種族適性
「では、次だね」
その一言の後、ソールティアスさんが本を開く。
今度は種族によっての適性と適性レベルと書いてある。
「まずはレベルについてお話をしよう」
「レベル?」
「あぁ、魔法適性はレベルで別れててね。
レベルは1~10で別れてるらしい」
「凄い幅がある」
「あぁ、種族によって違うし
同じ種族でも場合によっては差があるらしいからね。
特に純人間は顕著みたいだね」
恐らく私達はここだろう。
私達はソールティアスさんの様に
耳と尻尾が生えてないんだから
ヒューマンビーストでは無い筈だ。
「恐らく君達は純人間だからね。
ここを知っておくのは勿論重要だろうが
今回は他の種族についてもお話ししようと思う。
何かの拍子で戦う事になるかも知れない。
その場合に対処する為だ」
「うん」
私達は騎士見習いだからね。
当然、戦う事になる可能性は十分ある。
「影響力をレベルで分けるとすれば
レベル1~3は行使出来る程度の規模
4~7は魔物に決定打を与える事が出来る程度
8~9は強力な魔物さえも倒せてしまう規模。
そしてレベル10は圧倒的な才能といえるかな、
このレベルなら、その属性のエキスパートと言えるだろう。
規模は分からないが、体特殊属性であれば
深い傷も即座に治癒できてしまう程度であり
身体強化で岩を簡単に砕ける規模になる。
致命傷レベルの回復は自分限定だけどね」
「そうなんだ、でも体特殊属性だけ詳しいんだね」
「あぁ、私自身の経験だからね」
……あ、ソールティアスさん体特殊属性レベル10なんだ。
「とは言え、これは種族特性でもあるけどね」
「種族特性?」
「あぁ、ヒューマンビーストの最大値は
火属性、氷属性の適正レベルが8で
体特殊属性はレベル10なんだ。
与特殊属性はレベル3であり
空特殊属性はレベル5になるそうだ」
「そうなんだ……」
これが種族特性……種族によって使える魔法が
大体決るって言うのはちょっと残酷だね。
「さて、では本題。人間の適性レベルだが」
「うん、気になる」
「人間の適正レベルは全属性レベル5だね」
「全属性……」
「あぁ、人間の1割しか才能を持たないそうだけど
その中で才能を持つ人物は
全ての適正レベルが5になるそうだ。
ただ与特殊属性レベルは例外であり
中には与特殊属性レベル10の人物も居るとか」
種族特性の他に個人の才能まであるんだね。
「でも、人間はだよね? ヒューマンビーストは」
「あぁ、ヒューマンビーストはさっき言った部分だけ。
氷と火と特殊属性3種にしか適性が無いんだ」
「じゃあ、属性魔法のレベル6とかってあるの?」
「あぁ、存在するらしい。
属性魔法のレベルが7以上の種族が」
「どんな種族なの?」
「あぁ、エルフだ」
「エルフ」
確かその単語はあの場所で1度聞いたことがある。
「聞いたことが?」
「うん、昔掴まってた場所で1度だけ」
「ふむ、内容を聞いても良いかな?
