? 

 たまに発生する魔物の混血生物。

 発生確率はレアだったと思うが」


熊の様に大きな体を持ってるけど

背中から蛇が2体も飛び出して、顔は狼の様だった。

胴体は熊みたいになってる……


「見た感じ、プロントベアー、

 ダイアウルフ、ツインスネークか。

 最悪だよ、魔物のバグめ」


そう言って、エディーが剣を引き抜く。

ちょっとだけ焦ってる表情を見せてた。

少し余裕が無いエディーを見たのは

私がデミ・ビーストに襲われて

死にかけたとき以来だった。


「え、エディー! これヤバいって!

 あたし達の編成じゃ不味い!

 星4クラスの騎士が後3人は居る!」

「り、リンちゃん……こ、恐いよ」

「そうだね、だから君達は逃げるんだ」

「はぁ!? エディー! 正気!?」

「正気だって! 最善だろそれが!

 僕達の編成でこのキメラは不味い!

 あのキメラを足止めするには

 最低でも2人の前衛が居る!

 でも、ローズじゃ前衛は厳しい!

 後衛も高火力の弓兵がいるけど

 アンナの弓矢じゃ決定打に欠ける。

 リンちゃんの魔法もあまり高火力じゃ無いし

 そもそもだ、リンちゃんは前衛が最適……

 でも、それは不味い!

 実力は申し分なくても

 実戦経験が足りないリンちゃんが

 あのキメラを相手するのは危ない!

 だから、僕が足止めしてる間に

 君達が逃げ出すのが最善だ!」


そう言って、エディーが剣を構えた。

大きな咆吼の後、キメラが接近する。

足が速い! 確かに誰かが足止めしないと

絶対に追いつかれるって確信出来る!


「エディー! 死ぬ気!?」

「僕の役目は2人の護衛だからね!

 1度失敗した任務だ、今度は成功させる!」

「エディー!」


エディーがキメラの攻撃を受け止めた。

あんな巨体の攻撃を受け止めるなんて…

でも、蛇がエディーに攻撃をしてくる。

その攻撃もなんとか捌いて胴体の攻撃も防いだ。

一目で分かる、エディーは強いって。

だけど、防戦しか出来てない。

相手の攻撃手数が多すぎる!

あのままじゃ、エディーはやられる!


「クソ! 攻撃部位が多いの最悪だって!

 もう体の熊だけで良いだろ!

 なんで狼と熊と蛇なんだよ!

 主に蛇だ! 蛇が厄介すぎるっての!」

「エディー! 助けるわよ!」

「馬鹿! 逃げろっていっただろ!?

 良いか!? こいつ相手に君らは守れない!

 僕1人で手一杯だ! だから、逃げろって!」

「ここで逃げたら恥よ!」

「僕は君らの上官だぞ! 信念に酔うな!

 リンちゃんとナナちゃんを守れ!」

「……」


エディーの言葉で2人が踏みとどまった。

そして、冷や汗を流しながら、私達の方を見る。

少しの沈黙の後、2人は私達の方へ駆け寄る。


「そうだ、それで良い! 逃げろ!」

「……逃げるしか無い、それしか出来ない」

「ごめん、エディー」


2人が私達を抱き上げようとする。


「やだ! え、エディーお姉さんを助けたい!」

「駄目よ、無理! 足を引っ張るだけ!」

「やだ!」


ナナちゃんはわがままを言ってる。

私は……そう、大人しく逃げるつもりだった。

でも、ナナちゃんの言葉を聞いて

私は不意に、昔の記憶が蘇る。


淡い記憶……何も出来なかったあの記憶だ。

私が知らない、きっと私の大事だった人。

私は何も出来ず、それ所か邪魔で

きっとあの人の命を奪ってしまったんだ。


そんな事を思いだしてしまったからなのか

私は……ここで逃げるのが嫌になった。

ここで逃げたら……あの夢と同じだ!


