不意の襲撃者
ナナちゃんを巻き込むわけにはいかない。
ナナちゃんは私が行けば絶対に一緒に付いてくる。
だけど、私が避難すれば一緒に避難してくれる。
ナナちゃんの安全を守るためには仕方ない。
わがままを言って、
ナナちゃんを危ない目には遭わせたくない。
「え!?」
大人しく避難する事にして城壁から降りた時だ。
丁度、一番下に降りた途端に門が吹き飛ばされて
そこに毛むくじゃらの人が姿を見せた。
これが……もしかして、この毛むくじゃらが!
「がぁ!」
「ナナちゃん!」
不意に飛びかかってきたその毛むくじゃらの攻撃を
私は即座に剣を抜き、防いだけど、凄い力!
「うぅ!」
正面から戦ったら不味いと理解して
私は急いでその攻撃を流した。
同時に、階段にあの攻撃が当り
何カ所も階段が崩壊してしまう。
「どうしたの!?」
「エディー! 毛むくじゃらがの人が!」
「な! デミ・ビースト!? なんだってもうここまで!
あぁもう! 階段が崩落してる!
別方向から行くから逃げて!」
「でも!」
「うがぁああ!」
「うぐぅ!」
私を狙ってる! ナナちゃんは眼中に無いのが分かった!
一瞬だって、ナナちゃんに視線を向けてない!
ただ、私の方だけを見てる! 私を狙ってる!
「リンちゃん!」
「狙いはきっと私! ナナちゃん! 逃げて!」
「でも!」
「く!」
毛むくじゃらの攻撃が私に再び伸びてくる。
狙いが私なら、逃げる事は出来ないだろうし
そもそも、私が狙いじゃ無いと困る!
ナナちゃんを守りながらは難しいし
この辺りの国民を守るのも難しい!
「こいつ! 俺達を見て無い!」
「ちぃ! 攻撃してターゲットを変えさせろ!」
門を守ってた騎士さん達が急いで私から
自分達へと狙いを変えさせようとするけど
あの毛むくじゃらは私以外に興味を示さない!
「うぅ! く! きゃぅ!」
「リンちゃん!」
毛むくじゃらに吹き飛ばされた! すごい勢い!
「うぅ!」
空中でなんとか体勢を立て直して剣を構える。
だけど、既に毛むくじゃらは眼前! 不味い!
「く! うぅ! なんで私を!」
反撃する余裕は無い! 防ぐしか無い!
なんとか耐え抜かないと!
「がぁ!」
「諦めるかぁ!」
何度も吹き飛ばされながら私は攻撃を防ぐ。
祈りの剣は色々な攻撃を受けても壊れることはない。
「はぁ、ひぅ!」
異常な程の速度で接近してくる相手!
なんとか反応して防いでは居るけど
かなりギリギリだ! 攻撃力が高すぎて
攻撃を受ける度に吹き飛ばされてる!
そのせいで、他の騎士達と離されてる!
「追いつけない!」
「はぁはぁ! 君達! リンちゃんは!?」
「あそこです! 追いつけない!」
「な! クソ! 何だあいつ!
リンちゃんしか眼中に無いのか!?」
攻撃は建物を簡単に崩壊させてる!
私が避けそうな攻撃を仕掛けたときは
凄い破壊力で建物を壊してるけど
私が防ぐしか無いであろう攻撃の時は
あまり高い攻撃力はないように感じる!
殺す気じゃ無いんだ、こいつは私を殺すつもりは無い!
食べるつもりじゃないなら、どうして私を攻撃して!
「がぁ!」
「うぅ!」
剣が掴まれそうになる! ギリギリに剣を引き
掴まれないように立ち回らないと不味い!
掴まったら終りだ! 逃げられない!
「がぁ!」
「……そこ!」
でも! あまり同じ攻撃なら反応出来る!
確実に反撃出来ると判断したタイミングで
私は一気に接近し、毛むくじゃらを攻撃する。
私の攻撃は確実に当てる事が出来た!
そのまま即座に距離を取って、追撃を避ける!
掴まったら終りだから、掴まらないように
全力をもって立ち回れば何とかなるんだ!
「が、がぁあ!」
「っと、うわ、くぅ!」
攻撃が激しくなってきた! 防ぐのは不味い!
防がずに避ける! 避け続けて!
「はぁ、はぁ、ここ!」
「がぎ!」
確実に当てられるところで攻撃をする!
スタミナには自信がある、焦るな、焦るな!
呼吸を整えて、動揺を少しでも抑えるんだ!
呼吸を整えないと、無駄に体力を消耗する!
周りが合流出来るまで粘らないと駄目なんだ!
「はぁ!」
「ぎ!」
反撃出来そうなら反撃する!
倒し切れればそれで良い!
「リンちゃん! 攻撃はするな! 避けるだけ!」
「え?」
「追い込まれた獣は不味い!
僕がそっちに着くまで!」
エディーの言葉が聞えて、少し距離を見た。
まだ結構距離はある。全力で走ってきてるけど。
「がぁ!」
「きゃう!」
「リンちゃん!」
不味い! また吹き飛ばされた! 離される!
またエディーと離されて!
「が!」
「な! あう!」
違う! さ、さっきまでの攻撃と違う!