エルフは10年前に何者かの襲撃をうけ
滅んでしまったと言われてる種族だ
もし話を聞いたことがあるなら、聞いておきたい」
「えっと……死んだって話を聞いただけで」
そう、昔、あそこの騎士達が言ってた言葉だ。
「正確には1度ヤッて見たかったが
8年前に他の騎士が殺したとか何とかって聞いた」
「……そうか」
「その後、その騎士は粛清されてたからよく分からない」
「粛清?」
「うん、他の騎士が怒鳴ってた。
それはタブーとか何とかって言われて殺されてた」
「そうか……確か君達が捕まってたのは」
「レングラース家、でも、あまり良い思い出はない。
あいつら、私とナナちゃんを変な目で見るんだ。
大きくなるのが楽しみだとか何とか言われて」
「……」
その言葉を聞いたソールティアスさんは静かに怒ってた。
あまり良い気持ちにはならなかったんだろう。
「君達の事をレングラース家には悟られない方が良いな。
ただ、あまり深追いするのもよくない……か。
あいつら……クソ、だが、私はこのバナージを統べる者。
私怨にかられ……奴らを攻撃することは許されない……」
小さく怒りのこもった言葉を呟いてる。
本人は隠してる様子だけど、私には聞えた。
きっとナナちゃんもエディーも聞えてる。
普段冷静な雰囲気だったけど
どうも、今はそんな雰囲気が無くなってる。
「その、ソールティアス様……」
「あ、いや、気にしないでくれ。
コホン、とにかく話を戻すとしよう。
エルフは既に滅んだと言われてる種族だが
適正レベルは属性魔法が7と言われてる。
ただ、エルフに関しては分からない事も多く
中には全属性魔法のレベルが10の者も居たとか。
事情は分からないが、才能の差が激しいのだと思う」
「そうなんだ」
「あぁ、とは言え滅んだと言われてる種族だからね。
その詳細を知る手段を、私達は持ち合わせてない。
ただ、特殊属性魔法は使えないそうだ。
この本にはそう書いてあったね」
この本が何処まで正確なのか分からないけど
多分、大体あってるんだろうとは思う。
本で出すくらいだしね。
「じゃあ、私達は純人間だから人間の部分を。
いやでもまって、人間は属性魔法は5まで
エルフは7とか10とからしいけど
特殊属性魔法は無いんだよね?」
「そうだな」
「じゃあ、空特殊属性魔法のレベルは5が最大?」
「いや、10があるらしい」
「どうして?」
「文献があると、この本には記載があったね。
でも、正確な部分は不明だ。
どうも、全属性の適性が特殊も含めて
レベル10以上になる可能性はあるそうだけど
この本でも、正確な部分は触れられて無くてね。
予想しか書いてないんだ。
因みに予想ではハーフエルフかも知れないとか」
「ハーフエルフ?」
「あぁ、人間とエルフのハーフらしい。
このハーフエルフは実在はしてるそうだね」
「じゃあ、エルフは全滅って言うのは」
「純血統のエルフの事だろうね」
ハーフとか純血とかよく分からないけど
何となく純血の方が強そうな気がする。
「ねぇねぇ、純血とかハーフって何なの? 同じなの?」
「そうだね、純血はそのままだね
ハーフは混血の意味だよ、血が混ざってる。
エルフのお父さんと人間のお母さんの間に生まれたのが
混血のエルフって言う感じだね。
純血の場合はエルフのお母さんとエルフのお父さん。
その間に生まれた子が純血のエルフって感じだ」
「そうなんだ」
同じ種族なら純血って感じだね。
種族が違ったらハーフ、もしくは混血かな。
「さて、脱線したね、とにかくこれが種族の適性だね」
「うん、人間だから色々出来るのかも…」
「あぁ、その可能性はあるけど……」
「けど?」
「……リン、き、君の場合は違うかも知れない」
「え?」
私の場合は違うってどう言う事だろう。
「いいや勿論、ナナも確定した訳じゃ無いんだ。
そうだね、例えばハーフエルフは人と大差無い見た目だ。
だから、もしかしたらハーフエルフである可能性も
0では無いと言う感じだ。
そして、ヒューマンビーストの場合も……違う」
「え?」
「ヒューマンビーストは覚醒すると容姿が変わるんだ。
私の場合は見ての通り、獣の耳と尾が生えてるが
見ての通り、私には人の耳もついてるだろう?」
そう言えば、あまり疑問に思わなかったけど
ソールティアスさんには人の耳もついてる。
獣の耳が生えてるのに、人の耳も生えてる。
何で耳が4つもあるんだろう。
「これは、ヒューマンビーストが特殊だからでね。
ある条件が揃えば獣の耳と獣の尾が生えるんだ。
だから、も、もしかしたら君達は
純人間では無く、ヒューマンビースト