「ッ!」

「な! リンちゃん!」


私はローズを避けて、一気にキメラに突っ込む。


「な! 馬鹿! 逃げろって言って!」

「馬鹿はそっち!」


一瞬力を込めての抜刀術。

私の一撃は蛇の片方を容易に両断した。


「速い!」

「私は奴隷だったんだ、何もかも奪われてきた。

 ようやく自由になって、色々と取り返し始めて

 大事な何かを守れる力も手に入れた!」

「がぁあああ!」

「なのに! なんでまた大事な何かを!

 自分で捨てなきゃならないんだ!」


熊の体による攻撃を祈りの剣で受けた。

爪と爪の間だ、皮膚の部分に刃を当て切り上げた。

当然、圧倒的な切れ味を誇る祈りの剣は

熊の腕を縦に引き裂き、血飛沫をまき散らす。


「がぁあああ!」

「嘘! 強い!」

「……全く、とんだ問題児だよ!」


すぐにエディーが動き、背後のもう1匹の蛇を攻撃した。

だけど、ただの剣ではあの蛇は両断できなかった。


「あぎが!」

「ちぃ! やっぱり切れ味足りない!」

「でも! 私の攻撃なら通る!」


背中に注意を向いた瞬間に私は縦に剣を振り下ろす。

だけど、キメラは私の攻撃を爪で弾いた。


「うぅ!」

「リン! キメラの反応は速い!

 不意打ちを狙って攻撃をするんだ!

 無理に急所を狙う必要も無い!

 何処でも良いから攻撃して体力を奪う!」

「分かった!」

「これはやるしかない! ローズはナナちゃんを!」

「分かったってね、何も出来ないの情け無いけど

 あたしじゃ、キメラの攻撃を受けきれないし」

「私も戦うの!」

「駄目、剣しか使えないのにキメラは駄目!」

「でも、わ、私だって鍛えてきたのに……」

「駄目! 危ないんだから!」

「私が……私が魔法を使えたら……」


ナナちゃんは少し涙目になりながら

自分の手を眺めている様子だった。

でも、あまりナナちゃんの様子を見る余裕は無い。

よそ見してたら殺される。だから、相手を見る!


「がぁ!」

「っと!」


エディーへ伸びた攻撃だったけど

エディーはその爪の攻撃を綺麗に避けて

攻撃してきた腕を逆に攻撃してダメージを与えた。

両断では無い、切っ先で僅かに割いた程度の攻撃。


爪を避けた後に攻撃したわけだから

熊の腕の方が少しだけ切れた感じ。

両断は狙わず、少しずつダメージを与える。

手負いの獣は危険だと言ってたけど

こいつ相手にはじっくりとダメージを稼ぐしか無いんだ。


「アンナ! 分かってるでしょ!?」

「分かってる!」


アンナも何度も矢を放ち、少しずつダメージを与える。

アンナの狙いは背中の蛇だってのは分かった。

だけど、蛇の鱗を貫く事は出来てない。


「それで良い! そのまま!」


その指示の後、キメラの攻撃を捌いてる。

私は少しだけ距離を取り、体勢を低くした。

アンナは相変わらず蛇を攻撃してる。


「がぎ!」

「うっしゃ! どうよ!」


うち、1本の矢が蛇の目に突き刺さり

蛇が不機嫌そうにアンナの方を向いた瞬間。


「そこを斬る!」


私が即座に動いて、蛇を両断した。


「ナイス!」

「がぁああああ!」

「っと、どうだ! 痛いだろ!」


エディーは挑発するようにキメラを攻撃し続けてる。

キメラは明らかに動きががむしゃらになって来てる。

攻撃の速度が上がり、防御を捨ててるように感じた。


「っと、やっぱ防戦一方! 

