外の災難
周辺を警戒しながら私達はあるく。
エディーはのんびりと頭の後ろで手を組み
軽く周囲を見渡しながら歩いてる。
それに対し、ローズは剣に手を添えて
いつでも引き抜ける様にしながら
周囲をそこまで鋭くない目で見渡しながら
ゆっくりと歩いてる。
アンナは弓をもってエディーの後ろにいる。
「……エディー、あなたのんびりしすぎじゃ?」
「都市外出るときの僕は大体こんなでしょ?」
「いやそうだけど……」
同じ女の子だからなんだろう。
3人は何度か一緒に都市外依頼に出たことがあるみたい。
そして、その度にエディーはこんな態度で歩いてた。
でも、不思議とあまり隙を感じ無いんだよね。
「そもそもー、君らって真剣な感じだけど
一緒に行くとき、僕の方が反応早いじゃん」
「そうだけどね、実力差をヒシヒシ感じる……」
「希代の天才少女と言われるだけあるよね」
「え? そんな風に言われてたんだ」
「まぁね、でもその称号は
もう僕の称号じゃ無いって。
今やその称号はリンちゃんの称号でしょ」
「そんな事無い、私は剣が凄いだけ」
祈りの剣が凄いだけで、私が凄いわけじゃ無い。
祈りの剣で色々と強くなってるだけでしかないけど
エディーは実力で強い。
だから、エディーの方が凄いし
私よりも自分の力で頑張ってる
ナナちゃんの方が凄い。
「でも、本当に変わってるよね、その剣。
持ち手の宝石が光るだなんて」
「うん、光る」
「それに、こんな宝石を見たことは無いよね。
えっと、確か色が変わるんだっけ?」
「うん、変わる」
「あ! あれじゃ無い? 宝石を付け替えたら
こう、色々と変わるとか」
「いや、この宝石は抜けない……」
「……じゃあ、何で色変わるのよ」
「分からない」
「あれよ、光りの当り方で変わるんでしょう、多分」
「関係無いと思う。根本から変わってる気がする」
剣の輝きを見れば見るほどに
見る角度で変わるわけじゃ無く
宝石が自主的に変わってるとしか考えられない。
「あ、じゃああれよ、魔力よ! 魔力!
魔法使えるのよね? なら、魔力よ!」
「あ、魔力……」
そう言えば、その可能性も無いとは言えない。
だって、私は魔法を使える。
そして、ソールティアスさんも魔法が使える。
でも、ナナちゃんは使えない、エディーも使えない
ジャッキーも使えない。
「その可能性あるかも知れなくない!?」
「か、かも知れない……」
「あれ? 何? 適当言ったけど当りかしら?」
「アンナの推理が当るとは思えないけど
でも、可能性はありそうだよね」
「実際、ソールティアス様は光ってた。
現状、リンちゃんとソールティアス様の共通点は
魔法を使えてるって所だ。
光る数が違う理由はきっと
ソールティアス様はヒューマンビーストで
扱える魔法は決ってるから1つだけしか光らず
リンちゃんは全属性の魔法が扱えるから
全ての宝石が光ってるって可能性はあるね」
もしそうなら、
宝石が光るのは魔法が理由かも知れない。
今の所、ソールティアスさんと私の共通点は
魔法を使えると言う部分だけだ。
光る宝石の数が少ない理由も納得出来る。
私が純人間で魔法の才能があるのであれば
私は全属性に適性があるけど
ヒューマンビーストであるソールティアスさんは
火、氷、特殊属性3種の適性しか無い。
「これは意外な発見が出来たかも知れないね。
今度、騎士団長に持って貰おう」
「騎士団長?」
「あぁ、今王都に行ってるソールティアス家の
騎士を取り仕切る騎士団長と副団長が居るんだ」
「……団長と副団長が同時にいないって
わざわざ別けてる意味が無いんじゃ…」
「いやほら、今は魔物が活発化して大変だから」
「そうよね、10年前から随分と活発になったしね」
「10年前って、確か」
「エルフの国が滅んだのも10年前だね。
活発になった魔物に滅ぼされたって事だろう」
「そうなんだ、でもどんな魔物?」
「それが分からないんだよね、新種なのかな?
でも、レングラース家が言うには魔物らしいよ?
