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祈りの剣

……痛い、ぜ、全身が痛い、痛いけど…

何でだろう、意識がある……気がする。

ゆっくりと目を開ける。

だけど、何も見えなかった。

死んだって事なんだろうか。

でも、動けるような気がする。


「はぁ、は、あ」


息をしてる……感覚がある。

私、し、死んだんじゃ……

お腹を刺されて、そして死んで。

あ、お、お腹が濡れてる…


「……」


い、痛い……気がする、多分痛い。

あまり痛い気がしないけど、きっと痛い。

分からない暗闇、周囲を見ても

何も見えない暗闇……


「……いぁ…は、ぅ」


起き上がろうとするけど激痛が走った。

更に誰かに押さえつけられてるような感覚もある。

でも、それがなんなのか分からない。

暗くて何も見えない、何1つとして…


「……」


痛いけど、起き上がろうと努力する。

こんな暗い場所に居たら恐い。

でも、起き上がってるのかどうか

自分でもあまり良く分からない。

多分起き上がってると思うけど

足下が見えないし、何も見えない。


「う、ぁ」


私の近くから、小さな声が聞えてくる。

とても弱々しい声だった。

幽霊かも知れない、恐いから私は

その声の主を調べる事無く歩くことにした。


進んでるのか歩いてるのか分からない。

多分歩いてるという感覚だけを頼りに

ゆっくりと痛みを引きずって進む。


「あだ……う、あで」


暗いから周りが見えないせいで足をぶつけたり

頭を強くぶつけたりしてるけど

ちょっとずつ進むことにした。


ある程度進むと、淡い光が見える。

出口なのか分からないけど淡い光り。

僅か過ぎるその光りを頼りに進む。


何も見えないけど見える淡い光り。

体中をぶつけながら、縋るように進んだ。

その淡い光りが何だったとしても

この暗闇の中に光りは欲しいから。

もしかしたら、外に出られる場所だったり。

なんて、地面が光ってるのにあり得ない。


「あぅ」


その光りに近付いた時何かを蹴った。

同時に足に激痛が走って退く。

ちょっと痛い、何を蹴ったんだろう。

痛いけどそれ以上に痛いせいで

対して動揺しないまま、その光りに近寄る。


「……宝石?」


その光りを発してるのは3つの宝石だった。

よくよく見て見ると、持ち手があるのに気付く。

持ち手があるって事は持ち運べるって事だ。

私はその宝石を握るようにする。


「え!? な、何!?」


私が宝石を握ると同時に宝石が激しく点滅した。

すぐに点滅は止まって、宝石の1つの色が変わり

周囲が一気に明るくなる。


「あ……え?」


あまりの事に動揺するけど

私が何を握ってたのかは分かった。

私が握ってたのは剣だ、綺麗な真っ直ぐな剣。

左右の形は同じで、多分両方共刃だ


刃は異常に綺麗なのはそうだけど

それ位しか大きな特徴はない、

特徴的なのは刃ではなく持ち手だった。


持ち手には宝石が3つ埋められてる。

さっき見えた淡い光りはこの宝石だ。

持ち手の色も少し特徴的で黒を下地に

3つの宝石で前後共に金と銀の

少し太い線が交差してる様に見えた。


鞘かな? 鞘の部分は白色で

1番先端に小さなエンブレムが見えた。

両手を合せて祈ってるようなエンブレム。

持ち手の先端には宝石を抱きかかえてる

女の人みたいなエンブレムがある。

交差してる金と銀の太い線は

この宝石に吸い込まれる様に

手前で完全に交わり止まっていた。


「……何なの、これ…」


何故不意に明るくなったのかは分からない。

だけど、分かる事は周囲に台座があったこと。

でも、ボロボロで壊れてる。


「……祈りの剣」


その台座の近くに書いてあった言葉だ。

色々な文字が他にも書いてあるけど消えてた。

読み取れたのは祈りの剣という名前と

ひゅ、と、はじ、い……って、感じの

そう言う、意味が無い単語だけだった。


きっと特別な剣なのかも知れないけど

私にはどうでも良い事、この剣が何でも

このままだと私はここで死ぬしかない。


そう思ったとき、再び3つある宝石のうち

真ん中の宝石が光り、色が変わった。


「え?」


その宝石が光ると同時に私は周囲を見渡す。

すると、宝石とある方向で光るのが見えた。

少し動かすと光が消え、さっき光った場所に

再び剣を向けると光り出す。

誘導してる……?

分からないけど、そう信じるしか無い。


「うう…」


まだここから奥にも道はある。

と言うか、場違いな扉まで見えた。

不思議なくらいに綺麗な装飾がされてる

あまりにも大きな両開きの扉だ。

でも、何が居る気配が凄い。

呼吸音も聞こえる気がする……

ま、魔物が居るのかもしれない。

絶対に行きたくない、怖いから。


私は何かに縋るしかないけど

怖い場所に行きたいとは思えなかった。

だから、別の何かに縋る事にしよう。

この剣は不思議と光ってるんだ。

なら、それに従いたい。


「こ、こっちにしよう」


だから、私はその光りに従って動く事にした。

明るいからぶつからないように進めたし

足下にある赤い液体まで見えた。

そして、ある場所、多分私が落ちた場所だ。

そこにボロボロのナナちゃんの姿が見えた。

体中から血が、血が出てる!