 これだから手負いの獣は嫌なんだよ!」


激しい猛攻撃を必死にエディーは受けてる。

私も剣を再び構え、体勢を低くした。

隙を見て、低い体勢のまま一気に接近し


「そこ!」

「ぎ!」


キメラの脚の健を断った。

キメラはバランスを崩して大地に手を付いて

4足歩行のようになったけど

後ろ足は動かない状態だ。


「っし! これでどうだ!」

「ぎぃ!」

「クッソ! 往生際が悪い!」


首を両断しようとしたエディーだったけど

キメラは狼の牙でエディーの剣に噛み付き

エディーを振り回そうとするけど

エディーは即座に手を離しており

剣に振り回されることは無かった。

しかし、怒り状態のキメラはエディーの剣を

あっさりと噛み砕いてしまう。


「あー! ぼ、僕の相棒が! 支給品だけど!」

「エディー! それは良いと思う!」


私はすぐに飛び上がり、キメラの背中に剣を突き立てた。


「がぁあああ!」


痛みでキメラは全身をブンブンと振り回す。

だけど、私は突き刺した剣に掴まって

吹き飛ばされないように耐える。


「もう! 暴れないで!」


だけど、このままだと決定打が無いから

私は掌を前に出した。


「燃えろ!」


掌から炎を放って、攻撃した。


「がぁああ!」

「うわっと、っとと!」


炎の魔法を受けて更に暴れ出したキメラ。

流石に片手で振り回されすぎたせいで

剣を離してしまった。


「うぅ!」


なんとか着地してすぐに動ける状態になったけど

キメラは動き出し、私に飛びかかろうとする。


「ぐがぁああ!」

「まだ動けるの!? タフすぎる!」

「でも、背中に剣が刺さってて」


エディーはすぐに動き

背中に刺さってる私の剣を掴んでいた。


「後ろに僕が居るの忘れるなってね!」


そのまま剣を力任せに降ろすと

あっさりとキメラの背中を引き裂いた。

背中から大量の血が吹き出し

キメラの動きが大きく鈍る。


「が、あ……」


流石に更に致命的な怪我までは耐えられなかったのか

キメラは最後に少し足掻きながらも、

ゆっくりと動きを止めて地面に倒れた。


「はぁ、はぁ、はぁ」

「い、行けるもんだね……」


実質3人だけでキメラを倒せた。

これが凄い事なのか分からないけど

多分、とても凄い事だとは思う。


「やった!」

「はぁ、逃げろと言ったのに問題児だね」

「でもエディー、見捨てろって中々酷い。

 それは私達を傷付けるだけ」

「……まぁ、そうなんだけどね。

 本当なら小一時間お説教したいところだけど

 結果として僕も助かったし、何も言えないかな」


エディーが祈りの剣を私に差し出してくれた。

私がその剣を掴んだとき、剣に熊の顔が映る。


「エディー! リン!」

「ぎ、が、あぁ」

「嘘! まだ動け!」

「駄目ー!」


ナナちゃんの悲痛な叫び声と同時に

火の玉が飛んで来てキメラの腕に当った。

火球の威力でキメラの腕が吹き飛ぶと

同時にキメラは力尽き、今度こそ倒れた。


「……な、ひ、火属性魔法!?

 り、リンちゃんか!?」

「い、いや、私は何も……」

「ナナちゃん……あ、あなた今」

「で、出来た……魔法!」


ナナちゃんの手から煙の様な物が出ていた。

つまり、あの火の玉はナナちゃんの魔法。


「は、はは、いや本当、将来有望過ぎでしょ」

「……ナナちゃん、ありがとう」


少し喜びを感じながら私はナナちゃんに近付き

助けてくれたことにお礼を告げた。


「よ、よかった……よかったよ、リンちゃん。

 わ、私……私、私やっと……」

「え? ナナちゃん」


涙を流したナナちゃんが不意に私に抱き付いてくる。

ナナちゃんが震えてるのがよく分かるし

心臓の音が凄く速いのも分かった。


「私、やっとリンちゃんの……

 リンちゃんの役に立てた……よかった

 よかった、守れてよかった、よかった…

 私、私、リンちゃんが、け、怪我しなくて…」

「大丈夫、ありがとう。守ってくれて。

 お陰で私、元気だよ」

「うわぁあああん! よがっだよー!」


大きな声で涙を流すナナちゃんを私は抱きしめる。

エディーも近くに来て、

ナナちゃんの背中を擦ってくれた。

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