まぁ、ソールティアス様はレングラース家を
かなり嫌ってるから、信じてないらしいけど」
「何で?」
「いや、僕も詳しくは聞いてないんだ。
ソールティアス様はレングラース家と
バジルラード家を結構嫌ってはいるけど
理由は僕達には決して教えてくれないんだよね」
そう言えば、あの時ソールティアスさんは
エルフは滅んだと教えてくれてた。
エルフの国が滅ぼされたとは言ってなかった。
「エルフって国があったんだね
お話しを聞いたとき、ソールティアスさんは
エルフは滅んだって言っただけで
国が滅んだなんて聞いてないよ」
「あー、そうだね……いやうん、そうだね」
ナナちゃんの言葉を聞いて、エディーが考え出した。
「そう言えば確かに……何で滅んだ事になったの?
国が滅んだだけなら、
探せばエルフは見付かりそうなのに」
「疑問にすら思わなかったけど……
ソールティアス様が怪しんでたのって
もしかして、この違和感だったんじゃ」
何か、ソールティアスさんは疑問を抱いては居たけど
何かを考えて、私達には伝えてないのかも知れない。
レングラース家とバジルラード家を
嫌ってるって言うのも
実は重要な理由があって喋ってないのかも知れない。
そう、話をしたら騎士達が怒るかもしれないから。
「不思議だとは思ったんだけどね。
騎士団長と副団長をわざわざ王都へ送ったの。
意外と情報収集とかもしてたりして」
「何か大きな事が起こるかも知れないって事?
出来れば問題は起こって欲しくないんだけどなぁ」
「それは僕もだよ、ま、今はこの話は良いかな」
その会話の後、
不意に飛んで来た矢をエディーが掴んだ。
「クソ! 防がれた!」
「エディー! 気付いてたなら言ってよ!」
「ごめんごめん、僕も考え事をしてたからね。
ま、包囲されてるから警戒してね。
えっと、あそこの草むらに弓兵が2人潜んでるね。
アンナ、ちゃんとよろしくね?
反対側の草むらに潜んでる山賊は囮だからね?」
「そこまで分かってるなら包囲される前に言って!」
「クソ! あの女、全配置を見抜いてやがる!
あれが最強の女騎士、エディー・ミンチャン」
「おいコラ! フルネーム言うな!
ミンチャンって名字! 無駄に可愛らしいいから
僕はあまり好きじゃ無いんだぞ!
怨んだからな! 何だよミンチャンって!
人名かよって思ったからな!」
「良いじゃない、可愛いし」
「僕は男目指してるんだから!
可愛い要素は良いの!」
珍しくガミガミ言ってるエディーだったけど
飛んで来てる矢を当たり前の様に防いでた。
「っと」
私の方に飛んで来た矢を掴んだ。
ナナちゃんに当らない様にしないと。
「アンナ、早く狙撃してよ」
「やってるけど、あいつら盾持ってる」
「小賢しいね」
「弓兵は1人だ! あいつを仕留めろ!
盾に身を隠して狙撃すればどうにでもなる!」
「馬鹿だね、1人と2人じゃ大差無いって」
「仕掛けろ!」
周囲の山賊達が一気に近付いてきた。
だけど、一定の距離からは近付いてない。
エディーには近寄らないようにしてるみたい。
「ふむ、まぁ考えたね」
エディーはアンナの護衛だからか
少し遠くに居る山賊を攻撃出来ない。
だから、少し距離を取って
即座に動けるようにしてる。
本命はあの弓矢の兵士で、それ以外は牽制。
「ローズ、絶対に矢に当るなよ? 毒塗ってるから」
「な!」
「リンちゃんは大丈夫だろうけど」
当然、私は飛んで来た矢は対処出来ていた。
でも、このままだとジリ貧なのは間違いない。
とりあえず攻撃力が必要なんだ。
「ローズが限界来ると困るけど」
大きな打撃力……そう、魔法を使えれば良いんだ。
私は全属性の魔法が扱える筈だ。
向こうは木の盾、なら火の魔法を使えれば!
「試してみる。回復をした時と同じ様に
手元に集中して、お祈りをする」
回復が出来た時と同じ様に手に意識を集中させて
同じ様にお祈りをすると、手が温かくなる。
そして、掌を矢を撃ってくる奴らに向けて見る。
「お願い、出て!」
私の剣が一瞬だけ光り、私の掌から炎が放たれた。
「な、魔法!? うわぁあ!」
「おぉ! 火の魔法!」
「凄い! これなら狙える!」
すぐにアンナが矢を放って、2人を撃破した。
「な! 弓兵が!」
「じゃ、お終いだね!」
弓兵が撃破出来たのを察知したエディーが
体勢を少しだけ低くして、一気に接近。
安全距離だと思って油断してた山賊達を
一瞬の間でなぎ倒していく。
「ま、不味い! 接近された!」
「クソ! 最悪だ! 逃げろ!」
指揮をしていた山賊が距離があるなか
一気に逃げ出そうとした。
「っと! 1人逃げるよ! アンナ!」
「あれは死角!」
「じゃ、私が倒す! 背中に乗るよ、エディー」
「え?」
私は一気にかけ出して、
エディーを踏み台にして一気に飛び込む。
「あー! ぼ、僕を踏み台にしたー!