あるいはハーフエルフである可能性はある」
「……」
「魔法の適性によって種族の特定も出来る。
リン、君は回復の魔法を使える。
つまり体特殊属性魔法が使えてると言える」
「体特殊属性魔法は」
「あぁ、ヒューマンビーストの適性……
いや、人にも体特殊属性の適性はあるんだけど…
いやその、はは、ごめん、気にしないでくれ」
そこまで言うと、ソールティアスさんが
悲しそうな表情を見せて俯いた。
「ソールティアス様……」
「いや、うん。ごめんよ、変な事を言った。
気にしないでくれ、あぁ、うん。
きっと君達は純人間だ。
私が少し、愚かな事を思ってしまったことを許して欲しい」
「どう言う……」
「いやね、その……いや、言うべきじゃ無いかも……
いや、もうこの際だ、言ってしまうのも良いだろう。
私は少し、君に……妹を重ねてしまうんだ」
「私に?」
「あぁ、私が失ってしまった妹だ。
赤ん坊の時しか姿を見て無かった。
それも、ほんの少しの間だけだ。
だから、断言は出来ないんだけど……
君が私の妹だったら良いのにと、そう思ってしまって」
「ソールティアス様……すみません、我々の力不足で」
「いやいや、謝罪は必要ないんだ、
無理を言ってるのは理解してる。
顔もまともに分からない妹の探索を
君達に指示をてしまった私がどうかしてた。
ヒューマンビーストという特徴しか分からないのにね。
はは、年齢的に覚醒なんてあり得ないだろうに
当然、分かる筈も無いさ……」
ソールティアスさんが悲しそうな表情を見せた。
ソールティアスさんの妹さん……
表情からも分かる、凄く大事なんだって。
「唯一残った家族の安否を知りたいのは当然の事です。
だから、そんな悲しそうな表情をしないでください。
必ず見つけ出して見せますから」
「……いや、良い、そこまで気にしなくても」
「でも!」
「分かってるさ……もう、あの子は死んでる。
あれから8年だ……仮に生きてたとしても
もう、既に誰かの家族だろう。
その幸せを奪う事を、私は出来ない」
「……」
大事だと考えてるからこそ、奪えない。
そうだね、小さい子が仮に生きてるとしても
それは、何処かの優しい人に拾われてるからだ。
あの話からして、ソールティアスさんが
妹を失った時は、まだ妹は赤ん坊だった訳だし
そんな子が1人で8年間も生きてるはずが無い。
8年間も生きてるとすれば、既に誰かに拾われ
その誰かの家族として生きてるだろうから。
でも……私は少し羨ましいと感じる。
こんな風に大事に思って貰ってる妹さんが。
私にもし、姉が居るんだとすれば
ソールティスさん見たいに、
私の事を一番大事にしてくれる
そんなお姉ちゃんだったら嬉しいと思う。
「すまない、暗い話をしてしまったね。
はは、長として申し訳無いと思ってる。
ただ……その、今日はここまでにして貰えるかな」
「は、はい……すみません、ソールティアス様」
「いや、私の方こそ申し訳無い。
勝手に変な事を思いだしてしまって済まない」
少し暗い雰囲気になって部屋を出ようとした。
「ねぇ、ソールティアスさん! きっと大丈夫だよ!」
「え?」
「だって、ソールティアスさん凄く強いし!
妹さんもきっと凄く強いに違いないもん!
だから、きっと生きてるよ!」
「しかし……」
「それにさ? 誰かの家族になってたとしても
ソールティアスさんも家族なのは変わらないよ!
だから、きっとその妹さんも喜んでくれるって!
だから、諦めないで頑張って探そうよ!
私も頑張って探すもん! 家族は一緒の方が良い!」
「……ありがとう」
「うん、諦めないで探そう、私も探す。
だから、諦めないで、おねえちゃ……
ソールティアスさん!」
「あー! 言い間違えた-!」
「うぅ……恥ずかしい」
もしお姉ちゃんが居るとすれば
ソールティアスさんみたいな人が良いなって
そう思ってたせいか、口が滑っちゃった。
「……ふふ、ありがとう」
嬉しそうにソールティアスさんが笑みを零して
ゆっくりと立ち上がった。
そして、私とナナちゃんを抱きしめる。
「私も諦めないで探そうと思う。
私の……世界で一番大事な妹を」
「うん!」
「諦めないで頑張ろう、ソールティアスさん」
「あぁ、必ず……エディー」
「はい!」
「この子達のことを、しっかり頼むぞ」
「了解です!」
その言葉を最後に、私達は部屋を後にした。
魔法について色々と知れたのはそうだけど
1番よかったのは、ソールティアスさんの悩みを
こうやって、聞く事が出来たことだと思う。
私達も頑張って、ソールティアスさんの妹さんを探そう。