「な、ナナちゃん! ナナちゃ、げほ!」


ナナちゃんに駆け寄ろうとしたときに

不意に口から何かを吐き出す。

ち、血だ、血が出て来た……

ナナちゃんの近くで力が抜けて

自分のお腹が見えた、真っ赤だった。

道中に見えてた赤い液体は私の血…

う、動けてたけど……そう、わ、私は今

し、死にそうな怪我をしてるんだ…

どうして動けてるの? わ、分からない。

でも、もうあまり動けない……

い、意識しちゃったからか、一気に痛みが…

で、でも、私の事は良い……ど、どうせ死ぬんだ。

でも、せめてナナちゃんは……助けたい。


「な、ナナちゃん…」


ナナちゃんは呼吸してるけど、小さい呼吸。

体の何カ所から血が出てるし

腕が折れてるような痕跡もある。

胸辺りからも血が出てる……

あ、あぁ、どうしてここにナナちゃんが…

もしかして、わ、私を追いかけてたの?

でも、ここは何処なのか私は分からない。

ナナちゃんの怪我からして、高いところから落ち…

も、もしかして、ここってあの崖の下……


「う、うぅ……」


ここが何処なのか、それを考えるとそれしか出て来ない。

だけど、それなら何で私は無事なの?

い、生きてるはずが無いよ、それはナナちゃんも。

でも、助けないと、まだ生きてるなら助けないと!

だけど、私には助ける力がないんだ、力が……

誰かを救える力を、私は持ち合わせてない。


「ご、ごめん、ナナちゃん、ご、ごめ、ケホ!」


また……意識が朦朧としてきた……

やっぱり私、し、死んじゃうんだ……


「ごめん……ね」


ナナちゃんを抱きかかえるように寄り添う。

同時に私の手が温かくなる。


「え……?」

「ん、うぅ……」


私の手が温かくなると同時に

ナナちゃんの様子が変わっていく。


「あ、あれ? ここは……暗い…」

「ナナちゃん!」

「え? その声……リンちゃん!」


一瞬で体中の怪我が治って

折れてた様子の場所まで完治してる!


「良かった……よか、ケホ!」

「リンちゃん! 怪我は大丈夫!?

 崖の下に落とされて、わ、私……

 ごめん、私、リンちゃんを助けようとしたのに

 私、リンちゃんが下になったせいで

 何度もぶつかって……わ、私……」

「だ、だいじょうぶ……」

「怪我はどんな感じなの!?」

「こ、こんな感じ」

「え? 暗くて見えない」


暗い? 私には明るく見えるのに

ナナちゃんには明るく見えないの?

じゃあ、私はどうして明るく見えてるの?

い、いや、それは今は良いんだ、怪我だ。

わ、私の怪我を何とかしないと、し、死んじゃう。

もしかしたら、ナナちゃんを助けた時みたいに

自分も怪我を治せるかも知れない。

さっきと同じ様に怪我に触ってみよう。


「よ、よし……な、治って……」


自分の怪我が治るようにお祈りすると

私の掌がさっきと同じ様に暖かくなって

痛みが引いていくのが分かった。


「はぁ、はぁ、はぁ……」

「リンちゃん? ど、どうしたの?」

「だ、大丈夫……うん、大丈夫」


服をあげて、怪我を見て見る。

真っ赤になってるけど、痛みが引いてる。

きっと治ったんだ……す、凄い。


「大丈夫……い、行こう」

「え? 何処に?」

「脱出しないと……」

「そうだね、暗くて恐いもん。

 でも大丈夫? 動ける?」

「うん、動ける」


ナナちゃんと手を繋いで動く事にした。

理由は分からないけど、私は周りが見える。

でも、ナナちゃんは見えないんだから

私が誘導しないと駄目だ。


この剣を構えて光る方に向って歩いて行こう。

あ、1番下の宝石が……緑色になってる。


「何? その光ってるの? 綺麗だね」

「うん、剣…」

「え? 剣って光るんだ、カラフルだね!

 上が黄色、真ん中は青、下は緑色なんだ。

 どうして?」

「分からない……」


最初は同じ色だったのに……どうしてだろう?

よく分からないけど、進むしか無いよね。

さっきと同じ様に周囲を見渡して光る方へ進む。


「く、暗い……リンちゃんの剣しか見えない」

「大丈夫」

「どうしてリンちゃん普通に歩けるの?」

「分からないけど、私は明るく見えるの」

「え? どうして?」

「分からない……でも、見えるから」

「そうなんだ、凄いね!」


私も理由は分からないけど見える。

宝石の光る場所も見えるし進むしかない。

抜け出せれば良いけど……信じるしか無い。

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