しかし、あまりにも軽くて踏まれた感じがしない!
だが、飛び上がった瞬間、
地味に痛かった気がする!」
「無駄な解説してる場合があるなら倒してって!」
「無駄な解説しながら倒してるから大丈夫っしょ!」
「何だこのが、あび!」
「おい! あのガキを止め! がふ!」
私はエディーを踏み台にした後
山賊達も同じく踏み台にしながら
逃げ出した山賊に一気に接近した。
「なん!」
「逃がさない、あなたはここで倒れる!」
「く! 舐めるな!」
逃げ出した山賊は振り向き、
私に向って剣を突いてきた
でも、私はその突いてきた剣に自分の剣を叩き付ける。
「な!」
「遅い!」
相手の剣に自分の剣を上から叩き付けた。
同時に勢いを利用して
そのまま空中で体を縦に回す。
当然、上から不意に押された山賊は
バランスを大きく崩した。
私はそのまま体を回転させて
頭頂部に全力でかかと落としを叩き込む。
「がは!」
そのまま、逃げ出そうとしてた山賊は
地面に叩き付けられ
一瞬で意識を失った。
「ボス!」
「そこ!」
「ぐあ!」
ローズが隙が出来た山賊を即座に撃破する。
「この!」
「きゃう! ま、まだだもん!」
ナナちゃんも頑張って山賊と戦ってる。
でも、攻撃を防いでるだけで苦戦してる。
「あのガキは弱い! 捕まえろ!
人質にしちまえば!」
「負けない、負けないんだ!」
何とか戦ってるけど、やっぱり押されてる。
たまにエディーが戦ってる山賊を
ナナちゃんが戦ってる山賊にぶつけ
それとなくナナちゃんのカバーをして
ナナちゃんが攻撃を喰らわないようにしてる。
「この!」
「う、うりゃ!」
「しま! うぐ! 足が!」
「はぁ、はぁ、はぁ!」
隙が出来た山賊にナナちゃんが斬りかかり
山賊の足に攻撃を当てる事が出来た。
同時に大きな隙が出来たと言える。
「え、えい!」
攻撃を当てて、少し震えてたナナちゃんが
何とか震えを止めて剣を構え直し
隙が出来てた山賊に攻撃するが
「は! 遅い!」
「そ、そんな!」
でも、攻撃を躊躇った時間があったせいで
ナナちゃんの攻撃は山賊に防がれた。
そして、山賊がナナちゃんに手を伸ばすけど。
「っと」
「あぎ!」
エディーがその腕を蹴り上げ、あっさりと折った。
「君の汚らしい手でナナちゃんに触るなって」
「ち、畜生! クソアマァ!」
「君達は何? 負けそうになったら
クソアマって言う癖でもあんの? まぁ」
「あぎ!」
反撃をあっさりと弾き、山賊に攻撃して意識を奪った。
「叫び声を上げてもうるさいだけなんだけどね?
少なくとも君程度じゃ何の意味も無い」
弓兵が壊滅したら、一瞬で勝負が着いた。
これが騎士の強さなんだ。
「ご、ごめんなさい、わ、私……攻撃出来なくて……
わ、悪い人だって、わ、分かってるのに……」
「いやいや、人を攻撃する術を鍛える必要は無いよ。
僕達は騎士だ、大事な人を守る術を鍛えれば良い。
ナナちゃんは優しいから、
相手を怪我をさせたくないって
そう思ったのかも知れないけど、上手く鍛えれば
相手を怪我させ無くても動けなくする事も
きっと出来る様になるからね。
だから、そう落ち込まないで? 君は頑張った」
「……ありがとう、エディーお姉さん」
申し訳なさそうな表情は完全には晴れてない。
でも、声を掛けてもらう前よりは明るくなってる。
ナナちゃんは優しいから、きっと人と戦うのは苦手だ。
私と違って、ナナちゃんは相手を思いやるから。
それは悪い事もあるけど、良い事もある。
少なくとも私は、そんなナナちゃんの為に
もっと頑張ろうって思えた。