い、一撃の重さが、ち、違う。
「ケホ、ケホ……」
「がぁ!」
「うぅ!」
剣を弾き飛ばされそう!
ぜ、絶対に剣を離したら駄目だ!
例え建物を破壊するくらいの勢いで
建物に叩き付けられたとしても!
い、意識を失うな! 剣を握り続けろ!
意識を失ったら終りだ!
「がぁあ!」
「こ、この! しつこい!」
休む余裕が無い! 落ち着いて呼吸する余裕が無い!
呼吸さえ、呼吸さえ出来ない程に追い込まれてる!
一瞬でも油断したらやられる! やられる!
「あぅ!」
再び弾き飛ばされ、建物を3軒ほど貫通した。
そして、大きな建物にぶつかり止まる。
「ケホ、ケホ……」
い、意識が朦朧として……だ、駄目だ、耐えて!
「が!」
「や、休ませ、あう!」
剣が……弾き飛ばされた……このままじゃ、私!
「がぁ!」
目の前の人型が牙を剥き出しにして
こちらに覆い被さろうとしてきた。
私、ここまでなの……?
「子供を襲うのは感心しないな」
冷静な言葉が聞えてくると同時に一瞬だけ強風が吹いた。
何が起こったのか、理解は出来なかった。
ただ、目の前から化け物が唐突に消えた。
代わりに、私の目の前には。
「私が来るまで、よく頑張ったね、リン」
とても凜々しい笑顔を私に向けてくれてる
ソールティアスさんの姿があった。
私は誰かに涙を見せたくは無いと感じてた。
だけど、この瞬間、何故か私は涙が溢れてくる。
助かったと言う、絶対的な安心感が何故か私にはあった。
「そ、ソールティアスさん……」
「少し待っていてくれ、すぐに終わらせる」
ソールティアスさんが私を地面に優しく寝かせる。
そして、力強く振り向き、剣を構えた。
「がぁああ!」
怒りなのかも知れない、デミ・ビーストだったかが
ソールティアスさんを見て、大きな声を出して飛びかかる。
「遅い」
その一言と同時に、ソールティアスさんは
デミ・ビーストに接近し、振り抜く。
同時にデミ・ビーストの首が飛び
頭があった場所から血飛沫が噴き出した。
「本来であれば、この街で血を噴き出させるのは
避けたい所だが、私は今、機嫌が悪いんだ」
その一言と同時に、デミ・ビーストは大地に伏した。
そして、ボールのように首が跳ねて転がってる。
少しして、黒い煙と共に首も体も消えていく。
これが魔物が死んだ時の消え方なのだろう。
「……リン、大変な思いをさせてしまって悪かったね」
さっきまで鋭い目付きをしてたソールティアスさんだけど
私の方を向いたときは、優しく微笑んでくれた。
そして、私が弾き飛ばされた剣を拾ってくれて
私に手渡してくれる。
「よく、頑張ったね」
「……ありがとう」
ソールティアスさんが伸ばしてる剣を受け取った。
カラフルな光りはいつ見ても安心出来る。
「君の剣は変わってるね、持ち手が光るとは斬新だ」
「うん、大事な剣なの」
「あぁ、武器は私達の命を守ってくれてる相棒だ。
そのまま、大事な相棒を失わないようにね」
「うん!」
「それで、怪我は大丈夫かい? 回復してあげようか?」
「大丈夫、お祈りすれば治るから」
「そう言えば、君も魔法が使えるんだったね。
ふふ、素晴らしい才能だ」
「ありがとう、ソールティアスさん」
「……いや」
「リンちゃん! 大丈夫!?」
エディーが急いでやって来てくれた。
「ソールティアス様!?」
「エディー、駄目じゃないか、しっかり守らなくては」
「本当に申し訳ありません……
言い訳をするつもりはありません。
私の判断ミスでリンを危険な目に遭わせてしまった。
除名だろうと何だろうと受けます。
ただ……ありがとうございます。リンを救ってくれて」
「え、エディーは悪くなくて、私がわがままを言って…
ひ、避難しようと思ったら門が壊されて」
「不意の事故は起こる物だ、デミ・ビーストは
動きの予想が難しいからね。
だから今回は不問にしよう。
リンの努力のお陰で
被害はまだ抑えられたと言えるだろうしね
それよりも群れの本隊が来てるのだろう?」
「はい、300体ほどの群れが」
「なら、急いでそちらの対処をしよう。
エディー、君は本隊と合流を。
リンの保護は後から来る騎士達に任せよう」
「はい!」
「リン、君はよく頑張ってくれた。
後は私達に任せろ」
「……うん」
私の返事を聞いたソールティアスさんは笑顔を向け
そのままエディーと一緒に駆け出した。
少しして、他の騎士達が姿を見せ
私とナナちゃんを避難所へ退避させた後
私の治療を少しだけしてくれた。
その後、ちょっと時間が経った後
無事、リストウルフの殲滅が完了したと言う事が
ソールティアスさんの口から
避難所の住民、全員に告げられた。
今回の襲撃で発生した被害が
私が吹き飛ばされたりして崩壊した建物程度。
運の良いことに、死者は居なかった。
ソールティアスさんが来てくれなかったら
私が唯一の死者になってたかも知れない。
だから、本当に……ありがとう。




